大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん
中年の髪の毛とパコ美のウンチ
毎週連載
第96回
テレビに出演する時は、いつも局のメイクさんに髪の毛をセットしてもらいます。メイクは自分で出来るのでヘアだけ。そういった際、特に最近、メイクさんにお願いすることが白髪のケアです。
「すみません、ここ白髪が目立つんでマスカラとかでちょっと塗ってもらってもいいですか?」とお願いを。20代の若いメイクの女の子に白髪を消してもらっている姿って、もう母と娘を通り越して、おばあちゃんと孫みたいに見えなくもなくて。
そんな時に、たまたま知り合いの男性芸人さんだったり、若手のアイドルグループの子が通りかかったりすると、本当にイヤで。「うわっ! おばさんが白髪を染めてもらってる!」と思われるんじゃないかと。だから、すぐさまメイクさんに「あ、もう大丈夫! やめて!」と手を振り払わんばかりの勢いで止めさせますから、メイクさんには申し訳ない限りです。
なんか白髪だけは、なかなか受け入れられないですね。
60歳を過ぎたら、いっそ真っ白なグレーヘアに向かっていくのも良いかもしれないですけどね。草笛光子さんとか素敵ですから。でも結局のところ、グレーヘアって美人だから成り立つと思うんです。私なんかがやったら、単純にみすぼらしく、ご近所トラブルばかり起こすおばあさんみたいになるに決まってますから。グレーヘアは人を選びます。
一方、同年代の男性から髪の話でよく聞くのが薄毛、つまりはハゲの悩みですよね。この男性のハゲ問題、そんなに気にしなくて良いと思います。若い女性は違うかもしれませんが、私くらいになれば「ハゲだからダメ」とか「ハゲじゃないから素敵」なんていう低レベルのジャッジはもうしません。それよりも「人間性」が大事。髪の厚みを気にするより、人間の厚みを気にしたほうが良いと思います。
私的に困るのが、「ハゲである」ということを隠そうとしている人。ああいう姿勢はかえって見苦しいし、こちらが気を使わなければならないので。「髪の毛の話題はしちゃいけないな」みたいな。ハゲたらハゲたで「ハゲラッチョ! チェケラッチョ!」精神で堂々としていて欲しいです。
男性に比べると、女性の薄毛のほうが実は深刻なんです。女性も年を重ねると、髪の毛が細くなり心もとない毛質に。女性で頭頂部の地肌が見え隠れするのって、すごくみすぼらしい印象になりません? 私も小学生の頃は、毛量がメチャメチャ多くて「スフィンクス」と言われてたくらいだったのに、50歳手前になって、スフィンクス感なんて皆無です。
親友いとうあさこさんもおでこの生え際が上へ上へと後退しはじめ、トレンディエンジェルのたかし君と見分けがつかないくらいですから。あさこさんの場合、常に髪の毛をひっつめて結んでいるので、その影響かもしれないですけどね。
あと、もしかしたら私の愛犬パコ美が一因かも。
あさこさんが我が家へ遊びに来たとき、いつも「バァバ、死んだよ」という遊びをパコ美としてくれて。要は、あさこさんが大の字に寝て死んだフリをするとパコ美が心配するのか、近寄っていって身体の上に乗ったり顔を舐めたりと大騒ぎするんです。これが最近、顔を舐めることに飽きたのか、パコ美があさこさんの生え際の髪の毛をブチブチと噛み千切り、なんなら食べる様になってしまい。最初は笑っていたんですが、あさこさんの生え際の後退加減を見るにつけ、止めさせなければと思っています。
あと、この遊び、髪の毛を食べてしまったパコ美のほうにも弊害が。髪の毛って消化されないから、パコ美がウンチをしたとき、ウンチと髪の毛が繋がっちゃって肛門からブランブラン状態に。その状態は、当たり前だけどパコ美にとっても不快なことらしく、早くウンチを切り離したいから、グルグル回ってみたり、道路にお尻を擦り付けたり。私としては、ウンチと格闘するパコ美を見てらんないから、無理やり捕まえてティッシュやビニールを介して手で引っ張ってとってやるんですが、もうその姿だってより見てらんないです。
だから、最近ではあさこさんが来ても「髪の毛食べちゃダメ!」ときつく制するようにしました。
構成・文:松田義人(deco)
プロフィール
大久保佳代子おおくぼ・かよこ
1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
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