大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん
怪しい書道五段と年賀状
毎週連載
第100回

実は私、書道「五段」という資格を持っているんです。五段って、自分で言いますが、なかなか取得できないですよ。
小学3年生くらいから、近所の書道塾に通っていたのですが、そこの先生が遠い親戚の伯母さんで。50歳くらいの独身で近所の子供を集めて教えていたのですが、優しくて明るくて、お菓子をくれたりするので結構人気がある先生だったんです。
「3級から2級」とか「初段から弐段」へ昇段していくには、定期的にある査定会に課題の作品を書いて、本部のようなところへ提出しないといけないのですが、やはり遠いとは言え親戚って可愛いんでしょうね。私が、課題である文字のお手本を見ながら私なりにがんばって書いていると、先生が背後から私の腕をガッツリ持って一緒に書いてくれるんです。私がちょっと力を入れて自分の意思を出そうとすると「はい、力を入れないで。力を抜いて」と。私の腕は力が入ってないグラグラ状態で、先生はガッツリ力が入っているという二人羽織状態。
そうです、ほぼほぼ私じゃなく先生が書いてしまっているんです。そりゃ、みるみる五段までいっちゃいますよ。私だけじゃなく、少なからず周りの子達もこの方法をとっていたので、その塾の子達は、たいがい「段」持ちでしたね。でも五段まで行ったのは、私だけだったと思います。
ちょうど1年ほど前、『芸能界特技王決定戦 TEPPEN』という番組の「書道」部門の出演依頼が。芸能界きっての書道の達人が集まって対決するという内容で。どこかで私が五段所持者というのを聞きつけて依頼がきたと思うのですが、私の五段は、ほぼほぼ叔母さんのおかげですから。
でも「大久保さんがいてくれると盛り上がるのでぜひ」という言葉に乗せられて出演することに。結果は、散々たるものでした。レベルの差を痛いほど実感し、もう恥ずかしいやら泣きたいやら。私以外の皆さんは、マジで真剣に書道に取り組んでいる方々ですから、そりゃそうなります。天国に行ってしまった叔母さんにクレームをつけたいくらいです。
最近は、字を書く機会って本当に減っています。誰かに手紙を書くなんて、ほぼほぼ無くメールやLINEで済ましてしまいますからね。でも、目上の方から手紙を頂いたら、さすがに直筆の手紙を書きます。ちょっと前、仕事で一緒になった小沢仁志さんから、『裏社会の男たち』と『組織犯罪対策部捜査四課』のDVD一式が送られてきて。収録中、私が興味を示したのを覚えていてくれたようで、本当にありがたい限り。
直筆の手紙が同封されていたので、これはもう、すぐさまお礼の手紙を書きますよ。書かないと言う選択肢はないです。誤字・脱字、失礼はないかなど注意しながら慎重に。一ミリでも失礼があったら「裏社会」によって闇に葬られる可能性もありますから。
あと、ファンレターをいただいて返信用の切手が同封されていたときは、ほぼほぼお返事するようにしています。「いつも応援ありがとうございます。励みになります。これからもよろしくお願いします」みたいな簡単な感じですけど。でも、久しぶりに誰かに向けて文字を書いたとき「あれ、私の字ってこんなに汚かったっけ?」と気づきますね。漢字も忘れてしまっているし。もっと自分の字と向き合わないとダメですね。
そろそろ年賀状を書く時期だと思いますけど、これまた、書かなくなって久しいです。先輩の方から年賀状をいただいた時だけ、急いでコンビニで年賀ハガキを買ってお返事するというスタイル。それ以外の方には、LINEになってしまいました。
この点、親友いとうあさこさんは、ちゃんとやるタイプで。毎年この時期になると、年賀ハガキの束を持ち歩いていて、仕事の合間に1枚1枚、直筆で年賀状を書いているのを見ますから。字もすごく綺麗なんです。毎年、あさこさんのその姿を見て「偉いなぁ」って感心すると同時に「よくやるよなぁ」とも。私には出来ない、と言うか面倒臭いからしないだけなんですけどね。
構成・文:松田義人(deco)
プロフィール
大久保佳代子おおくぼ・かよこ
1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/