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大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん

『浜の朝日の嘘つきどもと』

毎週連載

第103回

この連載も今年最後になりました。毎年この時期は、正月旅行に向けてワクワクしているはずなんですが、今年は新型コロナウイルスのせいで海外旅行には行けないし、毎年一緒に行っている親友いとうあさこさんも自分の劇団の公演を控えていて休みがあまりとれない状況で。だからこのお正月は、実家に帰って、家族・親戚と近場の温泉にでも行こうかなと。

ただ、この温泉もね……。実家に電話をする度に、父親から「感染者が増えてるし、やめたほうがいいんじゃないか」と言われるし、かと思ったら兄からは「部下の家族も一緒に行きたいって言ってるけどいいかな?」とノリノリだし。全員の意見をまとめるのは大変で、匙を投げそうになりつつある状況です。

正月くらいはパッと派手に楽しんで、2021年は良い年になって欲しいです。来年の仕事の話で言えば、映画ですかね。今年の夏頃に撮影した映画『浜の朝日の嘘つきどもと』が公開に。福島中央テレビ50周年記念企画で、南相馬にある朝日座という古い映画館を舞台に、取り壊されないように動く主人公の女の子と彼女を取り巻く人たちの物語です。来年で10年を迎える震災の話も入ってきますが、震災だけにフォーカスしたものではなく、親子関係や映画への熱い想いなど色んな人たちの人間ドラマが描かれた素敵な作品です。

この話をいただいた当初は、やや消極的なところもあって。映画って、言い方は悪いですが効率が良くないんです。膨大な時間と労力をかけて作った割に、大ヒットすれば良いですが、そうでなければ、テレビのような媒体に比べて、観てもらえる人数は少なかったりするわけで。

なので、最初にマネージャーからこの映画の話を聞いたとき、正直「こんなに時間取られるの? その期間、バラエティに出られないんだよね?」なんて思ったりもして。でも台本を読んだら、出番の多い良い役だし、アラフォーの女性教師というハマり役だし、ストーリーも面白かったので、ノリノリで一生懸命取り組ませていただきました。

映画というバラエティ番組とは全く違う現場は、非常に刺激的でした。

およそ1週間の撮影だったのですが、朝早くから、長い待ち時間があったりもしつつ夜まで。同じスタッフさんと一定期間、一緒にいるので自然とチーム感も出てきて。

みなさん、優しくて和気あいあいとした雰囲気の中、撮影は進んでいきました。

監督のタナダユキさんは、最初にお会いした際に「大久保さんのファンなんです」って言ってくれて。撮影中もことあるごとに「今のいい感じでした。良かったです」と褒めてくれたりもして。やはり褒められると嬉しいし、「この人のために頑張ろう!」って気持ちになります。クランクアップした時には、お手紙をいただき「この役を大久保さんにやっていただけて本当に良かったです」と言っていただいて、素直に嬉しい限りです。「褒める」って簡単なようで簡単じゃないですから。

私の場合、女性のマネージャーがダイエットして痩せた時だって、素直に「痩せてキレイになったね」と言えばいいのに、「上半身は痩せたけど下半身がそこまでだからケンタウルスみたいだね」と憎まれ口を言ってしまいがちで。もう少し素直に褒められる人になりたいと思った次第です。

あと、主人公の高畑充希ちゃんも改めて凄い女優さんだなと思いました。撮影中が新型コロナウイルス感染拡大の時期だったので、ご飯も一緒に食べられなかったし、待ち時間も別々だったので、プライベート的な話は、ほぼ出来なかったけど、私が言うのも何ですが演技が本当に素晴らしいから、本番になると一気に生徒と先生の関係にさせてもらえて。

あと充希ちゃんが差し入れでケンタッキーを入れてくれた時は、「今日ケンタッキーにしない?」というあの決めセリフを言ってくれて、そりゃ、みんな大喜びですよ。私も「やべぇ、本物じゃん!」と心の中で言いましたもん。

ぜひとも、来年公開のこの映画、たくさんの人に観ていただきたいです。



構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/