稲葉友の「話はかわるけど」
100回×エッセイ×振り返る【後編】
毎週連載
第101回
今や、エッセイを書くことが、ほぼライフワークになっていると言う稲葉さん。過去のトピックなどを振り返りつつ、エッセイに対するスタンスを、稲葉節で自己分析します!
100回到達を喜んでも、翌週にはすぐ101回になるワケで。100回というのはただの通過点で「数字が100なだけ」ともいえる。僕のテンションもそんなものではあるが、折角なので100回という節目をエッセイの内容に落とし込み倒して101回までいってみる。振り返ったり立ち返ったりもしてみる。ただ「100回読んでくれた人はいるだろうなあ、すみませんね、ありがとう。」という思いはある。本当に大した話はしていないのに、読み続けてくれてありがとうございます。
今までで一番印象に残っているのはやはり初回。日本語が好きという話はこの連載の根源的なところになったが、今読み返すととにかく文章が長い。もう今はこんなに書けないよってくらい長い。今も決して出し惜しみはしていないが、初期は具合が分からないから止めどなく放出したものをそのままお届けしている感じ。
イケメンと名前を読んでというテーマで書いたものも思い出深い。イケメンの話は対象が不確かな全方位への攻撃が却って誰も傷つけないみたいなところがあった。気になる方はアプリからバックナンバーをお読みになってください。
様々なパターンの写真を撮ってもらったのも感慨深い。髪の長さや色も違えばヘアメイクも衣装もロケーションも話以上にかわっていた。約2年かけて撮影しているだけあって、これをまとめたらすごいことになりそうだ。人間の雰囲気も今見るとじんわりと変化しているような気もする。
このエッセイは『「稲葉友の」話はかわるけど』と、冠がついているのであまりいい加減なことはできない。しかし良いことを言いたいワケでもない。程よく良い塩梅で ウダウダ言い続けたい。
この連載という形が終わっても、自分で文章を書き始めるかもしれない。それくらい書くことが日常になっていて、吐き出し口になっている。
文章を組み立てるのもハマっていくと楽しい。ひとつ、この日本語を使いたいとなったら、そのための文章を組み立てたり。好き勝手やらせてもらっているから、書き上げたものを客観的に読んで「変なの」と思うこともある。当然音読なんてするとヤバい。そういうものでも完成すると毎週また一つ積み木を積み上げたような充実感もある。毎週〆切ギリギリで送っているけど。ごめんなさいマネージャーさん、編集のミキティこと藤坂さん。
初回から続けて読んでもらえると分かると思うが、このエッセイは「これが中心のテーマです」というものがない。何かから逃げ回っているのだろうかというくらいに、ない。だからこそ毎回、自分の中で思いがけないところから話が展開したりする。それがテーマレスの楽しみの一つだが、取っ掛かりが掴めない時は全く進まないので連載としてなかなかリスキーでもある。
なんやかんやと言葉を紡いで並べ立て、そんな文章を面白いとか楽しいと言ってもらえたらとても嬉しい。面と向かって言われたら素直に「ありがとうございます」と言うけど、同時に戒めのように「自分は賢くもなければ浅はかな人間だ」と思うようにしている。実際そうだし、たぶんそう思ってる方が書き続けられる。と、思う。
言葉についての失敗も振り返ると大量にある。そもそも表で喋る量も多ければ書く量も増えてきたのでその分傷付けたり傷付いたりと、たくさん。自分は安心すると喋らなくなるからと考えると、何かが不安で口数手数多めになってしまうのだろう。下手な鉄砲スタイル。物量少なめで核心突きたいもんです。
自信無くし過ぎると逆に喋れなくなったりもするが、その状態が一番困る。「伝えなくちゃ伝わらない」を念頭に置いて過ごしたい。次回はたぶん、その辺りの話を。話がかわったら、それはそれで、良しとして欲しい。
次回の更新は12月16日(水)、「説明すること」について。お楽しみに!
プロフィール
稲葉友(いなばゆう)
1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。
撮影/高橋那月、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴、ヘアメイク/速水昭仁、スタイリング/添田和宏
衣装協力/コート¥72,000/クルニ
カーディガン¥12,000/エバース
オールインワン¥6,300/キャスパージョン(すべてシアン PR TEL:03-6662-5525)
ソックス(3足セット)¥2,500、スニーカー¥9,000/ともにヴァンズ(ヴァンズ ジャパン TEL:03-3476-5624)
その他スタイリスト私物
※すべて税抜き価格