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稲葉友の「話はかわるけど」

話は×終わる×けど【中編1】

毎週連載

第175回

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稲葉さんのみずみずしい感性の文章と、カメラマンとのセッションのような撮りおろし写真が、素晴らしい化学反応を起こしたこの連載。今回を入れて、残りあと3回です!

人が日々どんなことを気にして生きているのかに興味が沸くようになったのもエッセイを書き始めてからの変化だ。別に人から深い話を聞きだそうという意図でもなく、最近気になっていることを訊ねるようになった。自分にはエッセイの積み重ねでバックナンバーが多くあるので「自分はこんなことが気になっています」とこちらからも簡単なものを提供できる。結果として会話の中からネタ収集になったりしたし、そんな会話は頭の中を覗かせてもらえる気がして楽しくなることが多かった。

エッセイの中でこういうことが嫌だとか、こういう風になるといいなという話多くしたので、それが目の前で現れたとき「やっぱり嫌だな」「やっぱりいいな」と即なれる体験も多かったかな。一度自分の中で整理しているのであまり傷つかなかったり嫌悪感が減ったり改めて良さに感動したり。「エッセイで書いたあれだ」と、予習した感覚で認識できる。そういう意味では無闇に憤ることが減ったように思う。

エッセイ初期に書いていたものは、日々感じている憤りに関するものが多かったが、そんな憤りもここで消化することで整えられてパッケージされていった。ネガティブな議題の方が盛り上がりやすくポジティブは案外発展しづらいということもエッセイを書く中で明確に認識したことの一つだったな。人間の業だよね。清くありたいけど下世話な話もそれはそれで面白いという。

何か引っかかることを言う人と出会うと「こう思っているのか。ネタになるな」と反射的に思ってしまうようになった。これは悪い意味の職業病かもしれない。日々何かを見てこれ面白い、ネタになるかもと思うことにほんのり疑問を感じている。自分が立ち会った感動的な場面などで「これはお芝居に使えるかもな」と思っていること自体がお芝居に使えないということもあったり。その時その場でもっとピュアに自由に感じてこそ自分の中で引き出しになるのに、余計な思考が入り込む。

エッセイを書いていますという響きのカッコ良さは正直あった。だから何というわけではないのだけども、響きがいいよなと。そして自分のことを調べてくれた人にエッセイが取っ掛かりとしてあってくれることもありがたかった。ファンの方々が読んでくれたりもするし読むことがルーティンになっている方も少なからず居ると思う。その人たちのルーティンを奪ってしまうのはごめんなさいなのだけど、始まったものはいつか終わるから。どこで終わるかな、どこで終わらせるかなというのは薄らずっとあったが、終わりが来た今、なんだか清々しさもある。そもそもはなかったものだしね。世の中、すべてがそうだけど。

そんな生活のルーティンの1つが無くなるのは結構寂しいなやっぱり。最後のエッセイの撮影をしているとき、メイクしてもらっている時間に寂しいと想いが湧いて驚いた。チームの人たちはそれぞれまたお会いする機会も多いだろうに寂しいって思うんだなと。3年半という時間は伊達じゃない。

最終回の原稿を書き上げて水曜日に写真をインスタにアップしたら本当に終わりなんだな。それにしても今後のインスタ運用はどうしたもんか。週に一回撮影した写真と共にエッセイの告知を必ずしていたから、僕のインスタは最低週に一回は稼働していた。それとラジオの次回予告動画をストーリーにアップするのが現状のルーティン。自分で今後は意識して写真を撮らないとなあ。なあ……。やはり毎週カメラマンさんが撮ってくれた写真があり、スタイリングもヘアメイクも、さらには内容も毎週あるって凄いことだ。

写真ということで言えば、本当に沢山のカメラマンさんに撮っていただいた。お仕事したことがある方もいれば初めましての方もいて、毎度セッションで感じで楽しかった。こんな制約の少ない撮影現場も珍しいので、好きにやりましょうが絶対条件だった。このエッセイとそれに伴う写真撮影は僕ら作る側にとってある種すごい解放されていて、フィードバックできる場所になっていた。他で言えないこととやれないことも詰め込めたり。

何か形に残したいという野望は今、ここに書いておく。3年半かけて言葉を吐き出し文章にして写真を撮り続けることも単発の企画では難しいので、これは本当に本に残したい。自分の素とも違うがプレーンな状態に近いものがこんなにバックナンバーとして残ることもうないかもしれないし。

100回超えたあたりから書籍化に想いを馳せることがちょいちょいある。このエッセイは177回目で終わる予定なのだが、177回は全部載せられないしどれをピックアップして加筆修正するのかなと。加筆修正してえ。そして177回ということはあと1回で178(イナバ)回なので1回分書下ろししたらまあキレイだなと、そこまでは妄想済み。

妄想はしているが、書籍化はしなくとも自分の中にあるボンヤリしたものや言葉を長い期間発信し続けられたのは1つの財産になったと改めて思う。こんな機会をいただけて感謝であります。そして終わるという話はもう少し続く。

今回もヘアメイク速水さん撮影の写真を掲載します♪

プロフィール

稲葉友(いなばゆう)

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影/古川義高、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴、ヘアメイク/速水昭仁、スタイリング/添田和宏、衣装協力/シャツ¥19,800、パンツ¥31,900/ともにセモー(ビューローウエヤマ TEL: 03-6451-0705)
Tシャツ¥1,650/ヘインズ(ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター TEL:0120-456-042)
シューズ¥10,450/コンバース(コンバースインフォメーションセンター TEL:0120-819-217)
その他スタイリスト私物