山下幸輝「こきぴあ」
「見とれてしまうほどカッコいい! 上杉さんが梅ちゃんで良かったです」ゲスト:上杉柊平さん
月2回連載
第30回
今回の「こきぴあ」は、とっても素敵なゲストが登場。映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』で梅宮一役を演じた上杉柊平さんが遊びに来てくれました!
梅宮といえば、幸輝くん演じる兎耳山丁子と拳を交え合う関係。魂の激闘シーンを演じながら、二人はどんなことを感じたのか。「こきぴあ」だけの貴重な対談トーク、ぜひお楽しみください。
山下くんには、見た目だけじゃわからない熱さがある
── お二人は今回が初共演です。お互いの印象から聞かせてください。
山下 いや、もうカッコいいの一言です。
上杉 あららら(笑)。
山下 なんだろう。美術館の彫刻的な。見とれてしまうカッコよさがあります。
上杉 ありがとうございます。山下くんはひたむきですね。まず撮影前にアクション練習でご一緒したんですけど、あれだけ多忙な中、真剣に取り組む姿勢が印象的でした。
山下 僕自身、こんなにがっつりアクションをやるのが初めてで。最初は基礎からのスタートだったんですけど。
上杉 兎耳山は難しい動きも多かったじゃない? それをこなすだけでも大変だったと思うのに、山下くんはアクションにちゃんと役を乗せるところまで追求していて、その姿に僕も引っ張ってもらったところがありました。
山下 いや、むしろご迷惑をかけるところもあったと思うんですけど。やっていくうちに、最初はすごい気を遣っていたのが、徐々にもっと体を委ねていいんだと思えるようになってきたというか、いい意味で上杉さんに甘えられるようになっていきました。そこが兎耳山自身の梅ちゃんに対する気持ちと重なるものがあって。本当に上杉さんが梅ちゃんで良かったなと思いました。
上杉 山下くんは見た目は爽やかで可愛らしいけど、見た目だけじゃわからない熱さがある。そこがすごくいいな、と。この人のことをもっと知りたいなと思わせてくれる魅力のある人です。
うさ耳は可愛いかなと思って、やってみました
── では、そんな二人のお芝居を振り返っていきたいと思います。まず兎耳山と梅宮が最初に対峙するのが、兎耳山が風鈴高校に乗り込んできたシーンです。
上杉 これはもう全編通してなんですけど、とにかくこの作品は風がすごいんですよ。大きいファンを3〜4台使ってずっと風を吹かせているので、音が録れない。だからアフレコが前提なんです。でも、芝居をする上では相手の台詞を聞かなきゃできないから声を張らないといけなくて。声を張ると口を大きく開けないといけないので、後でアフレコを録るときに口のサイズと芝居のトーンが微妙に合わせづらくて。そういう技術的な難しさがあって、特にそのシーンは今回のアフレコの中でいちばん録り直しをしました。
山下 風はなかなか大変でしたよね。
上杉 山下くんとのお芝居という意味では、兎耳山が自由自在に動き回ってくれたんですよ。だから僕は逆にどしっといようと。そこで静と動の対比を出せたらということは意識していました。
山下 そこは僕も意識していました。あそこはとにかく動き回りたかったから、ドライ(リハーサル)の段階からいっぱい動いて。
上杉 すごいぴょんぴょんしていたもんね。
── あそこで山下さんがうさ耳ポーズを入れているんですよね。あれは原作にない動きですが、山下さんのアイデアですか。
山下 そうですね。可愛いかなと思って。そしたら監督もいいねって言ってくださって。
── クライマックスの決闘でも、開戦の合図としてうさ耳ポーズが用いられています。そこがいい回収になっていたんですけど、あれはこの最初の対峙のシーンがあって生まれたものですか。
山下 どっちが撮影先でしたっけ?
上杉 決闘が後だったよね。確か芝居場を先に撮ったと思う。
山下 ですよね。 決闘のシーンでもう1回やったら面白いかなということで、こういうお芝居になりました。
── 「いざ尋常に勝負勝負勝負〜」というところも、3回目の「勝負」だけあえて拡声器から外して地声で言う。これも原作にないアイデアだったので、面白いなと思いました。
山下 梅ちゃんというおもろいやつがいて、兎耳山は梅ちゃんと喧嘩がしたくてうずずうずしてる。そういう楽しみ感を出したくて、ここで外してみたら面白いかなって。
上杉 今回僕らの中で「原作がこうだからこうしなきゃいけない」という発想がそもそもなかったんですよね。もちろん原作へのリスペクトは、みんなそれぞれ持っている。でも、お芝居は現場で生まれてくるものが大事だから。監督を含め、現場で「ここでこういうのを入れたら面白いかもね」と対話をしながらつくっていった部分は多かった気がします。
梅宮で大事にしていたのは、受け止めること
── それこそ兎耳山の蹴りを原作では梅宮は止めるんですけど、映画では止めずに当てられます。
上杉 そこも現場で監督と話す中で食らったほうが梅宮なんじゃないかという話になったんです。今回、梅宮を演じる上で大事にしていたのは、受け止めることでした。兎耳山の痛みを受け止めてあげられるのは自分しかいないと梅宮はわかっていた。兎耳山を変えてやろうとか、自分の考えを押し付けようとかは一切考えていないけど、でも、もっと楽しい道があるんじゃないかということを一つ提示してあげたいとは思っていたんだろうと。だから、蹴りに関しても止めずに、そのまま受けたほうが梅宮の姿勢が見える気がしたんです。
山下 最後の決闘でもそうでしたよね。
上杉 そう。基本、梅宮から手は出さない。最後も頭突きだから、手は出していないんです。アクション練習のときに最初のうちはもっと止める動きとか入っていたんですけど、全部食らっ たほうが良くないですかと話してい るうちに、止めるという選択肢がなくなっていました。
山下 兎耳山には、大人になりきれなさというか、自分のことがよくわかっていない弱さがあって。それを梅ちゃんに受け止めてもらったような感覚は僕も決闘のシーンをやりながら感じていました。彼の中のぽっかりと空いた穴を埋めてもらった気がして、すごいありがたかったです。
上杉 ただ、全部受けると言っても、食らいすぎちゃうと梅宮が弱く見えるし、まったくダメージがないと兎耳山が弱く見えてしまう。そこのバランスは難しかったです。たとえば顔に蹴りを入れられるシーンも、すぐに顔を正面に戻したら、兎耳山の蹴りが軽く見えてしまう。だから、一旦置く。そういう強弱は、都度都度話し合いながら決めていました。
── 二人の決闘は、クライマックスを飾るにふさわしいシーンでした。
上杉 あそこまで気持ちを引っ張ってくれたのは、山下くんですよ。あんなに熱くなると思ってなかったんです。でも、現場で「助けて」と言ってるような表情をしている彼を見たときに、自然とあの熱量が湧き上がってきた。本番が終わった後、カメラマンさんが「めっちゃいいシーンだったね」と言ってくださって。「あの空気は兎耳山がつくってくれた」と話をしたのを覚えています。
山下 すごい兎耳山と自分が重なるんですよ。自分の気持ちをわかってほしいんだけど、それをうまく言葉にできなくて、うわーってなる感じが、自分もそうやなって。
上杉 この社会を生きている人はみんな兎耳山だと思います。役者なんて特にそう。誰も人の苦しみなんてわからない。言葉では共感しますけど、本当はわからないじゃないですか。誰にも助けてもらえない中、みんな孤独を抱えて生きている。だからこそ、「いいんだよ、それで」と言ってくれる人がほしくて。僕も演じたのは梅宮ですけど、気持ちは兎耳山です。梅宮みたいな慈愛に溢れた人間にはなれない(笑)。
山下 最後のほうのシーンは、もう全部ボロボロで。マネージャーさんには相談して、整骨院とか行かせてもらっていたんですけど、もう体じゅうボロボロって感じで、だからこそ兎耳山のもうやめてくれよって気持ちがわかるというか、同じ気持ちでやっていました。
街の変わったものを撮るのが好きです
── では、ここからは役を離れたお二人の共通点を探っていきたいと思います。まずお二人ともカメラがお好きなんですよね。
上杉 そうなんです。この現場でもオフショットを撮り合う企画があって、 そのときに山下くんもカメラが好きという話を聞きました。何で撮ってるの? デジ(タル)?
山下 デジです。最初からデジですか。
上杉 最初はデジで撮ってて、でもフィルムでフォーカスを合わせたい 気持ちが出てきて。今ほどカメラもレンズも高騰してなかったから、フィルムに行ったんだけど、フィルムはフィルムで現像がダルい(笑)。
山下 わかります(笑)。
上杉 それでデジに戻ったんだけど、デッカいのを持ち歩くのが嫌で、選んだのがリコーのGR。でも最近はそれすら持ち歩くのが面倒くさくなって、iPhoneでいいやってなってる(笑)。
山下 僕は、最初フィルムだったんです。形から入る人間なんで(笑)。ライカを買ったんですけど、すぐ壊れちゃって。
上杉 えー。でも直るで しょ?
山下 いや、それが部品がないとかで直せなくて。あきらめて新しく買ったのが、シグマのfp。『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』のAPさんにすごいカメラ好きの方がいて、山下くんにはこれがオススメだよと紹介してもらったのを買って、今ずっと使っています。
上杉 結構持ち歩いてる?
山下 持ち歩きます。
上杉 そうだよね。持ち歩くと撮ろうってなるしね。
山下 なります。
上杉 そうなんだよな〜。1回持ち歩かないクセがついちゃうと、もういいやってなっちゃうんだよなあ。だから、なるべく小さいカメラは持ち歩こうと思って、GRを使ってます。
── 写真好きな人あるあるって、何かありますか。
上杉 僕は街の変わったものを撮るのが好きなんです 。
山下 うわ〜。わかります。
上杉 なんでこんなところに三角コーンあるの?みたいな。わかる?
山下 めっちゃわかります。道に場ミリ(立ち位置を示す目標のこと)が落ちてあって、たぶんここでロケしてたんやろうな〜とか。
上杉 わかるわかる。そういう違和感が好きだから、見つけたら撮りたいってなるんですけど、それにはちゃんと意識して歩かないといけないから。普通は気にしないようなところに目を向けているっていうのは、あるあるかもしれない。
── 次は音楽について。上杉さんは俳優だけでなく、ラッパーとしての顔もお持ちです。
上杉 山下くんもグループをやってるし、俳優とは別の顔を持っているというのは確かに共通点かも。でも芝居と音楽は全然違うよね?
山下 違いますね。
上杉 芝居は役があるけど、音楽は自分のありのままだから。歌詞も音も自分で決めているから、背負っているものがない。
山下 確かに。自分というものを表現できる唯一の時間っていう感覚はあります。
上杉 だからライブの日は気が楽なの。お芝居は逆。背負うものがすごいあるから、作品に入ってる間は結構しんどいこともある。
山下 同じです。僕も芝居やってるときのほうがしんどいかも。
上杉 そうだよね。山下くんの場合はダンスもやってるから肉体的なしんどさはまた別にあるかもしれないけど、同じ表現でもこんなに違うんだっていうのは感じます。
上杉さんに影響されて、ルチルを買いました
── 上杉さんはご自身のYouTubeでインテリアやファッションも発信しています。このあたりでハモれるトークができそうなものはありますか。
山下 僕、上杉さんのYouTubeめっちゃ観てて。
上杉 本当?ありがとうございます。
山下 上杉さんに影響されて、ルチル(ルチルクォーツ。ルチルが水晶に内包された鉱物のこと)買いました。
上杉 これ?(と、腕につけているルチルクォーツのブレスレットを見せる)
山下 わー! それです!
上杉 俺、高2くらいからつけてるから。
山下 そんなに長いんですか。どういうきっかけで?
上杉 昔から小さいキラキラしたものが好きで。子どもの頃、最初になりたい職業が宝石屋さんだったの。
山下 へ〜!
上杉 当時、週刊で小さいアメジストとか石が届く雑誌があったの。それを集めたり、ずっと好きではいたんだけど、一時期つけてなくて。俳優をやるぐらいのタイミングで思い出して、「そういえば、あのブレスレットどこにやったっけ?」と思ったら母親が持ってくれていて。そこからまたつけはじめた感じ。
山下 実は僕も今日つけてきました(と、上杉さんよりひとまわり小さいルチルクォーツのブレスレットを見せる)。
上杉 おー、いいね!そのくらいのサイズのほうが目立たなくていいよね。
── 山下さんはルチルのどんなところに惹かれたんですか。
山下 え……カッコいい…!
上杉 それはもう縁ですよ。ルチルのパワーを宇宙から感じてるんだよ(と、目を閉じて手を広げる)。
山下 あははは!
上杉 僕は何でも意味やタイミングがあると思っていて。僕がこのブレスレットをつけはじめたのも、俳優という道に進む、自分が新しく動き出すタイミングだったし。そうやって何かあったときに心の拠り所になるというか、良くも悪くも責任をなすりつけられるものを持っておくと気が楽だよと思います。
── では、このあたりで締めくくりとさせていただきますが、最後に今日の感想をお願いします。
上杉 僕と山下くんって9個違うんですよ。だから、撮影当時から絶対怖かったと思うんです。気も遣うだろうし。だから、やりづらかったらごめんねと思っていたんですけど。
山下 いやいや。本当にそんなことないです。
上杉 撮影期間中、僕は山下くんに助けられました。今日はもうその気持ちを伝えられたら十分です。
山下 僕も本当に感謝していますし、できたらまた違うところで共演したいなって思っています。
上杉 したいよね。
山下 なんか、上杉さんとだったら、もっとお芝居の向こう側に行けそうな気がして。
上杉 撮影が終わったときにそういう話をしてたんですよ。今回はアクションもあったし、ちょっとファンタジーなところもあったから、次はもっと生っぽいお芝居を一緒にやりたいねって。
山下 はい! やりたいです!
上杉 僕もまた一緒にやりたいので、誰か企画してください(笑)。
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≪作品情報≫
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
大ヒット公開中
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)にいさとる/講談社 (C)2025「WIND BREAKER」製作委員会
プロフィール
山下幸輝(やました こうき)
2001年11月7日、大阪府生まれ。B型。
2020 年の第33回ジュノンボーイ・コンテスト、ファイナリストとなり俳優デビュー。’ 5人組ボーイズグループ・WILD BLUEとしても活動中!
撮影/米玉利朋子、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹
ヘアメイク/(山下さん)寺澤はるか(上杉さん)吉田太郎(W)
スタイリスト/(山下さん)山田莉樹(上杉さん)RIKU OSHIMA