朝岡聡 オペラが呼んでいる!
ロッシーニの聖地ペーザロ
毎月23日
第8回
イタリアのペーザロに通い続けて17年目の夏でした。海水浴ヴァカンスとロッシーニの街。
オペラの故郷イタリアに、毎年8月私が訪れる聖地がある。それはローマでもミラノでもナポリでもなく、アドリア海に面する港町ペーザロ。ここはロッシーニの生まれた町である。
『ナポレオンは死んだが、また別の男が出現して、モスクワでもナポリでも、ロンドンでもウィーンでも、パリでもカルカッタでも、連日話題になっている。この男の栄光は、文明の及ぶ境界に制限されるだけである』(山辺雅彦訳)とスタンダールが「ロッシーニ伝」の冒頭で形容した男は、オペラで19世紀前半の全ヨーロッパを席巻した「音楽界のナポレオン」だった。
彼のオペラ作品のオリジナリティと音楽様式に配慮しつつ、最高の演奏を目指す音楽祭がロッシーニ・オペラ祭(ROF)。1980年に始まり、いまやバイロイト、ザルツブルクと共にヨーロッパ夏の三大オペラ祭と並び称せられるほどの人気だが、私はここに17年通い続けている。