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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

ザック・エフロン

連載

第124回

かつてはイケメンアイドルとして一世を風靡、新作では衝撃的な肉体改造!

── 今回はザック・エフロンです。彼が出演した『アイアンクロー』が公開されました。実在する米国のプロレスラ──家の伝記映画だそうですね。

渡辺 フォン・エリック・ファミリーです。父親のフリッツが、相手の顔を大きな手で鷲づかみにするワザ“アイアンクロー”を編み出し、それで人気者になったそうです。フォン・エリックはプロレスファンの間では有名らしく、周囲の男子はみんな知ってましたし、そのファミリーの悲劇についても記憶があるといっていました。私はこの映画で初めて知ったんですけどね。

1966年、ジャイアント馬場にアイアンクローをお見舞いする“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリック

── どういう悲劇なんですか?

渡辺 4人の兄弟をプロレスラーにして、最強のファミリーにしたいという父親の野望が招く悲劇でしょうか。そんな父親の夢を実現させるために兄弟が死力を尽くすので、観ていてかわいそうになる。何で口ごたえしないのかなあと思うんですが、そういう支配的な父親に、強くなければ男じゃないという価値観の中で育てられたから仕方ない。

兄弟のひとりひとりに悲劇が訪れるにもかかわらず、父親は自分が何をやったのか、まるで気づいてない。ラスト近くに、本作の核となるさりげなくとてもいいエピソードがあって、彼らを知らなかった私でさえ胸が熱くなった。特定のファミリーの物語ですが、ちゃんと普遍的なテーマをもっている。

父フリッツにアイアンクローをお見舞いする、ザック扮する次男ケビン

そういう中で、ザックが演じているのは次男のケビン。長男がいたんですが、彼は幼いときに亡くなっているから次男です。彼は兄弟の中でも父親にもっとも忠実で、その期待に応えるためだけに生きてきたので世間知らず。恋の経験だってない。青春を味わってないんですよ。

それだけだったらいつものザックでも大丈夫なんでしょうが、今回はプロレスラーです。だから徹底的に肉体改造をして、びっくりするほどの筋肉マンになってました。ザックだと言われないと気づかないほど。

違う言い方をすれば、そうやってでもやりたい役だったということ。彼ももう37歳なので、ハンサムなアイドルというイメージを破らなければいけない。頑張ったんですよ、きっと。

若い頃からマッチョボディだったものの、それにしたって別人のような身体になっていてビックリなザック

── ザックはミュージカルで活躍しているイメージが強いですね。

渡辺 ディズニーチャンネルの『ハイスクール・ミュージカル』(06)で大ブレイクして、同じくミュージカルの『ヘアスプレー』(07)に出演していたので、ミュージカルの印象は強い。私がインタビューしたのはやはりミュージカルの『グレイテスト・ショーマン』(17)のときでした。

現代のエンタテインメントの基本を作ったと言われる興行師、P.T.バーナムの半生をミュージカル仕立てで描いている。その中でザックが演じたのは実在しない、この映画のオリジナルのキャラクター、劇作家のカーライルでした。白人の彼が、ゼンデイヤ扮する黒人のブランコ乗りの娘に恋をする。当時としてはタブーの恋愛ですよね。ふたりがブランコに乗って愛を歌い上げるシーンは本作のハイライトのひとつです。

『グレイテスト・ショーマン』のゼンデイヤとのシーン

フィジカルトレーニングよりも心のメンテナンス

── 彼はどんな感じなんですか?

渡辺 すっごくいい印象でした。彼に何度か会ったことのある映画関係者が「とてもイイ人」といつも言っていて、本当にそうなのかなと思っていたら本当にそうでした(笑)。わざとらしさはまるでなく、とても自然にイイ人。側にいると和む感じでしたね。

── それはいいですね。

渡辺 『グレイテスト・ショーマン』のオファーに大喜びしたと言っていました。

「L.A.の大混雑しているフリーウェイにうんざりしていたとき、監督のマイケル(・グレイシー)から電話があり、この映画の出演オファーをもらったんだ。あまりの嬉しさに車から飛び出し“やったー!”と叫んでしまった(笑)」って。まるで『ラ・ラ・ランド』(16)を地で行くようなシチュエーションですが、本作の音楽を担当しているのは『ラ・ラ・ランド』でオスカーを獲得したベンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビ。

ちなみに『グレイテスト・ショーマン』は、ハリウッドのメジャースタジオ(20世紀FOX)が作る正真正銘のオリジナルミュージカルということで、随分前から注目を集めていた。だからこそ、ザックも喜んだわけです。

こちらも『グレイテスト・ショーマン』より主演のヒュー・ジャックマンと

彼はこう言っていました。

「カーライルを演じる上で素晴らしかったのは、彼の成長を体現できたこと、人生には誰かの期待に応える以上に大切な何かがあると学べたこと。そして、本当に大切なのは、自分の気持ちに対して正直であること。そういうことを悟れば本当の幸せを手に入れられると思ったんだ」

── 凄く真面目な感じですね。

渡辺 ザックは11歳のときからショウビズ界にいるので、いろいろと大変なんじゃないかと思います。このとき、ポッドキャストをやっている3人の米国人の名前を挙げて「僕の人生哲学の一部は、彼らの働き方や訓練の仕方、ある種の瞑想の仕方を基にしている」と言っていましたから。

── 誰なんですか、その3人って。

渡辺 ティモシー・フェレスという起業家であり投資家。ライフスタイルの第一人者だそうです。もうひとりはアスリートのリッチ・ロール、そしてダーレン・オレイアンというこちらも起業家のようですね。日本ではなじみがないですが。

彼らの言葉を聞きながら「フィジカルなトレーニングよりも精神的なトレーニングで柔軟さをキープする。スピリット・トレーニングを重要視している」と言っていました。11歳から芸能界にいると、心のメンテナンスをどうするのかが重要なんだと思います。子役から出発して失敗する俳優は多いですからね。

日本でも大人気となった『ハイスクール・ミュージカル』(06)のキラキラ期。1987年生まれのザックは19歳くらいで演じていたことになる

おそらく、そういうことをやっているから、カメラやマスコミの前に出るとき、良い感じでいられるのかもしれない。このとき、ついでにお気に入りのミュージカルも挙げてもらいました。

「まず『ムーラン・ルージュ』(01)。リアルだけどファンタジーでもある。つまり両方のパーフェクトなブレンドだよ。もう1本は『雨に唄えば』(52)。ジーン・ケリーとドナルド・オコナーに大きな影響を受けたから。若い頃、自分を表現したいとき、ダンスすることを恐れず自由なフィーリングで楽しむことを教えてもらったからだよ」

── 『グレイテスト・ショーマン』は大ヒットしましたね。

渡辺 公開時は沈みましたが、そのあと口コミなどでどんどん数字を伸ばしたという異例のヒットでした。

── ザックのこれからのスケジュールはどうなっているんですか?

渡辺 調べてみたら忙しそうです。『Killing Zac Efron』というリアリティショーのような番組と、1985年のフランス映画『赤ちゃんに乾杯』の英語版リメイク、さらに『ペーパーボーイ 真夏の引力』(12)でも共演したニコール・キッドマンとのラブコメもあるようです。

ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックらと共演した『ペーパーボーイ 真夏の引力』。“主役”ではあったものの、周りのオトナたちのインパクトにザックの印象は弱め

ちなみにまだ独身。『ハイスクール・ミュージカル』で共演したヴァネッサ・ハジェンズと世間公認でつきあっていましたが、2010年に破局。その後はそういうウワサはあまり聞いてない。仕事第一で頑張っているんでしょう、きっと。

作中同様、私生活でもアツアツなところを見せつけていたザックとヴァネッサ・ハジェンズ。

文:渡辺麻紀
Photo:AFLO
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