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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

アダム・ウィンガード

連載

第125回

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の監督は日本映画が大好き!

── 今回は、このGWに公開された『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の監督、アダム・ウィンガ―ドです。彼はこのシリーズ、前作の『ゴジラVSコング』(21)に引き続き2本目ですね。今回はどんな怪獣決戦が観られるんですか?

渡辺 今回の怪獣はキング・コングとゴジラ、モスラに加え、“シモ”という冷凍光線を出すニューフェイスのキャラクター。そしてコングと敵対する邪悪なスカーキングとその部下。かなりたくさん登場して、彼らだけのセリフなしのシーンも多い。

私は前作も大好きだったんですが、この作品はより好きでした。ウィンガード監督には怪獣愛を感じるからです。

── でも麻紀さんは、それほど怪獣好きじゃないですよね?

渡辺 そうなんですが、キング・コングはほら、ウィリス・オブライエン(初代『キング・コング』のモデルアニメーター)やらピーター・ジャクソン、リック・ベイカー、もっというとレイ・ハリーハウゼン(モデルアニメーター)も『猿人ジョー・ヤング』(49)で巨大な猿、動かしていますからね。モデルアニメ・ファンの私としては着ぐるみじゃない怪獣というかクリーチャーは大好きなんです。

今回はコングが何と言ってもかわいい。歯が痛くて抜いてもらったり、シャワーを浴びて喜んだり。ひとりしかいない絶滅種なので、同種族を探して地底を冒険し、少年コングに出会ったり、というのもよかった。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

ゴジラもローマの遺跡、コロッセオを寝床にしていて、その寝姿はもうネコ! こんなかわいいゴジラは見たことがない!! 何でもウィンガ―ドは自分が飼っているミスチフ(いたずら)という名前のネコを参考にしたらしいのですが、その寝姿はホントにネコでした(笑)。

日本の監督が怪獣を演出するのと、海外の監督では違うような気がしますね。この手の映画にも明るい私の友人は、海外の監督は怪獣を動物とみなして演出していて、日本の場合は近寄りがたい神々しい存在みたいな捉え方をしているのでは?と言っていましたが、確かにそうかもしれない。

ちなみに新怪獣の“シモ”。日本語の“霜”から名付けたようですが、このデザインなどがレイ・ハリーハウゼンのモデルアニメ映画『シンドバッド七回目の航海』(58)に登場するドラゴンによく似ている。シモもスカーキングの武器兼ペットみたいな感じで首輪をしていますが、ハリーハウゼンのドラゴンも魔法使いに飼われていて首輪をしているんですよ。私は、ハリーハウゼンにもオマージュを捧げているんじゃないかと勝手に思い込んでいます(笑)。

── だから大好きなんですね(笑)。

渡辺 そうです。で、ウィンガ―ドのインタビューをしたのは『ザ・ゲスト』(14)というホラーサスペンスのときでした。この作品の主人公だったダン・スティーヴンスが今回、獣医役で出演しているんですが、コングの悪い歯を抜いて、代わりに金属製のものを入れてあげる。

2024年3月にL.A.で開催された『ゴジラ×コング 新たなる帝国』のワールドプレミアにて。左端の動きのうるさい男がウィンガード監督。ちなみに右端がダン・スティーヴンス。

で、『ザ・ゲスト』です。これは、戦死した息子の戦友だったという男を受け入れたことでその家族が味わう恐怖を描いた作品です。ありがちな展開なんですが、演出がソリッドでドキドキさせる。ウィンガードの前作は『サプライズ』(11)で、これも予期せぬ来訪者の話。こういうのは上手いなあって。ウィンガ―ドはこんなことを言っていました。

「企画は『ターミネーター』(84)や『ハロウィン』(78)のような80年代っぽい映画を作ろうというところから出発した。単なるオマージュじゃなく、ストーリーやキャラクターにそういう要素を入れようという感じかな。僕にとっては80年代の映画は暴力的だけれど遊び心がある。当時のアメリカは保守的だったので、まるでその反対のような映画が作られていたんだよ」

ちなみにこの映画のヒントになったのは三池崇史の『ビジターQ』(01)だそうです。これも、謎の来訪者が家族を壊していく話のようなので、設定は似ているかも。

── 調べてみたらその三池監督の作品、とてもマイナーですよね。そういうのも観ているって凄くないですか?

2014年、『ザ・ゲスト』のイベントで出演女優マイカ・モンローとパシャリ。この頃から動きがうるさい。

渡辺 ウィンガ―ドは本当に日本映画が大好きのようでした。塚本晋也の『鉄男』(89)や『東京フィスト』(95)、黒沢清の『CURE』(97)や『回路』(01)。中田秀夫の『リング』(98)についても「『シャイニング』(80)の上を行くほどじゃないけど、相当に好き」と言っていました。

また、そういう映画を観るようになった理由についてはこう語っていました。

「90年代のアメリカ映画って本当につまらない。みんな(クエンティン・)タランティーノの真似ばかりしていたから。そういう中で日本の三池崇史や園子温が面白いことをやっていて目をつけた。ホラー映画に関しては、ここ15年くらいは中島哲也の影響が大きい」

── 出てくる日本映画の監督の名前がツウっぽい!

渡辺 ありがちなタイトルも挙げてませんからね。三池監督にしてもカルトな作品だし。そういう作品をハリウッドリメイクしたい?と聞いてみたんですよ。

「したい!(中島哲也の)『告白』(10)とか、アメリカ舞台でリメイクするとどうなるんだろうとドキドキするよね(笑)。あとは『CURE』もいい。あの怖さはストーリーではなく雰囲気だからリメイクしてみたい。もう1本は韓国映画の『悪魔を見た』(10)。コアになるストーリーはシンプルで、どんな文化にも翻案しやすいと思うんだ」

『悪魔を見た』はイ・ビョンホン主演の復讐劇。かなりグロい描写が多いようです。ウィンガ―ドはハリウッド版リメイクの『Death Note/デスノート』(17)を手掛けていますが、これはあまり評判よくなかった(笑)。だから、このシリーズで本領発揮、なのかもしれない。

2017年、東京で行われた『Death Note/デスノート』ジャパンプレミアにウィンガードも登壇(右端)。左端はマシ・オカ。

── 怪獣映画の話はしなかったんですか?

渡辺 このときのインタビューには出てこなかったですね。私が怪獣映画に詳しくないので、そういう話にならなかっただけなのかもしれない。でも、これだけ日本映画の話が出てきているので、子どもの頃から親しんでいますよ、絶対。

文:渡辺麻紀
Photo:AFLO
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