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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

ゾーイ・サルダナ

連載

第147回

ゾーイ・サルダナ Photo:AFLO

『エミリア・ペレス』でアカデミー賞助演女優賞を受賞!

── 今回はゾーイ・サルダナです。3月28日に公開された『エミリア・ペレス』でアカデミー賞助演女優賞に輝きました。この映画、麻紀さんのお気に入りだとか。

渡辺 そうです。オスカーの予想特集でも作品賞はこの作品にしたくらいでした。作品賞・監督賞・主演女優賞・助演女優賞などのメインを筆頭に13部門の最多ノミネートを果たしましたが、その後、主演女優にノミネートされているトランスジェンダーの女優さん、カルラ・ソフィア・ガスコンが5年ほど前、SNSに人種差別的な投稿をしていたことが明らかにされ、一気に失速してしまい、最終的にはゾーイの助演女優賞のみの受賞に留まったんです。本当に最近は、こういう過去が追いかけてくる系の展開が多いですよね。口は災いのもとというか、SNSは災いのもと、ということなのかも。

とはいえ、作品にとってはネガティブな方向に行っていたものの、さすがにゾーイだけは無視できなかったということ。本作の彼女は本当に凄かったから。

『エミリア・ペレス』

── 彼女が主演女優でもよかったくらい、出番は多いと聞いてます。

渡辺 そうなんです。ただ、作品的には「トランスジェンダーの初の女優賞ノミネート」という話題性を取ったとも考えられるし、そもそもタイトルが男性→女性への適合手術をしたガスコン演じるヒロインの名前だし。まあ、いろんな大人の事情があるのかもしれない(笑)。

ゾーイが演じているのはメキシコの女性弁護士。手柄は男性弁護士にもっていかれ、お金と権力に屈しなくてはいけないという、理想とはほど遠い環境で仕事をしている。そんな彼女に声をかけたのは、メキシコの麻薬カルテルの大ボス。コワモテで冷酷な男だけど、実は幼い頃から女性になりたいという願望があり、その手術などの手伝いを依頼される……というところから物語は始まるんです。

ジャンルはミュージカル。私はミュージカル、苦手なんですが、これは全然OKでした。歌が物語を引っ張っているし、その楽曲もバラエティに富んでいる。そもそも物語自体、極めてユニークですからね。そういう中でゾーイは演技はもちろん、歌も踊りも見事にこなしている。

『エミリア・ペレス』

── ゾーイが注目されたのは『アバター』(09)でしたよね? 

渡辺 その前に(スティーヴン・)スピルバーグの『ターミナル』(04)にイミグレーションのオフィサー役で出ている。このときの設定は『スター・トレック』の熱烈ファンのトレッキーで、コンベンションに行くなどの話をしているんですが、そんな彼女が次に出演したのがJ.J.エイブラムスによるリブート版の最初の『スター・トレック』(09)。初めて彼女にインタビューしたのも『スタトレ』で、この際に確か『ターミナル』のときの話を聞いたんですが、テープ起こしのデータが消えていて、詳しいことが分からない。

── それは残念ですね。

『ターミナル』にも出てたのは忘れてる人も多いかも!?
Photo:AFLO

渡辺 かなりテキトーな保管なんで仕方ないんですけどね(笑)。

ゾーイとジェームズ・キャメロンは完璧主義者!?

渡辺 で、次は同じ年の『アバター』でした。彼女はナヴィ族の族長の娘ネイティリを演じていますが、モーションキャプチャーを使っていて素顔は一切見せません。

「初めてジム(ジェームズ・キャメロン)に会ったとき、ネイティリの彫像を見せてくれて、ひと目惚れしちゃったの。すっごく美しかったから。でも、このエイリアンを演じるためにはメイクだけで5時間はかかるんじゃないかとジムに言ったら“大丈夫。その心配はない”って。そうやってモーションキャプチャーの説明をしてくれて、とてもエキサイティングなテクノロジーだと思ったわね」

当然、素顔が見えないわけだから、女優としてはどうなんだろうと思うじゃないですか。こう言っていました。

「私は演技をするのが大好きで女優になったのだから、顔が見えないというのはさほど問題じゃない。そんなことより、演技の自由度に関しては本当に素晴らしかった。無限のイマジネーションをもつことができるからよ。大人になるとある意味、そういう自由な心を閉ざしたりするけど、それをモーキャプは開放してくれる。本当に最高だった。年に一度、モーキャプ映画に出たいくらい」と笑っていました。

“水”をフィーチャーした前作から一転、“炎”が印象的なシリーズ3作目『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は2025年12月19日に日米同時公開予定。4月3日にラスベガスで行われたシネマコンにゾーイが登壇
Photo:AFLO

── モーキャプ映画、そういう人多いですよね。

渡辺 そうですね。性別を超え、人種を超え、年齢を超えて演技ができるから、リミットがないんでしょうね。ゾーイを選んだキャメロンは、その理由について「バレエをやっていたから、彼女はとても柔軟性があった。しかも、辛抱強い」って。『エミリア・ペレス』でも、そのバレエの経験はとても活かされていましたからね。

── 「辛抱強い」というのも今回、活かされているんですか?

渡辺 辛抱強いというより、彼女、自分のことをこのとき「完全主義」と言っていたので、そういう感じが『エミリア・ペレス』でもとても伝わってきましたね。

── キャメロンも完全主義者として有名ですよね。

渡辺 だから、キャメロンが完全主義者だと思った瞬間があれば教えてくださいと聞いたら、こんな答えが返ってきました。

「私自身がちゃんとやらなきゃ気が済まないタイプなの。半分くらいの力を入れてやるくらいなら、最初からやらない。私は没頭するタイプで、自分がやると決めたら絶対に途中で止めない。それが私にとってもジムにとっても普通だから、彼を完全主義者と思った瞬間はないわ(笑)。彼を完全主義者というなら、私もそうよ」

完全主義者どうし? 仲睦まじいゾーイとジェームズ・キャメロン
Photo:AFLO

── なるほど! ゾーイって、SF好きなんですか? 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズにも出ているし、SFやファンタジーっぽい映画が多くないですか?

渡辺 SFは大好きだと言っていました。

「母親も私同様『デューン 砂の惑星』や『エイリアン』が大好きなので、それが普通だと思っていたら、どうも違うみたいで驚いたの。みんなSyfy(サイファイ)チャンネルを観てるんだろうと決めつけていたんだけど、違うのよね。『デューン』や『2001年宇宙の旅』、『ターミネーター』や『E.T.』や『ブレードランナー』など、誰もが観ていて好きだと思っていたら違うことに気づき驚いたくらい。好きな監督もジムはもちろんスティーヴンやデヴィッド・フィンチャー、ジョージ・ルーカスとかね。そういうSF系のフィルムメーカーが大好きなの」

ゾーイのアタリ役、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のガモーラ。『スタートレック』『アバター』『ガーディアンズ…』と、宇宙舞台の大作にはひっぱりダコ状態
Photo:AFLO

── 麻紀さんと同じじゃないですか(笑)。

渡辺 リドリー・スコットの名前はありませんでしたけどね(笑)。ゾーイと『スタトレ』でインタビューしたのは来日した時だったんですが、その後取材でロスに行ったとき、某ホテルで彼女を見かけたんです。すると彼女、近づいて来て「もしかして、日本でインタビューしてくれたジャーナリストじゃない? あのときはありがとう」ってハグしてくれた。よく覚えているなあって驚きつつ、やっぱりちょっと嬉しかったですね(笑)。

── オスカー女優になって彼女、どうなるんでしょうね?

渡辺 “オスカーの呪い”なんていうこともあるので、どうなるか分かりませんが、彼女の場合はシリーズものが多いから問題ないと思います。そもそも『アバター』シリーズがあと3本も作られる予定だし、『スター・トレック』シリ―ズも新作ありそうですよね。大丈夫ですよ、きっと。

文:渡辺麻紀

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