海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
ジャック・ブラック
連載
第149回

ジャック・ブラック Photo:AFLO
最新作『マインクラフト/ザ・ムービー』が世界で爆発的ヒットに!
── 今回はジャック・ブラックです。同名人気ゲームの実写化『マインクラフト/ザ・ムービー』に出演していますね。
渡辺 日本では4月25日からですが、すでに公開しているアメリカでは今年最高のヒット作になっています。オープニングの3日間だけで1億6000万ドルを弾き出し、公開3週目で3億5000万ドル目前。素晴らしい数字です。日本でもヒットしてほしいと思っているんですけどね。
── ということは、面白かったんですか?
渡辺 ゲームについてはまるで知らないんですが、ユルいギャグで構成されていて、それがクスクス笑いを生んでほんわかな気持ちになる。建物はもちろん、鳥やパンダやオオカミやら、動物もみーんな四角い世界で、ジャック・ブラックのまあるいボディが映えまくって、目にも楽しいという感じでしょうか。

ちなみに共演の“アクアマン”ことジェイソン・モモアもまあるくなっていて、ふたりのコンビネーションがいいんです。実世界では落ちこぼれなふたりが、仲間と一緒に四角い世界の危機を救おうとする物語です。これだけヒットしたらきっと、続編も作られると思います。

監督はブラックとは『ナチョ・リブレ/覆面の神様』(06)で組んでいるジャレッド・ヘス。私がブラックにインタビューしたのもこの映画です。彼がブレイクした『スクール・オブ・ロック』(03)のときもやったんですが、資料をなくしてしまった。覚えているのは、ロックミュージックの使い方が上手な監督は誰だと思うという質問にマーティン・スコセッシと答え、とりわけローリングストーンズの使い方に長けている、みたいなことを言っていましたね。以来、私もスコセッシの映画を観るときは、そういうところにも注目するようになりました。
ブラックは『スクール・オブ・ロック』の前から気になる存在でした。『ジャッカル』(97)や『エネミー・オブ・アメリカ』(98)、『ハイ・フィデリティ』(00)などオタク役が多くて、「あ、またこの丸い人がオタクを演じている」という感じだった。ブレイクしたのもロックオタクの役ですからね。

── 確かに見た目もオタクっぽい(笑)。
渡辺 おそらく、そういうことは『スクール・オブ・ロック』のときに聞いているとは思うんですが、取材資料がないから分からない(笑)。
本人はコメディアンによくあるパターンのひとつで、真面目という印象でした。映画で笑わせてくれているから、インタビューでは真面目に対応するのかもしれません。そして、いい人だと思います。『ナチョ』で彼を起用した監督ヘスは、こんな話をしてくれました。
「ジャックは本当にナイスガイなんだ。彼はこの撮影が終わったら即、『キング・コング』の宣伝でニューヨークに行かなくてはいけなかった。だから彼は600人のエキストラを使ったリングのファイナルシーンを撮り終わり、急いで現場から立ち去ろうとした。ところが、そのエキストラの人たちやスタッフ&キャストが、彼に向って“ジャック、ジャック”と叫び出したので、ジャックはリングに戻りみんなに挨拶したんだ。その後、自分のトレーラーで感極まって泣いてたよ。どんなに小さな役の人でも、ジャックと個人的なつながりを感じるようになっていたからだ。そういうヤツなんだ、ジャックは」

だから、再び『マインクラフト』で組んだわけですね。もしかしたらブラックの方が選んだのかもしれませんが、どちらにしろ日頃の行いは大切です(笑)。
── そうですね(笑)。
ジャック・ブラックが“嫉妬”していたコメディ俳優とは……?
── この連載のエイドリアン・ブロディの回では、ブロディが「ブラックは子どもに人気があって羨ましい」みたいなことを言ってましたよね。
渡辺 本人も言っていました。
「なぜか僕、子どもに人気があるんだ。びっくりするくらい子どものファンがいる。こんなことがあった。ロングアイランドの撮影で家を借りていたとき毎日、誰かがドアを叩くんだ。開けてみると誰もいない。ところがある日、すぐにドアを開けたら、大勢の子どもたちがいて、僕の顔を見るなり“ワッ”と言って黙ってしまった。話しかけても何も言わず立っているだけで困っちゃってね(笑)。あとで聞いた話だと、僕がその界隈に滞在しているというウワサが子どもたちの間で広がり、会いに来てくれたみたいなんだ。子どもたちに囲まれることはよくあるけど、僕はとても名誉なことだと思っている」
これは『ナチョ』の取材のときで「でも、あと5年も経ったら、僕のことなんてみんな忘れるんだろうな」なんて言ってましたが、まるで大丈夫ですよね。『マインクラフト』でまた子どもたちの人気に拍車がかかりそうだし。彼の出演作、あらためてチェックしてみたら『ジュマンジ』シリーズや、クッパの声を務めた『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(23)とか、子どもが喜びそうなゲーム系が多いように感じますね。

── コメディアン系の役者はシリアスの方向にシフトする人が多いですが、彼はコメディ一直線という感じですね。
渡辺 『ガリバー旅行記』(10)のときは、そういうことについて「コメディ系役者の中にはシリアスを意識する人もいるけど、僕はそんな気サラサラない。この映画のように、自分が楽しめるプロジェクトを選ぶとコメディになっちゃうわけだし、正直、子どもっぽいギャグが大好きなんだから、これはもう仕方がない」と笑っていました。潔くていいですよね。
あ、このインタビューのとき、コメディ俳優で尊敬している人はいるか聞いたんですが、こう言っていました。
「他のコメディアンたちにはむちゃくちゃ嫉妬している。この“嫉妬”というのは、僕の最高レベルの愛のかたちなんだよ。今、そのジェラシーが向かっているのはウィル・フェレル。彼が羨ましくって仕方ない。面白いし不条理だし、驚くほどクレバーだから。ジーン・ワイルダーにも嫉妬するよ。彼の『ヤング・フランケンシュタイン』、素晴らしかったから」
もちろん、今は違うかもしれませんけどね……というか、最近はあまりコメディアンの活躍、聞かないかもしれない……どうなんでしょう。

── ブラックの次回作もコメディなんですか?
渡辺 『アナコンダ』(97)のリメイク『Anaconda』です。ジョン・ボイトが巨大ヘビことアナコンダに呑み込まれていたオリジナルは動物パニックホラー映画でしたが、今回は思いっきりコメディの方に振り切っているんじゃないでしょうか。共演がポール・ラッドにスティーヴ・ザーン。中年の危機を迎えた仲良し三人組が大好きな映画のリメイクをすることになり、ジャングルに向かうが……というストーリー。そもそも大好きな映画が『アナコンダ』というのが笑えるというか、もうコメディ要素ですよね。
監督はニコラス・ケイジの『マッシブ・タレント』(22)で注目されたトム・ゴーミカンです。きっとこの後に『マインクラフト』の続編がありそうだから、ブラックの場合、コメディ一直線で大正解だったんだと思います。
文:渡辺麻紀
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