海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

サイモン・ペッグ

連載

第152回

サイモン・ペッグ Photo:AFLO

『ミッション:インポッシブル』シリーズおなじみの存在、最新作ではいつもより活躍!?

── 今回は大ヒット中の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』に出演しているサイモン・ペッグです。私も観ましたが、いつも以上に活躍しているように感じました。

渡辺 同感です。もちろんトム・クルーズが世界を救うため命を懸けるのでありえないくらい大活躍しますが、それに準じるくらいの活躍は見せてくれる。彼も命を懸けますからね。今回はチーム力もテーマのひとつになっていて、原点回帰的な要素もあるので、活躍が増えたのかもしれない。そもそも彼が演じているキャラクター、ベンジー(・ダン)という名前も、日本人的には覚えやすい(笑)。

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

── サイモン・ペッグはイギリスの俳優ですが、このシリーズで一気にポピュラーになったという印象ですね。

渡辺 『ミッション』シリーズに出演したのはJ.J.エイブラムスがメガホンを取った3作目『M:I:III』(06)からですね。このときはIMFの情報局で内勤しているという設定でしたが、映画が終わるときにはちょっとチームの一員的な雰囲気はあった。ベンジーくん、笑わせてくれましたからね。そういうところもトムに気に入られたのか、次からレギュラーキャラクターとなり、出演パートも膨らんでいった感じでした。

サイモンはそれについてこう語っていました。『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)のときです。

「『M:I:III』に出演したときは、また同じキャラクターを演じるなんて思っていなかったんだ。だから、ラボでコンピュータをいじっている男ということしか考えていなかった。ベンジーが進化していったのは幸運な偶然というわけだよ。

『007』シリーズのQも若返ってベン・ウィショーが演じるようになったので、ベンジーをQと比べる人もいるようなんだけど、Qは基本ラボの中だけで実際に敵と戦うことはない。そんな彼と比べるとベンジーはもっと積極的に戦っている」

ちょうど10年前の2015年7月、『…ローグ・ネイション』のオーストリアプレミアでのトムとサイモン。シリーズ8作中6作にベンジーとして出演しているサイモンは、すっかりシリーズの顔
Photo:AFLO

「幸運な偶然」とは言っていますが、やはりトムくんとのコラボレーションは大きいようです。続けてこう言っていました。

「僕のユーモアが役立っているのかもしれない。このシリーズ、緊張したりコーフンしたりするシーンの連続だから、そういうプレッシャーを緩和する役目を果たしているのかもしれないよね。それからトムとのケミストリー。オフセットでのそれがとてもいい感じだったので、カメラの前でもそれを続けてみたという流れだろうか」

“友人”はJ.J.エイブラムス、“親友”は?

── 『M:I:III』の監督J.J.エイブラムスの『スター・トレック』(09)にもレギュラー出演してますよね、サイモンさん。

渡辺 それも『M:I:III』で意気投合したからのようですよ。

「J.J.とは『M:I:III』で一緒に仕事をした経験があったからこそ、『スター・トレック』のキャスティングのとき、僕にスコッティ役をと考えてくれたんだと思う。このシリーズも僕にさまざまなチャンスをくれたんだ」

サイモンはJ.J.のことをこんなふうに言っていました。

「J.J.は知っておいて損な人ではないよ(笑)。影響力があって権力をもっている。もちろんとてもクリエイティブで心根が優しい。ハリウッドでそういう友人をもつのはいいことだ。J.J.には感謝の気持ちでいっぱいだ。今ではとってもいい友人だよ」

知っておいて損ではない権力者、のJ.J.と
Photo:AFLO

じゃあ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)から組んでいるエドガー・ライトはどうなんだと思うじゃないですか? 「親友!」と言ってました。「彼は親友。一緒に仕事をしていて一番しっくりくる相手なんだ」

── 「友人」と「親友」の差は大きいですね(笑)。

渡辺 そうです(笑)。

── エドガー・ライトと仲がいいことも手伝ってなのか、「オタク」な感じしますよね?

渡辺 ですよね。だから「オタク」に関しても聞いてみました。「オタク」という日本語を知っていて、「オタクでかわいいという評判です、日本では」と言うと、「それは嬉しい」と笑っていました。

オタクになったきっかけは最初の『スター・ウォーズ(SW)』(77)だそうです。

「最初の『SW』が公開されたとき、僕は7歳だった。それからずっと『SW』が僕の“趣味”であり“夢中になる対象”になってしまった。それは大人になるまで、今でも続いているということだ」

『SW』に関しては、相棒のニック・フロストと出演した『宇宙人ポール』(11)にもたくさん出てきますし、SFや映画に興味をもつようになったのもそれからだと言っています。

「オタク現象というのは、今ならではの現象だと思っている。僕より一世代前の若者は、早く大人にならなければいけなかった。だから若くしてオタクを卒業する必要があったんだ。今は違う。若者でいられる時間が長くなり、大人でありながら子どもっぽいものに関心を持っても非難されなくなった。いや、本当にいい時代です(笑)」

サイモン・ペッグを語るのに欠かせないふたり、“相棒”ニック・フロスト(左)と、“親友”エドガー・ライト(中央)。写真はもちろん、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』(07)撮影中のひとコマ
Photo:AFLO

── 確かにそうですね。だから麻紀さんもオタクでいられる(笑)。

渡辺 ですね(笑)。

ベネディクト・カンバーバッチにいたずら!?

渡辺 『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)のときにもインタビューしたんですが、そのときはベネディクト・カンバーバッチにいたずらを仕掛けた話をしてくれました。NIF(国立点火施設)という施設で撮影していたときに、サイモンとクリス・パインの発案でやったそうです。そこには中性子がたくさん浮遊していると嘘をついて、身体に付着するのを防ぐためだといって白いクリームを塗らせたり、中性子を振り落とすためのダンスをやらせたりと、かなり大がかりないたずら。

「ベネディクトは最高だった。すごく大変な撮影の日のランチのとき、彼はこう言ったんだ。“いや、今日は大変だよ。覚えなきゃいけない台詞がたくさんある。しかも、大気中の中性子の影響も考えなきゃいけないだろ?"って。僕は笑いをこらえるのに必死だった。本当はネタバレしようと思っていたんだけど、あまりにベネディクトが面白いので、延ばすことにしたんだ」と笑っていました。

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』ではカリスマティックな悪役を演じていたものの、ウラではピュアなカンバーバッチさん(右端)
Photo:AFLO

「ベネディクトは最高だった。すごく大変な撮影の日のランチのとき、彼はこう言ったんだ。“いや、今日は大変だよ。覚えなきゃいけない台詞がたくさんある。しかも、大気中の中性子の影響も考えなきゃいけないだろ?"って。僕は笑いをこらえるのに必死だった。本当はネタバレしようと思っていたんだけど、あまりにベネディクトが面白いので、延ばすことにしたんだ」と笑っていました。

そういういたずらに引っかからなかった共演のアリス・イヴは、「サイモンはいじめっ子!」って呆れてる感じでした。

こういう話を聞くと、確かに現場のムードメーカーなのかもと思いますよね。そういうのでトムくんを和ませてくれたのかもしれない。なにせトムくん、いつも命懸けだから、そういうほっとする時間は絶対に必要でしょ?

── 分かります(笑)。

渡辺 『ミッション』シリーズはこれからも続くのか不透明ですし、『スター・トレック』もそう。でも、こういう人柄だし、“親友”のエドガー・ライトも頑張っているので安泰じゃないですか? サイモンさん。

文:渡辺麻紀

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