海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

ジェームズ・ガン

連載

第155回

ジェ―ムズ・ガン Photo:AFLO

相棒ドッグも大活躍! 幸せな気分になれる『スーパーマン』

── 今回はジェームズ・ガンです。『スーパーマン』が好調ですね。

渡辺 2021年に『ザ・スーサイド・スクワッド"極"悪党、集結』でDCデビューを飾ったのち、2022年にDCスタジオの共同会長兼CEOに就任。アメコミ&DCのオリジンである『スーパーマン』でメガホンを取ったわけです。アメリカでは公開3日間の数字が1億2200万ドルという素晴らしさ。日本でも健闘していますし、評論家たちのウケも大変いい。

── もちろん、麻紀さんはお気に入りなんですよね?

渡辺 そうです。もしかしたら今年のナンバーワンか⁉というくらいに気に入っています(笑)。

スーパーマンって手垢のついたキャラクターだから、ガンはどう料理するんだろうと思っていたら、ある意味、とてもストレートにやっていた。スーパーマンはコミックが好きと言っていただけあって、コミック的な面白さと健全さがある。その健全さが眩しいんですよね、今のご時世だと。

『スーパーマン』

これを観ると、ガンはダークなアメコミ映画は好きじゃないんだなあと思いました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』(17)のとき、こんなことを言っていましたから。「僕が大好きだったのは『レイダース/失われたアーク<聖櫃>』(81)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)や『スター・ウォーズ』(77)。なぜって底抜けなくらいに楽観的な気分にさせてくれるからだよ。いわば徹底的な娯楽主義なんだが、映画は本来、そうあるべきだと観る側に立ったときは思う。

でも今は、そういうのはあまりクールじゃないというふうに思う人が多くなった。アイロニーとかシニカルさを入れる方がいいってね。僕は、そういう娯楽主義を取り戻したいという気持ちが強くて、その結果が『ガーディアンズ』シリーズだと思うんだ」

そういう彼の志向というか思想が『スーパーマン』にも確実に感じられますね。とても幸せな気分になれるから。

── 幸せな気分といえば、スーパーマンの相棒ドッグ、めちゃくちゃかわいいですよね。予告編を観てときめいてしまいました。

渡辺 本当にかわいいんですよ。予告編以上に活躍するし、スーパーマンとの関係性もすてきすぎる。ガンは彼の出演を「飼っている保護犬がパソコンを壊したりして手がかかるんだ。そういうときに、彼がクリプトじゃなくてよかった。クリプトだったら家を破壊してしまうよと思い、だったらクリプトを出演させてみたら面白いんじゃないかというアイデアが生まれた」と言っていました。ガンの保護犬と同じ犬種だそうです。コミック版はもっといかめしい犬ですよね。

『スーパーマン』

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』のインタビューでは、かわいいネコのTシャツを着ていたんです。その理由を「家を留守にしている間、ネコが病気になって入院して、やっと退院できたので、そのお祝いでこのネコTシャツを着ているんだ。名前はエミリー。ストリートキャットだったけど、うちに迷い込んできた。そのときの様子が"エミリー"って感じでさ。言っておくけど、彼女はペットじゃない。僕の同居人。ルームメイトだよ」。

このとき、イヌの話もしていました。

「グルードのモデルになっているのはイヌ。イヌは2匹飼っていて、無垢な愛情やあの目元は僕のイヌが反映されている」って。「僕はイヌを愛している。映画より大好きだ」と言っていましたね。

その2匹のイヌの名前はドクター・ウェスリー・バンスピアースとローラと言ってましたから、今回のクリプトのモデルではないようです。今回のモデルのワンちゃんの名前は小津安二郎から取ったオヅだそうです。いや、本当にクリプトはかわいいです。クリプトTシャツとかないのかしらって。

『スーパーマン』

かわいいといえばスーパーマンもかわいいです。これまでいろんな役者が演じてきたけど、私は今回のスーパーマンが一番好きかもと思いました。デヴィッド・コレンスウェット、声がとてもいい!

クリプトのことをいつも考えていて、彼を助けに行かなきゃって。そういうところ、とてもガンらしいですよ。

本作のプレミアイベントにて。左から、プロデューサーのピーター・サフラン、レックス・ルーサー役のニコラス・ホルト、ロイス・レイン役のレイチェル・ブロズナハン、スーパーマン役のデヴィッド・コレンスウィット、そしてジェ―ムズ・ガン

あのイカツイ俳優が、なぜか家に押しかけてくる

── 前回、ガンのことを書いていただいたときは、マイケル・ルーカーとの仲良しっぷりが印象的でしたが『スーパーマン』に出ているんですか?

渡辺 いつものメンバーであるネイサン・フィリオンはグリーンランタン/ガイ・ガードナー役で見せ場たっぷりなんですが、いないんですよ、マイケル。なので調べてみたら、スーパーマンのロボット#1役で出演しているようです。おそらくモーションキャプチャーで演技をして、声を当てたのではないかと。なにせふたりはラブラブで、一緒にパリ旅行に行っているし、こんなふうに言っていました。

「なぜかマイケルはいつも僕の家に押しかけてくる。そしてうちのソファでグタグタしている。週に2回くらいかなあ。僕の家は高台にあるんだけど、その家の表玄関のゲートの暗証番号をなぜかマイケルは知っていて、僕が昼寝していてもお構いなしにドアをどんどん叩き、入れろと騒ぐんだよ」と嬉しそうに喋っていました。ルーカーのルックス、ちょっといかめしいですけど、インタビューのときはとても素敵です。ちょっとおしゃれさんだと思いました。ガンは「趣味はまるで違うんだけどね」と言ってましたが、ふたりが仲良しなのは伝わってきます。ちなみにガンも意外とおしゃれな感じですよね。

2017年『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』のワールドプレミアで、マブダチっぷりを見せるガンとルーカー
Photo:AFLO

── ガンは古い映画のファンですが、本作でもそういう感じなんでしょうか?

渡辺 そうです。スクリーンサイズもビスタだったし、どこかノスタルジックな感じがしました。ガンの映画はいつもそうです。「自分が生まれていない時代に憧れる」と言っていましたから。

ちなみに60年代で一番好きな映画は「『ウェスタン』! もう大好き。レオーネは僕のメンターのひとり」だそうです。『ウェスタン』はセルジオ・レオーネの1968年の西部劇で、完全版が『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』という原題ままで日本でも後に公開されましたよね。

── DCのCEOになって、とても出世したというか偉くなった感じがしますが、実際はどうなんでしょ、ガン氏。

渡辺 そうですよね。『スーパーマン』のインタビューのときは、いつもと変わらない感じでしたが、実際のところはよく分からない。ただ、相変わらずマイケル・ルーカーたちとお付き合いしているわけだし、偉そうにはなってないと思います。最初の『ガーディアンズ…』のとき、こういうふうに言っていました。

「自分のことははみ出し者だと思っているし、それこそが自分の生きる道だとも思っている。フィルムメーカーとしての哲学が映画の成功によって変わることは、絶対にない。僕はキャラクターに命を吹き込み、ストーリーを紡ぎ出すプロセスが大好き。それはこれからも続けていく。ちょっと変わったなと感じたのは、ミーティングに参加すると、みんながちやほやするようになったことくらいかな(笑)」

もちろん、このとき以上に大きい存在になったわけですが、基本、変わる人ではないと信じています!

文:渡辺麻紀

『スーパーマン』
公開中

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