海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

ジョン・シナ

連載

第156回

ジョン・シナ Photo:AFLO

Prime Videoのオリジナルドラマで戦う合衆国大統領に!

── 今回はジョン・シナです。プロレス界から映画界に移り、新しいキャリアをスタートした人。ドウェイン・ジョンソンと同じようなプロセスを踏んでいます。彼が主演したPrime Videoの『ヘッド・オブ・ステイト』が現在、配信されています。

渡辺 これ、意外と面白かった。いがみ合っている米国の大統領とイギリスの首相がエアフォースワンに同乗してNATO首脳会議に向ったところ、機内に潜入していたテロリストによって同機は墜落。ふたりだけがパラシュートを装着して助かる。降りたところはベラルーシ。それからはふたりのサバイバルが描かれます。

シナはアクションスター出身の米国大統領、イギリス首相にはイドリス・エルバが扮しています。よかったのは、彼らを助けようとする人たち。最初の飛行機で、2個残ったパラシュートをふたりに手渡し「あなたたちの任務は生存すること。私にはまだ任務が残っています。ご一緒できて光栄でした!」と言ってふたりを見送るシークレットサービスのおっさんがめちゃくちゃかっこいい。その後にも命がけで彼らを助けようとする人たちが登場して、ワタナベ的にはツボでしたね。

ジョン・シナとイドリス・エルバ。やたらとガタイのいい米英大統領ズ

── あの、ジョン・シナは?

渡辺 よかったですよ。アクション映画では銃の扱い方もプロフェッショナルなんだけど、実戦経験はないので頼りないという、この手の設定のお約束でちゃんと笑わせてくれる。最初はあらゆることで反発し合っていたふたりが、いつしか手を取り合うというのもお約束。なので気持ちよく楽しめます。

そういう中でNATOの会議なわけだから、現大統領への皮肉も忘れていない。肉体酷使してふたりを助けようとするMI6の諜報員も女性ですし。お約束も押さえ、今のトレンドも押さえた作品になっています。考えてみたらこのふたり、ジェームズ・ガンの『ザ・スーサイド・スクワッド"極"悪党、集結』(21)でも共演してましたね。

アクションスターなので銃はあつかえるものの、実戦経験はないので頼りない

── 彼とは、そのガンの作品で?

渡辺 いや、最初は『バンブルビー』(18)ですね。その後『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』(21)、そして『スーサイド・スクワッド』になるのかな。同じプロレス出身のドウェイン・ジョンソンもそうなんですが、とても礼儀正しい人という印象です。リングで荒っぽいことをやり、スクリーンでも荒っぽい役が多いだけに、落差を感じるのかもしれませんが。もうひとつは気遣いの人。ここもロック様と同じ。インタビューでもちゃんと周囲の人に気遣って答えている感じがしました。私の勝手な解釈なんですが。

『バンブルビー』の取材は香港で行われたせいもあって、彼が喋れる中国語の質問がたくさん出ていました。

── それはびっくり! ジョン・シナ、中国語喋れるんですね。

渡辺 中国語の勉強を始めたきっかけについては、こう語っていました。

「WWEのイベントで中国に行ったとき、中国語の必要性を強く感じたんだ。というのも中国ではWWEがホンモノのスポーツなのか、それともエンタテインメントなのか、ほとんどの人が理解してなくて、スポーツを通したエンタテインメントなんだということを伝えるのが困難だった。それで、もしWWEのスターのひとりが中国語を話せたら、伝わりやすいんじゃないかと思い、みんなに提案したんだよ。じゃあ、誰が中国語の勉強をする?ということになり、言い出しっぺの私がやることになったわけさ。言語を学ぶようになってからは中国の文化にも魅了され、映画市場やエンタメ市場にも興味をもつようになったんだ」

そういうところも、実は真面目なジョン・シナさんなんですよ。

肉体派ながら、中国語を話せるという頭脳派な一面も

── 意外性があって素敵ですね。

渡辺 やっぱり真面目というか真摯な感じなんですよね。作品選びなどについても、それを感じられます。

「以前はアクション映画のオファーが多くて、数本出演したんだが、いいビジネスモデルではなかったと思う。当時の私はエンタメビジネスにさほど興味がなかったにもかかわらず、そこに居座っているという感じだった。だからあるとき、真面目に考えたんだ。“オレはなぜ、ここに居座り続けているのか?”ってね。答えは“物語を伝える力に魅了されている”というものだった。それ以来だよ、いいストーリーに引き寄せられるようになったのは。アクション映画じゃない場合は小さな役が多いけど、脚本が素晴らしかったからぜひとも参加させてほしいという感じになったんだ」

極端すぎるヒーロー、ピースメイカーはスピンオフドラマに

渡辺 ちなみに、今回の作品もアクションもありますが、エルバとの掛け合いの方が大きな魅力になっていますし、『スーサイド・スクワッド』のときもストーリーに魅了されたと言ってました。

「私はコミックに関しては何も知らない。でも、ジェームズ(・ガン)の脚本にはコーフンしたし感動もした。“よし、この映画ならエキストラであってもぜひとも参加したい”と思ったんだから、ちゃんと役をもらえて感謝しかない。私は本当にハッピーだ」

シナが演じたのは、平和のためなら殺しも平気な極端すぎる平和主義者のピースメイカーで、ガンはこのキャラクターを気に入りスピンオフのドラマシリーズ『ピースメイカー』を製作したくらい。この8月22日からはシーズン2が日本でも配信されています。ガンの最新作『スーパーマン』にもピースメイカーはカメオ出演していたので、本当に愛されているんだなあって。

『ピースメイカー シーズン2』
U-NEXTにて独占配信中
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── ガンとの絆、強いみたいですね。

渡辺 調べてみたら、シナのこれからの作品にルーニー・テューンズの実写とアニメの合成らしい『Coyote Vs. Acme』というのがあって、何とこの脚本とプロデュースにガンが名前を連ねているんです。マジでラブラブな感じですよね。マイケル・ルーカーのこと忘れないで!と言っておきたいですけど。

── 確かに!(笑)

渡辺 『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』のときは当然ですが、車について聞いてみたら、これも素敵な答えを返してくれました。

「実は、いまだに初めて自分のお金で買った車を所有しているんだよ。1989年型のジープラングラーという車で、ロスで乗り始めたときはWWEの仕事をしていて、その後、(ケンタッキー州の)ルイビルに引っ越したときも持っていて、今は引退してフロリダに置いている。愛車は何?と尋ねらればこの車を挙げるしかない。本当に大切にしているから」

『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』のクールなキャラクターポスター。本作では敵役だったが、次作『…ファイヤー・ブースト』(23)では気のイイ叔父さんに
Photo:AFLO

このとき、好きなカーアクション映画のことを聞いたんですが、こんな作品を挙げていました。

「『60セカンズ』(00)もなかなかよかったし『ミニミニ大作戦』(03)もいい。もちろん『ブリット』(68)は最高だし『トランザム7000』(77)も好きだ。でも、私の頭に真っ先に浮かぶのは最初の『ワイルド・スピード』(01)で、ドム(ヴィン・ディーゼル)が運転していたダッチチャージャーなんだよ」

── おお、やっぱり気配りの人ですね(笑)。

渡辺 でっかい身体で気配りの人って、今風にいうとギャップ萌えなのかもしれませんね。頑張ってほしいと思います!

文:渡辺麻紀

『ヘッド・オブ・ステイト』
Prime Video で独占配信中
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