海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
ジェラルド・バトラー
連載
第157回

ジェラルド・バトラー Photo:AFLO
『ヒックとドラゴン』実写版でアニメ版と同じバイキングパパに!
── 今回はジェラルド・バトラーです。彼が出演した『ヒックとドラゴン』が日本でも公開中です。これ、同名アニメーションの実写版なんですよね。
渡辺 2010年に公開されたドリームワークスのアニメーションです。その監督のひとり、ディーン・デュボアが本作でもメガホンを取っています。ちなみにもうひとりの監督は『野生の島のロズ』(24)のクリス・サンダースでした。
── 最近はそういう作品が増えてますよね。先日も、『リロ&スティッチ』が公開されました。
渡辺 アニメ版の『リロ・アンド・スティッチ』のコンビ監督がサンダースとデュボアでしたが、実写版の方は違う監督でしたね。この2本を比べると、私は『ヒックとドラゴン』の方がダンゼン好きでした。ストーリーはアニメと同じなんですが、嫌な違和感がまるでなかった。
『リロ&スティッチ』もほぼまんまで、同じようにスティッチが大暴れして家を壊したりするんですが、それを実写で見ると「やりすぎ」という感覚になる。アニメ版のリロに沿った子役もね……。
── 『ヒックとドラゴン』のヒックはアニメ版よりハンサムじゃないですか?
渡辺 はい! こちらのヒックくんはアニメ版とは異なり、ちゃんと主役を張ってもいいくらいのルックスのメイソン・テムズ。『ブラック・フォン』(21)の少年が成長したわけですが、Kポップのアイドルに似ているという評判でした(笑)。ドラゴンのトゥースはアニメどおりニャンコのようで、大変キュート! ふたりがちゃんとすてきなカップルになっているのが嬉しいですね。アメリカでも大ヒットして、すでに続編も決定しています。

── バトラーはどんな役を?
渡辺 ヒックのパパ役でバイキングの長です。彼はアニメ版でもパパの声を担当し、その流れがあっての起用だったようです。アニメと同じように顔はヒゲだらけ、身体はパンパンなので言われないと分からないくらいですが、キャスティングとしては大正解だと思いました。

カフェで服を脱いで、あの監督にナイスボディを披露!
渡辺 彼が注目されたのは『オペラ座の怪人』(04)のファントム役でした。日本でもこれで人気者になったように記憶していますが、彼がアクションスターとして開花したのはザック・スナイダーの『300<スリーハンドレッド>』(06)だと思います。バトラーは主人公のレオニダス王を演じていて全編、ぼぼ半裸で筋肉隆々の立派なボディを見せまくっていたという感じ(笑)。バトラーがアクション?という違和感はなかったので、こちらもいいキャスティングだったんだと思います。このとき、英国の役者と体について面白いことを言っていました。
「カフェでザックに会ったんだが、彼は“英国俳優はいい身体をしていないことで有名だ」って言ったから、そんなことはないと思わずそこでシャツを脱いで身体を見せたんだよ」って笑っていました。彼はスコットランド人ですからね。
「でも、ザックの言葉は間違ってはいない。実際オレも、戦士のような声はしているが、戦士のような身体とはほど遠い役者が戦士を演じるのを何度も見てきたから。重くていかめしい鎧を身につけているにもかかわらず、そこから出ている腕や脚は弱々しい。そんなので闘えるのか?と突っ込みたくなるような身体だよ。そういう身体でも戦士を演じられるのは、彼らが大切にしているのは見てくれではなく魂であり演技力だから。魂と演技力があればひ弱なヤツでも最強の戦士になれるという自信があるんだ。それは正しいんだけど、通用するのは舞台のときだけじゃないかな。映画ではやはり、見てくれが重要になるんだよ」
ちなみにこのときは、6カ月くらい、毎日6時間もトレーニングをしていたそうですから、当然立派な身体になりますよね。
── 確かに英国人で素晴らしいボディという役者はあまりいないかもしれませんね。
渡辺 それこそバトラーくらい? 彼の場合はアクション映画の印象が強いからでしょうね。英国の役者が人気の理由については、次に会った『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)のとき、こう語っていました。
「シアター出身者が多くて、彼らのほとんどは演技の基礎をそこで学ぶ。それは俳優にカリスマ性を与える結果にもなる。オレと同じスコットランド出身の役者にユアン(・マクレガー)がいるが、どうも同じ英国でもスコットランドとなると少々ワイルドな感じになるようにも思う。オレもそうだが、演技にそういう部分を残しているからで、それが独特の魅力になっていると思いたいな(笑)」
こんなことを言っているので、ワイルドなアクション映画をやっているのかもしれません。バトラーって、名門大学を出て弁護士になり、それをやめて演技の道に入ったという変わり種。知的な人でもあるので、もっとそういう役を見たいとも思うんですが、もうアクション俳優のイメージで落ち着いちゃった感じですよね。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』(16)の原題は『Olympus Has Fallen』で、「オリンポス」とはホワイトハウスの呼び名。バトラーは大統領を守るシークレットサービス、マイク・バイングを演じていましたが、この作品はスマッシュヒットとなってシリーズ化され、次はロンドンが舞台の『エンド・オブ・キングダム』(16)、またアメリカに戻った『エンド・オブ・ステイツ』(19)が公開されていて、もう1本『Night Has Fallen』が控えています。バトラーが演じるのはすべてマイク・バイングで、彼が行くところ常に非常事態になるという感じでしょうか。
ちなみに、好きなアクションスターを尋ねたところ「ブルース・ウィリス」という答えでした。
「彼はクレバーでバッドボーイなところがいい。キラリとした瞳、そして片方の口端を上げて見せるほほえみ、大好きだよ。彼とはアカデミー賞の授賞式で一緒になったことがある。オレがとてもお喋りな女性に捕まって困り果てていたとき、ブルースがオレを掴んで“君に聞きたいことがある”と言ってオレを連れていった。ブルースは「いや、君があの女性にウンザリしているようだったのでレスキューしたんだ」って。思わずオレは“君は何てヤツだ! アイラブユー」と反応してしまったよ。そういうこともやってしまうブルースはやっぱりかっこいいと思うね」
── 確かにそんな感じでしたね、ブルース。もう引退しちゃいましたが。
渡辺 バトラーは今年で56歳。今時ならまだアクションができる年齢ですよね。だからなのか、これからの作品もアクションが多いみたいで、その中には『ザ・アウトロー』(18)の3作目もあれば、今回の『ヒックとドラゴン』の続編もある。ちなみにまだ独身のようですよ!
文:渡辺麻紀
『ヒックとドラゴン』
上映中
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