海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
ベネディクト・カンバーバッチ
連載
第161回
ベネディクト・カンバーバッチ Photo:AFLO
『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』で壮絶な夫婦ゲンカ!
── 今回はベネディクト・カンバーバッチです。『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』が公開されました。これはリメイクなんですよね?
渡辺 1989年にヒットした映画『ローズ家の戦争』のリメイクです。オリジナルは監督が俳優のダニー・デビート、マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーがその夫婦を演じていましたが、今回はカンバーバッチとオリヴィア・コールマンというイギリスの演技派コンビ。設定もイギリスからアメリカにやってきた夫婦なので、ふたりの会話の応酬にもイギリスらしいブラックな皮肉がたくさんあり、それが本作の特徴のひとつになっています。
── オリジナルを踏襲しているんですか?
渡辺 オリジナルをあまり覚えてないんですが、ダグラスは弁護士、カンバッチくんは建築家、ターナーは何かのビジネス、コールマンは人気シェフという具合に職業を変更しています。ダグラスとターナーの夫婦は違和感なかったと思いますが、私はカンバッチくんとコールマンのペアは最後までずっと違和感が強かった。コールマンがおねえさんみたいな感じで、夫婦らしくキスとかしているとなんか違うなって。実際はこのふたり、コールマンが2歳年上なだけにもかかわらず10歳くらい違うように見えてしまって……。みなさんはどうなんでしょうか。
カンバッチくん、先日公開されたウェス・アンダーソンの『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』にも出演していて、私はこっちの彼の方が好きでした。とはいえ、カンバッチくん久々の主演作なので嬉しいことに違いはないですけどね!
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── 確かに最近はあまりないですよね。
渡辺 そうなんですよ。だから2本も続けて公開というのはファンとしては幸せなので、贅沢を言っちゃいけません! あの声を聴けただけでときめきましたから。
── 前に一度、このエッセイで書いていただいたときは、とってもお喋りだと言っていました。
渡辺 そうなんです。めちゃくちゃお喋り! まさに立て板に水のごとく喋る。日本では通訳さん泣かせで、担当した方はすっごく大変だと聞いています。タレントが英語で喋り、それを通訳さんが訳してといういつもの日本スタイルをカンバッチくんが嫌がり、基本は同時通訳。滔々と喋るカンバッチくんを追いかけるのが大変! という感じになる。
たとえばミュージカルについて喋っているときは、「『フランケンシュタイン』の舞台でイブニングスタンダードの賞をもらったとき、キャメロン・マッキントッシュから“ミュージカルに興味があるんじゃないか?”と言われたんだけど断ったんだ。ミュージカル……そのとき人気だった『サンセット大通り』のミュージカル版は急いで観に行くような作品じゃないと思ったよ……いや、ごめん。僕が好きだった小さな作品がその大ヒットのおかげでちょっと脇に追いやられてショックだったもんだから、ついそんな言い方をしてしまった。ダメだよね、そんなの(笑)」というふうで、計算して喋っている感じではないんです。だから、本心や本音を口にしているんじゃないかなって。そういう人は珍しいと思います。
── イギリス人だからかもしれないですね。
渡辺 ハリウッドだとマスコミ対応の訓練をすると聞いていますが、イギリス人はそんなことしそうにないから。当時、料理についてのインタビューもしていたので得意料理について聞いたんですが、教えてくれたのがお母さん直伝だという“タスカニー風チキン”。「自宅でホームパーティを開くときによく作るんだ。大切な友だちは手料理でもてなしたいからキャセロール・クッキングが一番。この料理のポイントはレモンとタイムをたっぷり入れること!」と言って簡単なレシピを教えてくれたので、私も自宅で作ってみたんですが、これがめちゃくちゃ美味しかった! 以来、友だちが来るとき、私も作るようになりましたね。
ちなみに、この料理の話は『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)のときの取材なんですが、記者会見では身体を作るためにチキンをたくさん食べた話をしていて「僕のせいで鶏が被害にあったように思われると困るから、どれだけチキンを食べたかは話したくない」と言ったことを思い出したのか、「あ、やっぱり僕はチキンが好きみたいだ(笑)。母が焼いてくれたローストチキンも大好きだったから」と言っていました。
『ドクター・ストレンジ』(16)で取材したとき、また料理の話を聞いたら「前のは作ってくれPhoto:AFLOた?」というので「とっても美味しかった!」と言ったらとても喜んでくれました。このとき教えてくれたのはパスタだったんですが、それは作ってない(笑)。
キャッチボールが楽しい男、カンバーバッチ
渡辺 そうそう、このときはすでに結婚していて子どもも生まれていたので、「最近の得意料理はおかゆ! 朝5時に起きて、お腹を空かせた息子におかゆを作ってあげるんだ」って。さらに「今の僕が、自分を天才だと感じるのは、息子に対してだね。彼にとっては世界一のパパだから」とデレデレでした。
Photo:AFLO
── 天才役、多いですもんね、カンバーバッチ。
渡辺 そうなんですよ。「天才役、多いですよね」と言うと、「いい加減、違うキャラクターを演じろよって言いたいの?」と切り返す。こういうキャッチボールが楽しいんです。「インタビューがめちゃくちゃ楽しい」と言うと「ホントに? 今までインタビューした人たちの中で上の方?」と聞き返す。なので「ナンバーワンです!」と言うと「いや、本当に嬉しいよ。トム(・ヒドルストン)とか、今回のティルダ(・スウィントン)たちとペアでインタビューを受ける度に“この人たちに比べて、僕はなんて話がヘタなんだろう”って落ち込んでしまうんだけど、そんなことない?」って。だから「いやいや、あなたは文句ナシです!」と言うと「優しいなあ。素直に嬉しいよ」と笑うんです。だから、他の役者と違って距離が近くなる感じがしましたね。
── そういう役者さん、あまりいないんですね?
渡辺 私の知る限りではほとんどいない……あ、ひとりいました。ケイト・ウィンスレットがそんな感じでした。彼女もイギリス人だ(笑)。ちなみに、カンバッチくんが名前を出したトム・ヒドルストンは、彼とは正反対の感じでした、はい。
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── な、なるほど!(笑)
渡辺 もうひとつ、思い出したんですが、料理の話のとき、おススメのレストランも聞いたんですよ。「Carluccio’s(カルルッチョズ)」が大好きで、ズッキーニとフリッジ・パスタをパルメザンチーズたっぷりで食べるのが僕流なんだ」と言っていたので、ロンドンを訪れたときに行ってみたんです。驚いたのはとても庶民的なチェーン店だったところ。お値段もリーズナブルで、お味もまずまず。お店の名前になっているカルルッチョというイタリア人のシェフはイギリスでは有名なようですが、お値段はとても財布に優しい。そういうところを挙げるなんて素敵だなと思いました。背伸びしてない感じでしょ?
── 確かに!
渡辺 これからの作品を調べたら、ガイ・リッチー監督の『Wife and Dog』という映画がありました。タイトルからついコメディを連想しそうですが、スリラーのようです。他にいくつか待機作もありますから、ファンとしては楽しみに待つ!という感じですね。
文:渡辺麻紀
『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』
上映中
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