海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

マギー・ギレンホール

連載

第171回

マギー・ギレンホール Photo:AFLO

『ザ・ブライド!』で監督としての才腕にあらためて高評価!

── 今回はマギー・ギレンホールです。彼女が監督した『ザ・ブライド!』が日本でも公開されています。この人、女優さんですよね? ジェイク・ギレンホールのおねえさん。

姉マギー・ギレンホールと、弟ジェイク・ギレンホール
Photo:AFLO

渡辺 『ロスト・ドーター』(21)で監督デビューを飾り、とても注目されました。アカデミー賞では彼女自身、脚色賞にノミネートされたし、主演のオリヴィア・コールマン、彼女の若い時代を演じたジェシー・バックリーがそれぞれ主演&助演女優賞にノミネートされましたね。本作にもバックリーが出演していて、彼女がタイトルの“ザ・ブライド”を演じています。

『ロスト・ドーター』予告編

── バックリーは先日のアカデミー賞で主演女優賞を獲得しましたね。

渡辺 二度目のノミネートで見事、獲得したわけです。その作品、『ハムネット』の彼女、まさにオスカー!という演技なのである意味、順当だと思いますが。

『ハムネット』のジェシー・バックリー
(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

── で、これはどういう映画なんですか? 

渡辺 すみません! それがまだ観られてないんですよ。だから資料によるとになるんですが、彼女が“フランケンシュタインの花嫁”を演じていて、夫がクリスチャン・ベール。不死身のモンスターであるベールが、死んでしまったバックリーを蘇らせて伴侶にし、ふたりで逃避行するという物語のようです。

『ザ・ブライド!』予告編

ジェームズ・ホエールが1931年に『フランケンシュタイン』を撮り、それが大ヒットしたので続編として『フランケンシュタインの花嫁』(35)を撮りました。このときのブライド役はエルザ・ランチェスターというイギリスの名女優でしたね。映画は『…花嫁』の方が面白かったんですが、それをモチーフにした本作の舞台は1930年代のアメリカになっていて、予告編の印象は『俺たちに明日はない』という感じでした。予告編では花嫁が旦那のフランケンシュタインに「フランケンシュタインの花嫁」と言われて「違う、私は誰のものでもない」って言ってましたね。『ロスト・ドーター』もフェミニズム色が強かったので、おそらく今回もそうなんだと思います。

『ザ・ブライド!』

父は映画監督、母は脚本家、弟と夫は俳優という映画一家

── ギレンホールに取材したのは?

渡辺 『ダークナイト』(08)のときでした。別に好きな女優さんではなかったんですが、実物は驚くほど魅力的でした。今まで会った女優さんの中でスクリーンと実物、もっともギャップの激しかった人です。そのとき、コム・デ・ギャルソンのセーターをすてきに着こなしていて、とてもおしゃれな感じ。表情も豊かで、映画ではバットマン/ブルース・ウェイン、トゥーフェイス/バービー・デントというふたりの男性に愛される役でしたが、それも納得でした。美人というわけではないんですけどね。

映画でもパンツスーツ等をおしゃれに着こなしていたので、ファッションのことを訊ねると「おしゃれ、大好き!」と言っていました。

「着心地のいい服を着るのが基本だけど、ドレスアップするのも大好き。ドリス・ヴァン・ノッテンやステラ・マッカートニーの大ファンなの」

で、今日の服は?と聞いたら「ギャルソン!」という答えだったわけです。ちなみに、『ダークナイト』のような大作と、インディペンデント映画の違いもこう言っていました。

「その質問、何度も受けるのよ。私がインディペンデントの映画に何本も出演しているから。クリス(・ノーラン)は役者が好きで、その演技を見るのも大好き。彼の演出はとても演技にフォーカスしたものだから、インディペンデントとの差は感じないわね。でも、衣装は違う。なぜって今回の衣装、すべて私のために作られたオリジナルなのよ。そういうことになると、“ああ、私は今、大作に出ているんだ”って思っちゃうわよね(笑)」

2008年、TV番組で『ダークナイト』について答えるマギー・ギレンホール
Photo:AFLO

── かわいいですね。調べてみると彼女、1作目のときケイティ・ホルムズが演じたブルース・ウェインの幼馴染、レイチェル・ドーズ役で、ホルムズが降板して彼女になったみたいですね。

渡辺 ホルムズ、確かトム・クルーズとの恋愛騒動があってイメージダウンし降板することになったんだと思います。で、マギーの名前が浮上した。その経緯についてはこう語っていました。

「まずキャスティングが素晴らしかった。凄い人ばかりだったから、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったわ。もちろん、クリスも大好きだったから。彼と初めて会ったとき“レイチェルのキャラクターはまだ出来上がっていないんだ”と言っていて、脚本を読ませてもらったらいろんなアイデアが次々と浮かんできた。もしレイチェルが頭のいい、物事をよく考えることができる女性で、向こう気が強く、元気いっぱいで、心ある女性で、ゴッサムシティをいい街にすべく、他の男性たちと同じように心を砕いている女性であればぜひやりたいと言ったのよ。するとクリスが全面的に賛成してくれて、“だったら、絶対にやりたい!”ということになったの」

このレイチェル像への提案に、後に監督になってフェミニズムパワーを爆発させる彼女の思想というか主旨を見てとれると思いました。

── 昔からそういう意識、高かったようですね。

渡辺 彼女の父親は『パリス・トラウト』(90)などの映画監督スティーヴン・ギレンホールで、母親は脚本家のナオミ・フォナー。私は彼女の原作&脚本の『旅立ちの時』(88)が大好きでしたね。シドニー・ルメットが監督で、主演はリバー・フェニックス。両親のせいで特異な環境で育った少年の成長と青春を描いていて、めちゃくちゃよかった。お母さんについてはこう発言していました。

「母はいつも“あなたは何だってできるんだから”といって励ましてくれた。素晴らしい本をたくさん与えてくれたし、世界について多くのことを教えてくれた」って。すてきですよね。で、その後こうも続けていました。

「でも、家のこと、家事については一切教えてくれなかった。だから、結婚して子どもも生まれた今、学ぶのにとても時間がかかっている」と笑っていました。あ、料理に関しては「料理は大丈夫。分からないのは家の切り盛りなのよ。本当にダメ(笑)」。

両親は離婚したようなので、もしかしたらお母さんの方と暮らしていたのかもしれませんね。

2026年、母ナオミ・フォナーとリラックスした様子でNYを散歩するマギー
Photo:AFLO

── 意識が高そうなので、政治にも一家言ある人なんですか?

渡辺 このインタビューをしたときはちょうど、オバマが大統領選に出ていたときなので「オバマを支持する」と言っていました。ほら、『ダークナイト』には狂気のジョーカーが登場して、そういう輩が世界を混乱に陥れる映画でもあるじゃないですか。そういう狂気とどうやって向き合えばいいのかという質問には、興味深い答えを返していました。

「ベストの方法は、パワフルで誇り高いリーダーをもつことだと思う。社会を導いているのが不名誉な人たちだったら、悪いことがたくさん起きるんじゃないかしら。コミュニティの人たちは混乱して、トラブルが続出する。残念なことに、その危険がなくなることはない。なぜって必ず、そういうクレイジーな人が出てくるものだから。リーダーを選ぶときは慎重にしなければ。そういう人を選んでしまうと、もっともっと社会が酷くなってしまうわ」

何だか今のアメリカを予見したような言葉ですよね(笑)。

── 確かに!(笑)

渡辺 ちなみに、言うまでもなく、彼女の実の弟はジェイク・ギレンホールです……というか、“ギレンホール”と日本では発音されてますが、実は“ジレンホール”の方がより英語に近いようです。ジェイクも、彼女の夫であるピーター・サースガードも、『ザ・ブライド!』に出演しています。一家総出でマギーを応援しているんでしょうね。いい関係だと思います!

文:渡辺麻紀

『ザ・ブライド!』
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