海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

アン・ハサウェイ

連載

第172回

アン・ハサウェイ Photo:AFLO

おなじみの面々が再集結した20年ぶりの続編が大ヒット!

── 今回はアン・ハサウェイです。『プラダを着た悪魔2』が公開中です。先日、アンとメリル・ストリープが来日していましたね。これは2006年の前作『プラダを着た悪魔』の続編で、アンのみならずメリルやエミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチも続投という布陣。監督も前作と同じデヴィッド・フランケルです。

『プラダを着た悪魔2』本予告編

渡辺 20年前の映画にもかかわらず、これだけオリジナルのメンバーが揃うのは凄いと思います。2006年版の大ヒットでアンもエミリーもブレイクしたんですよね。ダサい女子だったアン扮するアンドレアが高級ファッション誌『ランウェイ』の編集部に入り、次々と無理難題を突き付ける編集長、メリル扮するミランダにもまれながら成長する物語でした。仕事に対する思想が同じだったふたりが共鳴し合うというテーマがとてもよかったので私も好きでした。とはいえ、もう価値観が違うので、今の若い世代の人にはミランダはパワハラ上司以外の何ものでもないと思いますよ。『ハリー・ポッター』のまだ出版されてないエピソードをゲットせよとか、仕事に関係ないことまで命じるから。

『プラダを着た悪魔2』

まだ『2』は観られてないのでどんな映画かは分からないのですが、あらすじや予告編の情報からはファッション誌の編集というより、もっとファッションそのものにフォーカスしたような印象を受けました。メリルの役は『ヴァニティフェア』の編集長として名高いアナ・ウィンターがモデルということで、公開時は話題になりましたよね。

── ということは20年間、ずーっとその地位にいたということ?

渡辺 なのかもしれません。アン扮するアンドレアはその編集部を辞めて報道記者として活躍していたが、ヤバい状況に陥ったミランダとその右腕でもあるトゥッチ扮するナイジェルを救うため編集部に戻る。そして、そこでエミリー(・ブラント)扮するエミリーにも再会する……みたいなストーリーのようです。

もうひとつ、価値観の違いでいうと、1作目公開時はファッション誌がブイブイいわせていた時代だったので『ランウェイ』の編集長が偉そうなのも分かりましたが、今はそういうパワフルなファッション誌ってあるんですかね? 当時の『ヴァニティフェア』は雑誌の半分以上がハイブランドの広告で生活感ゼロ。みんな憧れていたんようですが、今はどうなんでしょう? そういう状況、価値観の違いがあるので雑誌編集というよりファッションの方に振っているのかもしれない。

『プラダを着た悪魔』予告編

── アン・ハサウェイは『レ・ミゼラブル』(12)でアカデミー賞助演女優賞を獲得していますが、このとき話題になったのはそれではなく“アンヘイター”という言葉。こういう言葉が生まれるほど、彼女は嫌われていたということが話題になったことをよく覚えています。

渡辺 『レ・ミゼラブル』で来日したときインタビューしましたが、あまりいい感じではなかったですね、はい。だから、そういう言葉を聞いたときは「やっぱりねー」と思ったんですが、この『レミゼ』では彼女以上に手を焼かせる人がいたので、彼女のわがままなんて大したことない、だったそうですが(笑)。

── 誰ですか、その問題タレント。

渡辺 言えません(笑)。そんな先入観みたいなのがあるせいか、テーブルインタビューのときの対応もそういう目で見ちゃっていたんです。たとえばティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』(10)のとき。グループインタビューのテーブルにつくと同時にニッコリ笑って「またお会いできて嬉しいわ」と言ったり、テーブルインタビューにもかかわらず写真を撮るジャーナリストがいて、彼に対して「申し訳ないんだけど、写真を撮らないでほしいの。インタビューに集中したいから」って、すっごくすまなそうに言うんですが、おそらく後でスタッフに当たり散らしているだろうなあとか……。

── そんな目で見ちゃダメじゃないですか!(笑)

渡辺 (笑)。すみません! 

『プラダを着た悪魔2』での来日ではとってもいい人だったと聞きましたから、反省して成長したのかもしれない……というか、彼女のキャリアを見ると『レミゼ』以降は下降線という感じじゃないですか。もちろん『ダークナイト ライジング』(12)とか『インターステラー』(14)など、クリストファー・ノーラン映画には出てますが、その他の作品が元気なさすぎ。だから、よく言われる「オスカーの呪い」という言葉。オスカー俳優になるとキャリアは下降線になるというのも体現しているイメージでしたよね。そういう意味では本作は起死回生を狙っての出演だったりして。あとのふたり、メリルとエミリーは順風満帆で、そういう必要ないですから。

2026年4月初旬、プロモーションで来日したアン・ハサウェイとメリル・ストリープ

“運というのは、準備と機会の出会いで生まれる”

── でも、やっぱり演技は上手いんですよね?

渡辺 でしょうね。演技についてはこんなことを言っていました。

「私は、自分が演じるすべての役に対して、お決まりじゃないアプローチをしようといつもトライしているの。“期待される演技”というよりむしろ、どうやったらそのキャラクターのリズムをひねることができるのか? どうやってそのキャラクターの個性を引き出せばいいのか? そういうことを考えながら演じている。だから、役作りにはとても時間がかかることもあって、たとえば『レイチェルの結婚』(08)では1年間もかけた。私、長い準備期間やリハーサルはウェルカムなのよね」

ジョナサン・デミの『レイチェルの結婚』では初のオスカーノミネートでしたよね。「多くの人に、君にああいう演技ができるとは思わなかったと言われたの。すっごく嬉しかった。自分の力を証明したくてトライしたわけじゃなく、結果的にそうなっただけなんだけど」って。薬物依存症でリハビリしていた女性が、姉の結婚式に出るため帰ってくるという物語でした。この作品で演技力が注目されたという感じでしょうか。

『レイチェルの結婚』予告編

ちなみに、目標は「息の長い俳優」だそうです。そして「いつも違うキャラクターを演じたいと思っている。同じようなことを繰り返すのだけは絶対にイヤ。だからバランスはとても考えてチョイスしているのよ」って。ちなみに彼女、よく「私はラッキーだった」と言うんですが、こういうことも言っていました。

「母がいつも言っているのは、“運というのは、準備と機会の出会いで生まれる”という言葉。だから、凄いキャラクターや素晴らしい監督といつ出会ってもいいように常に準備をしているつもりよ」。

このお母さんの言葉は結構、説得力ありますよね。

── ということは『プラダを着た悪魔2』の後にはノーランの映画が控えていて、彼との出会いもそういう準備の賜物ってことなんでしょうね。

渡辺 そうかもしれません。アメリカで今夏公開されるノーランの『オデュッセイア』(※日本は2026年9月11日(金)公開)では旦那さまの帰りを待ちわびる奥さん、ペーネローペを演じているようです。ノーランのお気に入りの女優のひとりなんでしょうね、きっと。他にも待機作がたくさんあるようなので、このままいけば本当に「息の長い俳優」になれそうです。

『オデュッセイア』予告編

文:渡辺麻紀

『プラダを着た悪魔2』
上映中

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