海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
ジョン・ファヴロー
連載
第175回
ジョン・ファヴロー Photo:AFLO
7年ぶりの『スター・ウォーズ』劇場用映画を監督!
──今回はジョン・ファヴローです。彼の監督作であり『スター・ウォーズ(SW)』シリーズでは7年ぶりの劇場用映画、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』が公開されました。麻紀さん、『SW』ファンとしていかがでしたか?
渡辺 大好きでした! いまだかつてない『SW』になっていて、まずその点に驚きました。既成のキャラクターがほぼ出てこなくて、その分というか、驚くほどモンスターが登場する。マンダロリアンことディン・ジャリンはずーっと彼らと闘っています。なので観客としては疲れたりもするんですが、その後に相棒のグローグーが傷ついたディン・ジャリンを看病するシーンが用意されている。このシーンで癒されると同時に、グローグーのかわいらしさ、健気さにときめきまくってしまうんです。幸せでした、はい。
──そのモンスターの中にはジャバ・ザ・ハットの息子、ロッタもいるわけですね?
渡辺 そうなんです。まさに本作の準主役ですよ。しかもグラディエーターをやっているという設定なので筋肉質。巨大ナメクジを筋肉質にしようと考えたファヴローはある意味、凄いなと。ロッタはアニメシリーズの『クローン・ウォーズ』が初登場で、そのときはまだ赤ちゃんでした。そんな彼が誘拐され、父親のジャバがアナキンとアソーカに奪還を頼むというストーリー。ジャバはとても息子を愛している感じだったのに、成人したロッタは犯罪者の父をとても嫌っていましたね。何があったんだろうって……。
──な、なるほど。で、ファヴローはどの作品のときに取材しているんですか?
渡辺 彼が最初、注目されたのが『スウィンガーズ』(96)なんですが、何とこのときから取材してました! 彼は本作で製作・脚本・主演という大活躍。これで注目され、03年に『エルフ~サンタの国からやってきた~』を監督したんです。
『エルフ』はウィル・フェレルがエルフに扮したクリスマス映画ですが、すでに十分おたくっぽかった。サンタの国の雪だるまなどをモデルアニメで動かしているだけではなく、そのキャラクターのひとり、ホッキョクグマの声をモデルアニメの神様、レイ・ハリーハウゼンに当ててもらっている。これはもうダテじゃない(笑)。
今度の『マンダロリアン・アンド・グローグー』でもモデルアニメを使い、しかもそれをハリーハウゼンの後継者であり、旧3部作でモンスターチェスやAT-AT、トーントーンのモデルアニメを担当したフィル・ティペットにやってもらっていますからね。マジでモデルアニメ・ラバーなんだと思います。
──麻紀さんと趣味が合う(笑)。
渡辺 はい! 合いまくりです(笑)。
ブレイク前のインタビューでも語っていたスター・ウォーズ愛
渡辺 さすがに『スウィンガーズ』のときのテープ起こしは残ってなかったんですが、『ザスーラ』(05)はありました! 何と、このときから『SW』のことを言っていたんです。
『ザスーラ』は『ジュマンジ』(95)の大ヒットで生まれたともいえる、ボードゲームで起きたことが実世界でも起きてしまってさあ大変、というファンタジーです。本作に惹かれた理由について「私自身、子どもの頃、どうしてもR2-D2が欲しかった。なぜかというと『SW』の世界を体験してみたかったからだ。そのフィーリングを子どもたちに与えたいと思って(監督を)引き受けたんだ」
──おお、マジで『SW』好きなんですね!
渡辺 そうなんですよ。この昔のインタビューを見つけて、彼の『SW』愛がホンモノだったことが分かり、とても嬉しいです。その手の作品に関係すると誰もが「大好き!」と愛を語るのが常なんですが、割と嘘っぽい人が多い(笑)。さすがに「本当ですか?」とは聞けないので想像するしかないんですが、ファヴローはホンモノだったということです。ま、映画を観ればそれは分かるんですけどね(笑)。
さらに『ザスーラ』のとき、こんなことまで言っているんです。
「ロボットは『禁断の惑星』のロビーっぽくしたかったし、フライデーも意識した」。
素晴らしいこだわりじゃないですか? フライデーは『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボットで、ロビーっぽいんです。ノスタルジーなデザインを大切にしているので、エドガー・ライス・バローズの『火星のプリンセス』や『バックロジャース』『フラッシュゴードン』の話が出てくる。素晴らしいですよね。
ちなみにこの作品に登場するロボットの声を担当しているのが、フランク・オズなんです。『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(81)からヨーダの操演と声を担当している人。ファヴロー、「たくさん『SW』の話を聞いた」と嬉しそうでした。
──それは徹底してますね。
渡辺 ですよね! その一方で、こんな辛辣な話をしていたので面白い。
「私が本作の監督として雇われたのは、前作の『エルフ』が低予算ながら大ヒットしたからだ。“だったら、ジョン・ファヴローを雇おうか”ってね。スタジオの上層部の人間は失敗するのを凄く恐れている。いい映画を作るというより、いかに失敗を回避するかばかりを考えている。だから、もし本作が失敗したとしても『エルフ』の監督に任せてのことだから、あまり文句は言われないだろうってことなんだよ。この業界の上の連中は、自分のボスを喜ばせて、自分はクビにならないようにすることばかり考えているんだから!」
──それはかなり辛辣なのでは?
渡辺 そうなんですよ。それについてはまだまだ言いたいことがあるようで、続けてこう言っていました。
「彼らは失敗を恐れて、安全な方向ばかりを目指す。だから私のもとにも『エルフ』の後は『エルフ』のような作品のオファーばかり来て、その前の『スウィンガーズ』の後は、インディコメディの依頼が集中していた。私はそれから逃れるために『エルフ』をやったのに!」
──でも、『ザスーラ』は引き受けたんですよね?
渡辺 「SFXをやれるから」であり、「脚本がよかったから」であり、「ノスタルジーを刺激されたから」だそうです。
ちなみに、この『ザスーラ』の次の作品は『火星のプリンセス』と言っているんですよ。でも、この作品は結局、2012年に『ジョン・カーター』というタイトルで、アンドリュー・スタントンがディズニーで実写映画化しました。『ザスーラ』、作品としての評価は高かったんですが、興行的には奮わなかったので、ファヴローの次回作としてはキャンセルになり、紆余曲折の末にスタントンになったのかもしれない。そもそも、スタジオに対して結構、いろいろ言っていますから、撮影中上手くいかなかった可能性もある。
──昔のインタビューを掘り起こすと、いろんなことが見えてきて面白いですね。
渡辺 想像の域を出ないのもありますが、再発見がたくさんあり、発掘する方も楽しいです。
Photo:AFLO
『マンダロリアン・アンド・グローグー』が面白いのは、最新のデジタル技術とオールドファッションなモデルアニメーションなどを組み合わせているところにもあるんですが、何と彼、『ザスーラ』のときにすでにこんな発言をしている。
「CGを使えば簡単だし、そっちの方ほうがラクではあるんだけど、私たちは本作でオールドファッションな技術をたくさん導入した。宇宙船もモデルだし、ロボットは細い足を除けば中に人間が入れるモデルだ。もちろんニセモノに見えるけど、いいニセモノって感じが、私はするんだ。今のCGが5年後に笑いものになったとしても、そういうオールドファッションのSFXはそのクオリティを保つと思うよ」
素晴らしいですよね。
──はい、よーく分かりました(笑)。
渡辺 ファヴローが次に監督として注目されるのは、3年後、2008年の『アイアンマン』からですけどね。このときもインタビューしているんですが、今回は『ザスーラ』のときのエピソードでいっぱいになっちゃいました。彼のインタビューは大変面白いので、次の機会にまた紹介させてください!
文:渡辺麻紀
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』
上映中
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