押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
“良い質問”ができるコツはなんでしょうか?<後編>
月2回連載
第113回
Q.
質問をするときに“良い質問”ができるコツはなんでしょうか。仕事などで上司から「良い質問をするね」などと褒められることがありますが、具体的に良い質問とは何なのか聞いたことがありません。押井監督は映画撮影の仕事でいろいろなスタッフに質問をすると聞きました。人から良いアイデアを聞き出すためのテクニックなどがあれば教えてください。
── 今回は前回に続き「良い質問」についてです。前回は「良い質問とは?」について答えていただきました。今回は後半の「良いアイデアを出させるためのテクニック」ですね。
押井 アイデアを出させるというのはまた違う質問だから。前半の「良い質問のやり方」は帰納的な問題で、後半は敷衍(ふえん)のことを言っている。“敷衍”というのは、ひとつの事実から出発して次々と枝葉を拡げ、いろいろな可能性を検討すること。このふたつの思考は逆なの。
── いわゆるブレインストーミングですね。
押井 そうです。私たちがブレストするときは大体、温泉旅館でひと晩泊ってやる。全員が眠くて起きてられないくらいまで話し合う。ほぼ朝までやってるよね。あらゆる可能性について検討する。
ブレストにはお約束があって、どんなくだらないアイデアであっても絶対にけなさない。どんなアホな提案であっても否定しちゃダメなんです。その先に正解があることがあったりするから。
あえてバカを言うことも大いにアリ。一番ダメなのは黙ってること。黙っているんだったら参加するなってことですよ。冗談やバカ話が7割を占める。シンちゃん(樋口真嗣)たちとやるとこれが8割になるんだけどさ(笑)。
── 目に浮かぶようですね(笑)。
押井 そうです。だからこの質問の答えは「冗談から始めよう!」かな。
実のところ冗談には根拠がある。根拠がないところには冗談は生まれない。茶化すということは真面目な話があってのことでしょ? そこで視点が変わり一歩前進するんです。冗談をどんどんエスカレートさせていく。あるいはバカ加減を競ってもいい。そういうことで光が見えてくるから。
ある意味で言えばとても手間暇がかかるんですよ。だから好きじゃないとできない。冗談やバカ話が好きな人が集まってやるからブレストになる。ロジックでガチガチのヤツがやっても退屈するだけ。時間の無駄。リラックスするために酒も飲むしお菓子も食べる。気分転換で風呂にも入る。だから温泉宿が一番いいんですよ。できれば離れに部屋を取る。そうすれば朝まで騒いでも叱られないから。
── 理想的な人数は?
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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己
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