押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
暑すぎて死にそうです。地球はいつまでもつと思いますか?
月2回連載
第120回

Q.
暑すぎて死にそうです。昔は真夏でも30度ちょっとくらいだった気がします。暑さ以外にも異常気象も多く、どんどん地球が滅亡に向かっている気がします。押井さんは、地球はいつまでもつと思いますか?
── 今回は今夏の異常気象について、というか暑さについてというか。まあ、連日信じられないくらい暑いですね。
押井 毎年毎年、ここ10年くらい過去最高を記録しました、みたいなことを言ってるよね。
── そうです。そもそもトップニュースが気温だったり水害だったりですからね。
押井 “ゲリラ豪雨”っていうじゃない? ゲリラ豪雨と言っちゃうから間違えるんだけど、あれはスコールなんだよ。亜熱帯気候の地域に降る突然の雨。でも、日本は温帯気候という範疇だから“スコール”とは言わずに“ゲリラ豪雨”と呼んでいるんだろうけど、私に言わせればもう亜熱帯です。
日本は亜熱帯地域になっちゃった。それを認めたくないから“ゲリラ豪雨”なんて呼んでるだけ。じゃあ、なぜ亜熱帯がダメなのか? 東南アジアっぽくなるのがイヤなんですよ。
── 私もあの突然の雨はスコールだと思います。
押井 でしょ? それを認めなきゃいけない時代になったんです。にもかかわらず抵抗し続けているのは、マスコミも視聴者も“美しい四季の国、日本”を共有したいから。
実質的にはもう四季は崩壊しちゃってるじゃない? 梅雨も短かったし、その前の春なんてあっという間。一瞬ですよ。これから来るだろう秋だってちゃんと感じられるか分からない。私は秋も一瞬だと思っているけどね。数日前まで「暑い暑い」と言っていたのに突然、「寒くなった」になる。
みんな、“美しい日本”という幻想を共有したいから踏ん張っている。でも、その幻想を信じていたら死んじゃうよ、熱中症で! もう日本はクーラーを入れなきゃ眠れないような国になったんです。それを認めないから年寄りが熱中症で搬送される。

Photo:AFLO
── 私はクーラーが嫌いなんですが、さすがに今年はつけっぱなしですね。これが10月の頭くらいまでは続くんだろうなあって。秋のはずが残暑ですよ。日本はいつの間にか四季じゃなく二季になっちゃった。
押井 吉本隆明が言っていたけど、日本には自然なんてどこにもない。美しい自然は日本人の脳髄に留まっている幻想の中だけにしか存在していないって。原生林なんて100%、日本にはありませんから。
現実を認めなさい。日本はすでに亜熱帯地域です。
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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己

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