押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?

サッカー日本代表が快進撃を続けていますが、最近もサッカーをご覧になっていますか?<後編>

月2回連載

第128回

押井さんの推し選手、日本代表の“10番”を背負う堂安律 Photo:AFLO

Q.
サッカーの日本代表がW杯の最終予選で快進撃を続けています。押井さんは最近もサッカーをご覧になっていますか?

※Vol.127からの続きとなります。

── 前回に続きサッカーについて語っていただきます。最近はサッカーの試合を中継してくれなくて、一体どうしたんだ!?と押井さんは憤っています。私はマスコミも含め、日本人の多くが大谷翔平に一点集中しているせいだと思うんですが。

押井 ある人が「大谷の報道が多すぎる」と言っていた。大谷はすでにチート級、オールマイティ。あれだけ打って投げて走れる選手はいません。漫画のような活躍しちゃうんだから、これまでの野球界で見たこともない逸材だよ。ベーブ・ルースも二刀流だったけれどレベルが違う。

すでに大谷は宮さん(宮崎駿)より有名だね、絶対。毎日、彼に関するニュースが報道されるから、大谷を知らない日本人はいないんじゃないの?

マスコミを含め日本人はそういうふうに、どうしても一点集中しちゃう。産業面ではトヨタ、スポーツではサッカー、オタク系だと漫画やアニメの市場が広がっていても、目につくのは大谷関係ばかり。アニメに関しては、アニメそのもののレベルが上がったかは疑問だけど、マーケットは確実に大きくなっている。日本のオタク文化はグローバルになっちゃったよね。それに比べると映画はダメ。家電も以前の勢いはない。

こういう流れが生まれたこともあって、日本は国際化していると言われているけど、本当に外の世界が分かっているのかはアメリカ人といい勝負のような気がするんだよ、私は。そもそも海外に興味がないでしょ? 日本という国がどういう国なのか、果たして日本人は分かっているのか? 日本人が日本人に興味を持つかどうかというのは古典的なテーマなんですよ。

それはさておき、昨今の動きを見ていると、本当にサッカー文化が日本に根付いたかというと、ちょっと疑問だよね。野球に関してはかつての栄光はすでにありません。大谷がここまで注目されたのはメジャーリーグで活躍しているから。日本からアメリカに行って活躍してやっと注目する。

ドジャースに移籍した2024年は打者に専念、50-50(年間50本塁打・50盗塁)の記録を打ち立てた大谷翔平
Photo:AFLO

── というか押井さん、日本人って海外の人に認められるのがすっごく嬉しいみたいじゃないですか? TVのニュースなんかを観ていると、球場に来ていた米国人を捕まえて「大谷をどう思うか?」みたいな質問をいつもしている。前回のワールドカップのときも会場付近で「日本選手の活躍をどう思う?」みたいな質問。そんなこと聞くの日本のメディアだけじゃないかなって。

押井 昔からです。そういう質問をするのは、それが自分たちの文化になってない証拠なんだよ。アニメは幸いにして海外で評価されているけど、そういう作品が日本国内で必ずしもトップのものだとは限らない。私に言わせれば「こんなんでいいの? もっといい作品たくさんあるよ」って感じなんだけどさ。

それに、向こうは息が長い。いまだに“ナルト”とか“ピカチュウ”が大人気でしょ。それに比べると日本人は飽きやすい。毎シーズンごとに違うアニメをやるから、「今年の春アニメはこれが覇権を獲った」とか言い始める。同じ作品をずっと追いかけるということをあまりしない。

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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己

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