押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
怪獣映画と自衛隊の魅力についてお聞きしたいです!
月2回連載
第129回
Q.
押井さんがどこかで「怪獣映画は自衛隊が活躍するから好きだった」というようなことを仰っていた記憶があります。あらためて怪獣映画と自衛隊の魅力についてお聞きしたいです!
── 今回のお題は“怪獣映画と自衛隊”です。そんなこと、仰ってましたよね? 押井さん。
押井 確かに言ってます。私にとって怪獣映画は自衛隊映画。私が怪獣映画と一緒に育ったということは、自衛隊と育ったということなんです。
というのも、自衛隊が戦後の日本で唯一肯定されたのは怪獣映画だけなんだよ。それ以外では、税金泥棒だの軍国主義者だの、コテンパンでボロクソ。日本人全体がほぼ全否定に近かった。自衛隊の存在自体が許せないというような教育もされたし、日本は二度と戦争しないんだから軍隊は不要でしょということ。もう一度軍隊を作るなんてとんでもない話だというわけですよ。
一方、当時の私は子どもだったので「やっぱり戦車ってかっこいいよな」「ジェット戦闘機、サイコー」という感じだった。「米軍の払い下げだけど、F-86セイバーは凄い。朝鮮戦争でミグ(※旧ソ連/ロシアの戦闘機)に勝った戦闘機なんだからね!」って。それまではミグがやりたい放題。でも、セイバーが登場してその流れが変化したんです。ガキとはいえ、それくらいの知識はあったから。
── 押井さん、調べてみたらF-86セイバーって怪獣映画に出まくってますね。びっくり。
押井 でしょ。私は、セイバーに乗ったこともあるんですよ。基地祭みたいなのに連れて行ってもらって、86セイバーのコクピットに搭乗したんです。そのときの感動をいまだに忘れてない。「ああ、これがジェット戦闘機なんだ」って。
── そうでしたか。
押井 怪獣映画のジェット戦闘機といえば、ある時期までずっとセイバーだったんです。かなり長かったと思うよ。今だとたぶんF-2になると思うけど、怪獣映画といえばセイバーであり、陸上自衛隊の61式戦車であり――途中から74式になったけど――64式小銃の前はガーランドだったんです。

Photo:AFLO
あの頃の自衛隊は出動となるとトラックから次々と出てくるの。トラックだったんだよ!
── はっ? トラックが何か?
押井 だから、やっぱり戦後なんだなということなんです! 当時は歩兵の兵隊さんがそうやってトラックから降りて来たんだよ。
── は、はあ……。
押井 いや、何が言いたいかというと、怪獣映画だけが自衛隊を肯定してくれたということなんです!
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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己
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