押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
“ガンダム”を見に万博に行かれたそうですね
月2回連載
第143回

Photo:AFLO
Q.
押井さんは、辻本貴則監督の“ガンダム”を見に万博に行かれたそうですが、今回の万博をどう感じましたか?
── 今回は、現在開催中の大阪・関西万博についてです。辻本さんが監督を務めた『GUNDAM:Next Universal Century』がガンダムのパビリオン、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILONで上映されています。押井さん、いつの間に行ったんですか?
押井 いつの間にって、招待枠で行ったのでオープンしてないときだよ。周りはまだ工事中だったから、ガンダムのパビリオンだけしか行っていない。昔からの知り合いに「辻本さん、頑張っていますよ」と言われて見に行った。ちなみに自腹で行きましたよ、はい。で、すっごく疲れたね。
大阪・関西万博が本日開幕:超びっくりマーク:
— 辻本 貴則 / Takanori Tsujimoto (@TakaTsujimo) April 13, 2025
GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
皆さまどうかお越しください!:ピカピカ:
先日、押井守監督(巨匠)がガンダムパビリオンを観るために会場の夢洲までご来場下さいました! 私の20年先輩ですが、まだまだバリバリお元気であります。… pic.twitter.com/Y6XYnntSUP
── 辻本さんのXには「ひとまず合格という言葉を頂きほっとひと息」と書いてますが。どこが合格だったの?
押井 案内してくれたからね。
── えっ? そこ?
押井 いや、いい意味で普通だったよ。普通に作っていい仕事をしたということ。監督として見事に機能していました。辻本はCGアニメに関しては演出力があるから、それを活かしていたということです。
── 辻本さん最近、大活躍ですよね。『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(25)もヒットしていた。押井さんは早くから才能を認めていたんですね?
押井 才能はある。前からそう思っていた。映画やドラマ、アニメを作るときはオーダーがあって、それを請け負い、商品として申し分ないかたちで納品する。それが職業監督です。辻本はそれがちゃんとできる。職業監督なんて大工の棟梁みたいなもん。完成させるために職人をたくさん集めて指示を出すわけだから。
── 辻本さん、ガンマニアなんですよね?
押井 違います。ガンアクションが大好きで銃そのものには興味がない。だから自動拳銃がどういう原理で作動するかとか、アサルトライフルは作動方式がひとつひとつ違うとか、そういう知識はゼロ。マガジンチェンジを無視して無限に弾が出る系が大好き。
── それって変わってません?
押井 変わってる。私も初めてだよ。映画業界はガンマニアが多く、能書きが大好き。ショートストロークピストンとロングストロークピストンの差を説明できないとマニアとは言えない、みたいなこだわりですよ。
でも、辻本の場合は興味もなければ知識もないので、使う銃は何でもいい。さすがに日本のヤクザがサブマシンガンを撃つことはないけど、どうやってこの銃を手に入れたんだとマニアなら突っ込みたくなる銃を平気で使っているしね。普通はガンマニアとガンアクションはイコールになるんだけどさ。
── でも押井さん、ガンアクションも使う銃によって異なりません? そういう知識ナシで演出できるの?
押井 だから、辻本のガンアクションは殺陣なの。『ジョン・ウィック』(14)と同じ。あれは銃の殺陣映画だから。辻本も大好きな映画ですよ。彼の『バイオハザード:ヴェンデッタ』(17)ではクリスとレオンのガンアクションが評判になったんだけど、ほとんど『ジョン・ウィック』だから。
ガンアクションにはリアル系とファンタジー系があって『ジョン・ウィック』は後者。無敵の殺し屋だから。とはいえ銃にこだわりはある。最新の銃を登場させるし、博物館に突入してショーケースを破り、そこに散らばった部品で銃を作っても、ちゃんと理にかなっている。このシリーズ、マガジンチェンジ、リロードが見せ場のひとつでしょ。いかに無駄なく、相手の銃を奪いながらやるか。ただし、その奪っている銃は自分のマガジンと合ったものだからね。ファンタジー系だけど、そういうところは驚くほどちゃんとしている。
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取材・文:渡辺麻紀 撮影:源賀津己
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