押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?

『ジョン・ウィック』のガンアクションってどうですか? ガンアクションで唸った映画はありますか?<前編>

月2回連載

第144回

Photo:AFLO

Q.
押井監督はガンマニアとしても名高いですが『ジョン・ウィック』シリーズ(14~)のガンアクションをどう評価されていますか? また、ガンアクションで唸った映画がありましたら教えてください。

── 今回はガンアクションについてです。その代表作のひとつ『ジョン・ウィック』シリーズの評価ですね。ちょうど8月22日から、シリーズ最新作『バレリーナ:The World of John Wick』が公開になります。押井さんはまだご覧になっていませんが、今度は女性、男子に大人気の色っぽいおねえさん、アナ・デ・アルマスが復讐に燃えアクションしまくる映画ですね。キアヌ・リーブスも出てますよ。

押井 面白いの?

── はい、私は面白かった。彼女が大変かっこいい。『ジョン・ウィック』がシリーズ化され、こうやってスピンオフまで作られるほどの人気をちゃんとキープしているのって凄いと思います。

押井 1作目を観たとき、私も驚いたんですよ。いろんなガンアクションがあるけれど、これは近接戦闘用に特化していた。クリスチャン・ベールが出ていた『リベリオン』(02)は拳銃を使った近接戦闘と東洋武術を混ぜたようなガン=カタというアクションで注目されたけどね。しんちゃん(樋口真嗣)はこれをガンフーと呼んでいて、しんちゃんの表現の方がいいと思いましたよ。

── ガンフーは1作目の『ジョン・ウィック』(14)のアクションを表現するときも使っていましたが、それより随分前に樋口さんは使っていたんですね。

押井 しんちゃん、そういうセンスはピカイチなの。

で、『ジョン・ウィック』は詰めた距離でどうやって銃を使うのかというテーマのひとつの答えを出していた。銃を押さえて撃つというスタイルをスタイリッシュにやっていたから。

やっぱり映画における銃の場合、ある程度の距離が必要になって、こっちで撃って向こうで撃つの切り返しになっちゃう。結果、単調になってしまうんです。そういうマンネリを破ったのが『リーサル・ウェポン』(87)。

この映画がガンアクションとして新しかったのは弾の装填数が増えたことで生まれたスタイルを繰り出していたからです。移動しながら3人、4人と倒していくこともできれば、コンテナの間で銃を撃ちあったりもできる。見え隠れしながら撃てるんです。6発じゃ無理、装填数が倍以上になりマガジンチェンジがいらないからこそ可能になったアクション。ベレッタF92という銃が可能にした殺陣だよね。

── そういうところに『リーサル・ウェポン』の価値があったんですね。

押井 銃の殺陣は劇的に変わる瞬間があって、フルオートの登場はそのいい例。映画のガンアクションの殺陣というものが注目されるようになったんです。ライフルで殺陣なんてありえないでしょ? 連発銃になってからですよ。サブマシンガンやアサルトライフが登場して、戦場でのアクションシーンが大幅に変わったんです。

── 『ターミネーター2』(91)で(アーノルド・)シュワルツェネッガーが右手でバイクのハンドル、左手で銃を回しながら撃っていて大変かっこよかったんですが、あれは?

押井 あれはショットガン。回しているのはかっこつけているんじゃなく、装弾するため。レバーアクションというんです。ああいうのはシュワのようにでっかい男がやるからサマになるわけで、小さい男だと情けない図になっちゃうの。

身体の大きさというのは重要で、昔のアメリカのテレビシリーズに『ライフルマン』(58~63)というのがあったでしょ? あれが有名になったのはウィンチェスターのレバーアクションライフルでガンスピンをやっていたから。それがかっこよかったのも演じているチャック・コナーズが長身だったからですよ。

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取材・文:渡辺麻紀  撮影:源賀津己

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