押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?

押井監督の自主映画の思い出を教えてください!<前編>

月2回連載

第146回

Q.
自分は大学の映画サークルで自主制作映画を撮っているのですが、人員不足や資金不足で毎回、撮影は大変です。押井監督も学生時代には自主映画を撮っていたと金子修介監督の記事で読みました。今と昔では自主映画を取り巻く環境はかなり違うと思いますが、当時の自主映画や現場の思い出などについて教えていただけると幸いです。押井監督の新作も心待ちにしています!

── 今回は自主映画制作についてです。ちょうど、 PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が9月6日から20日(土)まで開催 されています。コンペティション部門のPFFアワードが自主映画で新人監督の登竜門と言われています。押井さんも学生時代、撮っていたんですね?

押井 私は自主映画出身の監督と言えば言えるんですよ。だからというわけでもないんだけど、ガンアクション・コンテスト(ガン・アクション・ムービー・コンペティション)の審査員をかれこれ20年近くやってきた。最近は休止状態だけど。そういう意味も含めて、自主映画とは馴染みの深い人間だと思っている。

今と違って私たちの学生時代は自主映画を作ったとしても発表する場がほとんどなかった。そういうPFF的なコンテストもなければYouTubeももちろんない。勝手に作っておしまい。そういう意味では本当の自主映画ですよ。

私も上映会で自作をかけたことがある。私の作品だけじゃ誰も来ないだろうと思い、(セルゲイ・)エイゼンシュタインの『十月』(1928)と併映にして入場料は50円。ふたり観に来てくれたけど『十月』が終わったら帰っちゃった(笑)。そういう状況にもめげず撮るのが自主映画という感覚だったよね。私も苦労していたんです。

── 自主映画を制作する上での苦労といえば?

押井 ふたつある。ひとつはお金。自主映画と言えどもお金はかかりますから。友だち同士で集まって撮るにしてもお金はかかるじゃない。フィルム代とかカメラのレンタル代とか衣装代とか……。人間関係の軋轢とかも苦労のタネではあるんだけど、それも最終的にお金に還元できるからね。

もうひとつは、さっき言った上映会じゃないけど、いかにしてみんなに観てもらうか? お金と公開のチャンス、このふたつとの闘いが自主映画の内実といってもいい。

それに比べるとあとは大したことない。役者の調達は先輩の彼女だったり友人の妹だったりに頼み込む。あるいはどこかでかわいい子をナンパしてくる。他のサークルの女子を説得するという手もある。問題は若い子しかキャスティングできないことかな。おっさんとかおばちゃん、子どもはハードルが上がってしまう。どちらにしろ基本は素人ばかりです。

そういう中で映画を撮っていた身からすると、今は本当に恵まれている。カメラだってiPhoneでも撮れちゃうし、編集も無料の編集ソフトを使えばOK。問題は音響くらいじゃない? これはスタジオが必要だから。役者も最近は事務所に所属している女の子が、場合によっては出演してくれるようだし。

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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己

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