押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
おススメのミステリ映画を教えてください<後編>
月2回連載
第151回
Q.
ミステリ映画が好きです。押井さんのおススメを教えてください!
── 前回からミステリ映画について語っていただいていますが、『トーキング・ヘッド』(92)で終わってしまったので、今回こそは質問者の「おススメ」をお願いします!
押井 だから、ミステリと映画の相性は悪いって言ったじゃないの。なぜ悪いのか? その答えは『トーキング・ヘッド』で語っているということで前回はその話になったんだよ。
── でも押井さん、全然ないわけじゃないでしょ?
押井 (ベネディクト・)カンバーバッチの『SHERLOCK シャーロック』(10~17)はいい。大好きですよ。世界中、誰もが知っている探偵だしストーリーなのに、演出とカンバーバッチの演技でまったく新しいドラマになっていた。
ミステリは基本、探偵がもっともつまらないんだけど、その構造をひっくり返したのがこのシリーズ。これまで何本も作られたTVシリーズの中で、カンバーバッチのバージョンが一番面白い。舞台は現代のロンドンに翻案されているにもかかわらず、そういう違和感もまるでなかった。素晴らしいですよ。
── 押井さん、ありがとうございます! 私のカンバッチくんを認めてくれて。
押井 そうか、麻紀さんファンだったね。
── 大好きです! というか世界中の人が『SHERLOCK』でカンバッチくんに魅了されたんです。
押井 宮さん(宮崎駿)もわんわんモノの『名探偵ホームズ』(84~86)を作っていて、彼の作品の中でも上位3本に入るくらい出来がいい。テンポ感が素晴らしく、演出が冴えわたっていた。こういうツナギの演出をやる人なんだ、やっぱり上手いんだって感心したからね。
なぜそんな作品になったかと言えば、“シャーロック・ホームズ”という枠があったため、演出に徹することができたからだよ。そういう意味では、“ホームズもの”は監督の演出力を問われる題材でもあるということになる。
── “ミステリの女王”と呼ばれるアガサ・クリスティも、何度も映画化&シリーズ化されてますよね。
押井 うーん……いいのはないなあ……麻紀さんが好きなケネス・ブラナーのポアロシリーズもいただけないし。
── ケネスの悪口は止めてください!
押井 はいはい(笑)。だから、何度も言うけど、ミステリはある種の大人の趣味の世界で決して文学にはならない。ハードボイルドが凄いのは、同じように探偵を主人公にしながらも文学に昇華させているからだよ。
── 探偵と言えば、ジェームズ・ボンドを卒業したダニエル・クレイグが『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)でブノワ・ブランという探偵を演じ、これがヒットしたのでNetflixでシリーズ化されましたね。面白くないけど。
押井 (笑)。確かに面白くない。ダニエル・クレイグ、探偵には見えないよね。彼はアクションをやらなきゃダメなんだって思ったから。
あ、彼で思い出したけど、(デヴィッド・)フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』(11)はよかった。もう7、8回は観てる。ヒロインのパンク娘を演じたルーニー・マーラーが見事にハマっていた。彼女、とても気に入りましたよ。
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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己

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