押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?

「これは編集が上手い!」という作品があれば、教えてください!<前編>

月2回連載

第159回

Q.
今、TVアニメの初監督を務めています。監督をしてあらためて編集の大事さを思い知り、緩急のつけ方やセリフの長さに悪戦苦闘している毎日です。押井さんが「これは編集が上手い!」と思う映画作品、TV作品があれば教えてください!

── 今回は編集についての質問です。この質問者の方、こうやって取り上げたときにはすでに納品しちゃっているかもですが。

押井 麻紀さん、編集の上手かった監督はどんな人だと思う?

── 編集で時系列をいじくった『メッセージ』(16)って、押井さんがおっしゃってましたが。編集のおかげで映画のテーマが際立った典型的な1本ですよね。ということはドゥニ・ヴィルヌーブですか?

『メッセージ』予告編

押井 あの映画はそうでした。他には?

── 編集マン出身のロバート・ワイズ? あ、1本ありました。『がんばれロケッツ!』(原題『The Best Of Times』/DVD題『明日へのタッチダウン』)(86)という映画です。監督は編集マン出身のロジャー・スポスティウッド、脚本は押井さんも大好きな『さよならゲーム』のロン・シェルトン。これ、涙なしには観られないワタナベ的な大傑作なんですよ。で、後半のハイライトがアメフトの試合なんですが、その試合運びとルールがとてもよく分かってびっくりだったんです。

押井 スポーツものに編集の力は出る場合が多いので、その麻紀さんのお気に入りはきっとそうだったんだよ。編集者のテクニックが優れているということだよね。で、私が言いたいのは、その映画のように編集が優れているというのと、監督として編集が凄いというのは別ということ。何が言いたいかというと、編集は編集作業に入る前から始まっているんです。監督はアニメも実写も関係なく、一歩先を見ながら仕事をしなくてはならない。

たとえば、コンテを切るとき。当然、音のことを考えながら切る――まあ、そうじゃない監督の方が多いんだけどさ。このシーンで音楽は流れているか? どこから音が入るのか? ここはノンモン(※ノン・モジュレームの略。映像における無音状態のこと)にしよう、テンポを落とした方がいい、このシーンはのり代をとってないとダメだ、などなど、あらゆる場合を考える。だから、コンテを切るということは脚本の段階ですでに編集をしているということ。

そして、そのひとつの基準になるのが作画であり、一歩先を見て決めた音なわけですよ。それを無視すると、あとで音響が苦労するだけじゃなく、デリケートじゃない作品になってしまう。音のイメージをもってコンテを切るのが重要。空間としての音響設計をする。つまり音像をつくるんです。

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取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己

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