押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
「これは編集が上手い!」という作品があれば、教えてください!<後編>
月2回連載
第160回
Q.
今、TVアニメの初監督を務めています。監督をしてあらためて編集の大事さを思い知り、緩急のつけ方やセリフの長さに悪戦苦闘している毎日です。押井さんが「これは編集が上手い!」と思う映画作品、TV作品があれば教えてください!
── 編集について語っていただいています。今回はその後編です。編集の場合、映像のみならず音像にも注意を払わなくてはいけない。そして編集は編集作業が始まる前からすでに始まっていると、押井さんはおっしゃっています。
押井 大画面で観る場合、映像が取りざたされる傾向が強いけど、実は音響が重要。でも、これも次郎ラーメンのようにノセノセ系が多く、勢いだけで勝負しようとしている。マーベル系はほぼこれだよね。じゃあアート系がいいかというとそうでもない。音楽や音響を抑えているだけで、ちゃんと設計されているわけでもない。基本的にはキャラクターの心像に寄せているだけ、心的なものを補完しているだけですよ。
そういう中、サー(リドリー・スコット)は実は音もいい監督なんです。『キングダム・オブ・ヘブン』(05)を観れば分かる。絵が凄いんでついそっちに目が行っちゃうんだけど! ほら、『ブレードランナー』(82)だってヴァンゲリスの音楽がとてもよかったじゃない。あの音楽がなければ、ここまで愛される映画にはならなかったと思うよ。
私に言わせると、優れた監督というのは、絵のみならず音も凄いということです。
── 他にそんな監督います?
押井 違った意味で素晴らしいと思うのは(デヴィッド・)リンチ。歌の使い方が大変上手です。ドラマシリーズの『ツイン・ピークス The Return』(17)は作品としての出来はイマイチだったけど、飲み屋のようなところで女子バンドがロックみたいな音楽を聴かせるんだよ。「あ、こっちで来たんだ」って。ロックとはいえかなりダサいんだよね。リンチは自作に必ず音楽のシーンを入れる。『ブルーベルベット』(86)もそうだし、『イレイザーヘッド』(76)だってそう。
── 異様に頬の膨れた女性が歌うシーンですね。
押井 リンチは音楽のシーンを自分の世界観の一部にしている。彼らしい不思議というか気持ちの悪い世界。それが懐古的な音楽とあっている。
音楽の使い方にはいろいろあるということ。そういうところに注目することも大切なの。音が重要だから小屋を選ぶのは、音響そのもののことを言っていて、音響設計とは違うんです。いくら音響が凄くても、音の設計に配慮してないと意味がない。
※続きは無料のアプリ版でお読みください
取材・文:渡辺麻紀
撮影:源賀津己
質問はこちらのフォームからお寄せください!
