森崎ウィン Aiming To Overseas
当事者ではない僕が当事者を演じる、その答え
月2回連載
第57回
こんにちは。森崎ウィンです。
ついに『ジェイミー』が開幕しました。みんな、もう観てくれましたか。この作品がどんなふうに受け止めてもらえたのか、すごく気になります。
前回、『片袖の魚』という映画を観たことを書かせてもらいました。結局、僕が悩んでいたのは、当事者ではない人間が当事者を演じられるか、ということだったんですよね。
僕が『片袖の魚』を観てあそこまで考えさせられたのは、当事者が当事者の役を演じる強さがあったからだと思うんです。映画の後、トークショーがあって、そこで監督が自分もバイセクシャルであるという話をされていて。だからこそ書けた脚本でもあるし、監督ならではの視点で物事を見られるのかなとも思った。じゃあ、当事者の視点から見ることのできない僕にジェイミーができるのか。そこになかなかイエスと言い切れない自分がいたんです。

僕はミャンマーの出身ですけど、もしミャンマーのことを映画にしたとして、それが政治的な問題を取り扱っているものなのに、登場するミャンマーの人々をミャンマー人じゃなくて日本人が演じていたら、やっぱり違和感はあると思う。
去年、『彼女が成仏できない理由』というドラマに出させていただいたときも、最初はベトナム人役ということでお話をいただいたんです。でも、だったらベトナムの方に演じてもらった方が絶対面白くなると思いますという話をして。それで僕の演じたエーミンはミャンマーからの留学生という設定になりました。
おかげで、劇中にミャンマーの人が出てくるシーンがあるんですけど、そこでもっとこういうふうにしましょうということを僕からも提案できたし、僕が演じる意味をつくれた。ちょっとかもしれないけど作品に深みを与えられた気がしたんですね。

もちろん役者なんだから、自分とまったく別の人生を生きてきた人になるのは当たり前のこと。そのために僕は今まで自分が経験してきたことの中から近いものを引っ張り出してくるというやり方をよくするんですけど、ジェイミーでいうと、ある場面でジェイミーが自分のことを「僕はゲイだよ」と言うんですね。その感覚にいちばん近い気持ちってどれなんだろうと考えたときに思い出したのが、空港で入国審査を受けるとき。「ミャンマー人です」ってパスポートを見せても、大抵、入国審査官の人に「どこ?」って聞かれるんです。そのとき、いつも自分の生まれ育った国を否定されているような感じになるんだけど、ジェイミーの気持ちもこれに近いのかなって。
だけど難しいのが、近いからと言って、同じとはまた違う。セクシュアリティのことも、国のことも、それぞれ別個の話だから、一緒くたにしてわかったような気持ちになるのがいちばん怖いこと。どれだけ役に近づこうとしても、100%その役になることはできない、ということを改めて痛感しました。
それでも、演じなくちゃいけない。それが、僕の選んだ役者という仕事です。僕の演じたジェイミーを見てどう思うかは、きっと一人ひとり違うと思います。中には、ちょっと違うんじゃないかなと思う人もいるかもしれない。でも、その声も全部受け止めて、僕はジェイミーとして生きる。その気持ちで舞台に上がります。
正直怖いです。この作品に入ったとき、最初はこの経験を次の仕事につなげて、みたいなことを考えていたんですよ。でも、それは違うなと。今は次のことなんて考えなくていい。とにかく1回1回の本番を全力で生きること。頭にあるのはそれだけです。

ただ、間違いなくこの役をいただいて、僕の世の中に対する見方は変わりました。今年の3月に韓国でトランスジェンダー女性が自殺をしたというニュースがありました。軍の服務中に休暇をとって性転換手術を受け、その後も女性軍人として職務をまっとうしたいと希望したんですけど、それが叶わず除隊となり、自ら命を絶ったそうです。今回のオリンピックでもニュージーランドのトランスジェンダー選手が、女子代表として出場されたのが話題になっていましたよね。たぶん前までの僕だったら、こうしたニュースにそこまで関心を持っていなかった気がします。でも今はすごく考えるようになった。
役者って、そうやっていろんな役を生きて、いろんな影響を受けることで、人として成長していくのかなって。そんなことを今、考えています。
そんな中で、すごくいいなと思ったことがあったので、最後にそのことをシェアさせてください。『片袖の魚』を観た帰りに新宿のドン・キホーテに寄ったんですよ。そしたらそこのトイレが「MEN」「WOMEN」「ALL GENDER」の3種類があって。それにすごく感動したんです。こういう世界が素敵だよなって、純粋にそう思いました。
まだきちんと答えが出きっていないところもあるけど、そういうことも含めて、今の僕でジェイミーを演じます。どうかたくさんの人にこの作品を見届けてほしいです。
森崎ウィンでした。

撮影させていただいたのは……
『cat café にゃんこと』

19匹の可愛いねこちゃんたちと触れ合えます♪
【住所】
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2−14−6スワンビル201
http://www.nyankoto.com/
▼高貴なお顔立ちの“シュークリーム”ちゃん。

▼ウィンくんと仲良くしてくれたベルちゃん。

★おまけ★
哀愁漂うふたりの背中。ファンクラブのほうでも一緒のカットを掲載してます♪

プロフィール
森崎ウィン
1990年生まれ、ミャンマー出身。小学校4年生の時に日本へ渡る。2008年よりダンスボーカルユニット・PRIZMAX(現、解散)のメインボーカルとして活躍した。俳優としても様々な映画、ドラマ、舞台に出演し、2014年には『シェリー』で映画初主演を務める。2018年、日緬共同制作映画『My Country My Home』に出演、そのスピンオフであるドラマ版『My Dream My Life』では主演を務め、現地のテレビ局mntvで冠番組「Win`s Shooow Time!」を持ち、様々な広告に出演するなどミャンマーで大ブレイク。スティーブン・スピルバーグ監督『レディ・プレイヤー1』のオーディションでメインキャストであるダイトウ/トシロウ役に抜擢され、ハリウッドデビューを果たした。近年の映画出演作に、『海獣の子供』『トゥレップ』『蜜蜂と遠雷』(19)、『キャッツ』(20)などがある。映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。またメ〜テレ制作の連続ドラマ『本気のしるし』(19)にて初の連ドラ主演を果たした。2020年は世界中で再演を重ねているミュージカルの金字塔「ウエスト・サイド・ストーリー」の日本キャスト版Season2(主演:トニー役)に出演。
撮影/古川義高、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/KEIKO、スタイリング/添田和宏、衣装協力/プルオーバーシャツ¥25,300/クルニ(シアン PR TEL:03-6662-5525)パンツ¥41,800/セラー ドアー(アントリム TEL:03-5466-1662)
ソックス¥2,970/スタンス(スタンス カスタマーサービス TEL:0800-800-2380)
その他本人私物