こんにちは。森崎ウィンです。
「アクターズ・ショート・フィルム4」の配信がスタートしました。
改めてですが、本当にいい経験になりました。やっぱり映画をつくるって大変だね。編集所にこもって、ひたすら画をつないだり色を決めたり。自分の撮った映画をもう何十回と見ただろうというくらい、ずっと見続けるわけです。今まで監督をはじめスタッフのみなさんはこんな苦労をされていたんだなと。その裏側を少しですが知ることができたし、改めて尊敬の念を抱きました。
もう観てくれたCREWも多いと思うけど、『せん』はおばあちゃんの話です。今回、上田一豪さんに脚本をお願いするにあたって、僕の生い立ちから全部話をしたんですね。そこからアイデアがいろいろ生まれてきたんだけど、やっぱり僕にとっておばあちゃんの存在はとても大きくて。初めて映画を撮るなら、おばあちゃんの話にしたかった。
で、どなたに主人公のおばあちゃんをお願いしようとなったときに、中尾ミエさんしかいないなと。ミエさんとは『ピピン』以来、良いお付き合いをさせていただいて。僕の監督第1作にミエさんに出ていただけるなんて、こんなありがたいことはないです。
計4度目となる「アクターズ・ショート・フィルム」シリーズの中でも、ミュージカル映画は今回が初。僕がミュージカル映画を撮る上で何よりもこだわったのが、歌は絶対に現場で生で録ること。現場で生録りすると、どうしても他のノイズが入るときがある。だから、後から歌だけ録った方が楽は楽なんです。でも、ミュージカル映画である以上、僕は生であるべきだと思ったし、そこだけは絶対に死守したかった。
そんなこだわりもミエさんが演じてくださったおかげで、僕が頭で思い描いた以上の形になって実現できました。やっぱりミエさんの歌はすごいです。もともとすごい歌手の方なので歌が素晴らしいのはもちろんなんですけど、ただ単にうまいだけじゃなく、ちゃんと台詞を歌に乗せることができる。だから、聴いているだけで心が動く。ミエさんが家の中にいるだけで、もうその家に住んでいるおばあちゃんになるんです。お芝居って自然にいることがすごく難しいんだけど、ミエさんはナチュラルにそれをされていて。やっぱり長年、エンタメの世界で活躍されている方は違うなと感動しました。
鈴木伸之くんはミュージカルの経験はないんですけど、自分で音楽活動もされていて、歌えて映像の経験も豊富な、まさに今回の作品にぴったりの俳優さん。ただ、やっぱりミュージカルの経験がない俳優さんにとって、生で演じながら歌うってすごくハードルが高いことだと思うんですよ。だから、難しいかなと思ったんですけど、経験がないからこそ挑戦してみたいと言ってくださって。僕としてはその言葉がすごくうれしくて、ぜひとお願いしました。鈴木くんって体格もしっかりしているのに、どこか可愛らしさがあるんですよね。そんな鈴木くんが演じてくれたからこそのキャラクターになったんじゃないかと思います。
今回、ゼロから作品をつくって大きな学びになったのは、やっぱりすべての人たちへのリスペクトです。出役である俳優部が関わっているのは、作品づくりのほんの一部。その前後には、たくさんのスタッフのみなさんの努力があることを、わかってはいたつもりだけど改めて実感しました。だから、やっぱりどんな作品にふれるにしても、ゼロから生み出したつくり手の方たちへの敬意を忘れたくはない。
それは何も批判的な意見を持っちゃダメということではなくて。エンタメである以上、どんな感想を持つかは受け取った人たちの自由。でも、自分が感じたことを発信するにあたって、ちゃんと言葉は選ばなくちゃいけないし、意見を言うにしても相手への敬意だけは大事にしたいなと思いました。
僕自身、作品をつくっていく中で、迷ったこともありました。監督は、作品の出来を背負う立場。これで大丈夫かなって不安になることもあって。そういうときこそ、ちゃんと周りで一緒にやっている人たちに、今自分はこういうふうに考えているって、自分の考えを伝えていかなきゃいけないんだとも思った。完成したあとに、やっぱりああしておけばよかったって後悔したくないしね。ただ、伝えるにしても、言葉や言い方次第で相手の受け取り方も変わる。作品づくりに限らず、どんな仕事も一人ではできないからこそ、お互いのリスペクトがなくちゃダメだよなと思いましたね。
さて、僕の監督第1作『せん』は無事こうして世に放たれました。これを観た人が、どんなふうに思うかは、やっぱりその人その人の自由だと思っています。こういうのは、あとはもうお客さんが決めることだからね。ただ一つ言えることは、ミュージカル映画を撮るという目標を叶えられたこと、そしてその第1作が『せん』であることを僕は誇りに思っています。
また、感想コメントしてね。
森崎ウィンでした!
★編集部より★
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プロフィール
森崎ウィン
1990年生まれ。ミャンマーで生まれ育ち、小学校4年生の時に来日、その後中学2年生の時にスカウトされ、芸能活動を開始。
2008年にダンスボーカルユニットに加入し、メインボーカルを担当。俳優としても様々な役を演じ活躍する中で、2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の新作「レディ・プレイヤー1」で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビューを果たす。その後も数多くの映画やドラマに出演し、2020年に映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞。主演を務めた連続ドラマ『本気のしるし』では釜山国際映画祭2021のASIA CONTENTS AWARDSにてBest Newcomer-Actor賞を受賞。その劇場版は第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection2020」作品に選出。
また、ミュージカルの世界でも映画版『キャッツ』(20年日本公開)ではミストフェリーズ役の吹替えを担当。20年ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で主演トニー役、21年ミュージカル『ジェイミー』(21年)で主演ジェイミー役を務めたほか、2022年に東急シアターオーブで開催予定のブロードウェイミュージカルの名作中の名作「ピピン」日本公演の単独主演、2023年には、ミュージカル『SPY×FAMILY』で主演のロイド役を務めるなど活躍中。
2020年、アジアから世界に発信するエンターテイナー“MORISAKI WIN”として7月1日に「パレード - PARADE」でメジャーデビュー。「パレード - PARADE」はスズキソリオバンディットCMソングに起用され、音楽配信チャート1位を獲得するなど話題に。5月26日には、1stアルバム「Flight」をリリースし、5つの音楽配信サービスで1位を獲得。2022年には、世界を意識した海外作家を起用したシングルのリリースを重ねる中、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の主題歌も担当し、アーティストとしても幅広い活躍を魅せる。
また、2018年より母国ミャンマーで観光大使を務め、現地でもドラマの主演やCMに数多く出演し圧倒的な知名度を誇る。
撮影/映美、文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/KEIKO、スタイリング/内田あゆみ、衣装協力/コート¥88,000- CULLNI 、ニット¥55,000- LUFON(共にSian PR TEL:03-6662-5525)、シャツ¥39,600-、パンツ¥48,400-(共にSTEAF TEL:03-6721-0549)、靴¥194,700- Alden(株式会社 ラコタTEL:03-3545-3322)、メガネ¥37,400- OWDEN (オプティカルテーラークレイドルTEL:03-6418-0577)
※全て税込価格