森崎ウィン Aiming To Overseas
映画『まる』で得たもの 綾野剛さんとの再会
月2回連載
第131回
こんにちは。森崎ウィンです。
もうすぐ映画『まる』が公開されます。堂本剛さんのことについては、今度、ぴあで剛さんとの対談記事が出るので、そこをぜひチェックしていただくとして、ここではうれしかった『まる』での再会について話させてください。
それが、綾野剛さん。綾野さんとは以前、『ハゲタカ』というドラマでご一緒させてもらって。それ以来だから、5〜6年ぶりになるのかな。綾野さんのほうから、「ウィンくん、すごい活躍だね」と声をかけてくれて。僕のことを覚えていてくれただけでもうれしいのに、綾野さんにそう言ってもらえて、めちゃくちゃテンションが上がりました。
綾野さんと一緒のシーンはそんなになくて。だから、綾野さんのお芝居に関してはほとんど僕も初号が初見だったんですけど、あの人は本当にすごい! びっくりしました。何て言うんだろう。役の感情が台詞以外のいろんなところからにじみ出てるんだよね。だから、綾野さんがスクリーンに映るだけで惹き込まれる。
実は撮影前に1回、剛さんと綾野さんと僕で本読みをさせてもらったんですよ。そのとき、綾野さんは「まだ本読みなので、お手柔らかにお願いします」ということを監督におっしゃっていたんだけど、いやいやもうそのときからすごかった。もちろんご本人の中では抜いてやってらっしゃるところがあると思うんですけど、本読みなのに伝わってくるものがあって圧倒されましたね。今回、綾野さんのお芝居に改めて惚れました。
以前共演させてもらったときから、とにかく現場を引っ張っていく熱量のある方でしたけど、数年ぶりにお会いするとまたちょっと印象が違って。年下の僕が言うのもおこがましいですが、すごく雰囲気が柔らかくなられたんですよね。そんな綾野さんも素敵で、きっとそれは綾野さんがこの数年の間にいろんな経験をされたからだと思うし、その経験がお芝居ににじみ出ている。
やっぱり俳優って演じる人の生き様が乗るものだと思うし、綾野さんのお芝居にこんなにも心を動かされるのは、綾野さんが人生の中で培ったものが全部乗っているからなんだろうなって。僕にとって、やっぱり俳優はこうでなきゃなという理想が見えたというか、本当に刺激になる再会でした。
僕の演じるモーは、ミャンマー出身のコンビニ店員です。日本で頑張って働いているんだけど、時々、外国人であることが理由で理不尽な差別に遭うこともあって……という役どころ。絶対に僕にしかできない役だと思うし、そんな役をいただけたことが本当にありがたいなと思いました。
荻上(直子)監督とは初めまして。この言い方が合ってるかわかりませんが、とっても可愛い方でした。もちろん監督として現場を引っ張っていく芯の強さを持っていらっしゃるんですけど、なんて言ったらいいのかな、現場でのちょっとした動きとかがとても魅力的で愛らしいんですよ。一緒にお仕事をしていて、心がほっこりする方でした。
それでいて、自分の大切にしたいことは譲らないポリシーを持っていて。でも、単に我を通すんじゃなく、やりたいことをきちんと説明してくださるし、俳優側の意見を聞く器の余裕もある。僕たち俳優の良さを引き出してくださる監督だなと思いました。
僕の注目シーンはクライマックス。モーが「やってらんないです」というようなことを言うんですよ。そこがシーンとしてもすごく良かったし、あとで見たら我ながらこんな表情してたんだと思えるものになっていて。たぶんそれはモーの気持ちと僕自身がリンクしたからだと思うんです。
以前、深田(晃司)監督が「映画はキャスティングで8割決まる」ということをおっしゃっていて。というのも、さっき言った通りお芝居ってその人がどう生きてきたかが乗ってくるものだから。もちろん自分とは違う人間を演じるんだけど、表現するのはその人自身。その人の持っている感情とかこれまでの経験を利用する部分があって。だからこそ、誰が演じるかが重要になってくるんです。
モーの最後の台詞も、テストでは監督に言われて別のパターンもトライはしていて。そっちはもっと明るい感じだったんだけど、荻上監督からも「やっぱり最初にやったほうがいいね」ということで、本番では僕が初めにやったほうが採用されました。
あのお芝居は森崎ウィンだからできたものだと思うし、そういう意味では僕もちょっとは生き様というものをお芝居に出せるようになってきているのかな、とうれしくなりました。
映画『まる』は10月18日より公開です。ぜひ劇場でご覧ください!
森崎ウィンでした!
★編集部より★
森崎ウィンさんファンクラブのほうでは、今週はダイアリーを更新!
プロフィール
森崎ウィン
1990年生まれ。ミャンマーで生まれ育ち、小学校4年生の時に来日、その後中学2年生の時にスカウトされ、芸能活動を開始。
2008年にダンスボーカルユニットに加入し、メインボーカルを担当。俳優としても様々な役を演じ活躍する中で、2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の新作「レディ・プレイヤー1」で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビューを果たす。その後も数多くの映画やドラマに出演し、2020年に映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞。主演を務めた連続ドラマ『本気のしるし』では釜山国際映画祭2021のASIA CONTENTS AWARDSにてBest Newcomer-Actor賞を受賞。その劇場版は第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection2020」作品に選出。
また、ミュージカルの世界でも映画版『キャッツ』(20年日本公開)ではミストフェリーズ役の吹替えを担当。20年ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で主演トニー役、21年ミュージカル『ジェイミー』(21年)で主演ジェイミー役を務めたほか、2022年に東急シアターオーブで開催予定のブロードウェイミュージカルの名作中の名作「ピピン」日本公演の単独主演、2023年には、ミュージカル『SPY×FAMILY』で主演のロイド役を務めるなど活躍中。
2020年、アジアから世界に発信するエンターテイナー“MORISAKI WIN”として7月1日に「パレード - PARADE」でメジャーデビュー。「パレード - PARADE」はスズキソリオバンディットCMソングに起用され、音楽配信チャート1位を獲得するなど話題に。5月26日には、1stアルバム「Flight」をリリースし、5つの音楽配信サービスで1位を獲得。2022年には、世界を意識した海外作家を起用したシングルのリリースを重ねる中、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の主題歌も担当し、アーティストとしても幅広い活躍を魅せる。
また、2018年より母国ミャンマーで観光大使を務め、現地でもドラマの主演やCMに数多く出演し圧倒的な知名度を誇る。
撮影/友野雄、文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/KEIKO、スタイリング/岩田友裕、衣装協力/DAMAGE DONE DAMAGE DONE 2nd、GODSIZE