森崎ウィン Aiming To Overseas

人に何かを教えるって難しい 人にアドバイスするとき気を付けていることを教えてほしいです

月2回連載

第149回

こんにちは。森崎ウィンです。

ミュージカル『SPY×FAMILY』東京公演も無事に2週目を迎えました。連日、たくさんのお客様に楽しんでいただけて、舞台上にいる僕たちも幸せな気持ちをいっぱいもらっています。

今回、開幕直前にロイド役に木内健人くんを迎えることになって。ファンのみなさまにはご心配をおかけしましたが、木内くんの頑張りもあって、無事に公演を続けられていることを、カンパニーの一員としてうれしく思っています。

僕はカンパニーって言葉がすごく好きなんです。みんなで一緒に一つの作品をつくる仲間。だからもしカンパニーで困っていることが起きたら、自分にできることがあれば力を貸したい。今回の一件で、改めてその気持ちが強くなりましたね。

僕本来の性格で言うと、自分が人に何かを教えるなんておこがましいと思うタイプ。だから、向こうからアドバイスを求められない限り、後輩とかと一緒にいても、自分から「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」と口を出すことってないんです。

ただ、今回に関してはシンプルに時間がなかったというのもあって、ロイド役として僕が知っていることはできる限り木内くんに共有したいなって、そんな気持ちで彼と関わらせてもらいました。と言っても、役づくりとか内面の部分にどうアプローチするかは俳優それぞれで違って、そこは木内くんのもの。同じ役を演じるからと言って、僕がそこにアドバイスするのは違うし、僕が何か言うことで彼のやり方を固定化させてもいけない。だから伝えたのは、もっと技術的な、いわゆるミザンスの部分についてですね。

ミュージカルって音楽や照明のきっかけに合わせて動かないといけない場面が結構あって。それって、ちょっとしたコツを掴んでおくと、そのきっかけに合わせて自分の中で気持ちをつくったり準備したりできる。ただ、そのコツを掴むまでに時間がかかって、本来であればそのために稽古というものがあるんだけど、今回はその余裕がなかった。だから、そこをショートカットできるよう、「ここはちょっと巻いて台詞を言ったほうが、あとあと余裕が生まれます」とか、「ここであえてこの音を聞いてください」とか、初演からやってきた僕なりのコツを木内くんに伝えさせてもらいました。

決して僕も自分のロイドが完璧だなんて思っているわけではないんだけどね。まだまだやるたびに新しい発見があるし、もっと高みを目指したい。たとえば、声の出し方なんかももっと深みのあるものにしたいなと思って、今回の再演ではそこにアプローチしていたりして。思い描くロイド像は、まだまだ遥か先にある。だから、毎公演、一生懸命全力を尽くすだけ。全然、余裕なんてないです。

だけど、そういうこととは別に、もし自分が力になれるところがあるなら、手を貸していくことも必要なんじゃないか。そういう年齢になってきたし、そういう立場になってきたんだなと感じる場面が、今回の『SPY×FAMILY』に限らず、少しずつ増えてきた気がします。ただ、こういう性格のせいかな。たとえ相手が年下や後輩であったとしても、上から何か言ってるというふうには受け取られたくなくて。人に何か伝えるときは、そこにすごく気を遣います。

僕が意識していることは、もし誰かにアドバイスをするとしても、一方的に「こうしたほうがいいよ」と言うんじゃなくて、「一緒にこうしてみよう」という言い方をすること。一緒に試行錯誤して、一緒にトライして、で、演出家さんが違うと言ったら、また一緒に次の方法を考える。相手と目線を揃えることを大事にしています。

お芝居は特にそうだけど、舞台の上に立ったら年齢やキャリアが上も下も関係ない。みんな対等なんです。だから、僕も対等に接する。自分の年齢が上がってきたからこそ、自分の意図していないところで上下が生まれないように気をつけています。

人に教えたり伝えたりするのって難しいよね。でも、もし自分の持っているものを共有することで、その場がうまく回るなら、「自分は言える立場じゃないですから」と謙遜するんじゃなくて、積極的にシェアすることも大事だと思う。CREWのみんなも、職場だったり、いろんなコミュニティに身を置く中で、人にアドバイスする機会があると思うんだけど、どうしていますか。みんなの気をつけていることを教えてください。

森崎ウィンでした!

★編集部より★
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プロフィール

森崎ウィン

1990年生まれ。ミャンマーで生まれ育ち、小学校4年生の時に来日、その後中学2年生の時にスカウトされ、芸能活動を開始。
2008年にダンスボーカルユニットに加入し、メインボーカルを担当。俳優としても様々な役を演じ活躍する中で、2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の新作「レディ・プレイヤー1」で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビューを果たす。その後も数多くの映画やドラマに出演し、2020年に映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞。主演を務めた連続ドラマ『本気のしるし』では釜山国際映画祭2021のASIA CONTENTS AWARDSにてBest Newcomer-Actor賞を受賞。その劇場版は第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection2020」作品に選出。
また、ミュージカルの世界でも映画版『キャッツ』(20年日本公開)ではミストフェリーズ役の吹替えを担当。20年ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で主演トニー役、21年ミュージカル『ジェイミー』(21年)で主演ジェイミー役を務めたほか、2022年に東急シアターオーブで開催予定のブロードウェイミュージカルの名作中の名作「ピピン」日本公演の単独主演、2023年には、ミュージカル『SPY×FAMILY』で主演のロイド役を務めるなど活躍中。
2020年、アジアから世界に発信するエンターテイナー“MORISAKI WIN”として7月1日に「パレード - PARADE」でメジャーデビュー。「パレード - PARADE」はスズキソリオバンディットCMソングに起用され、音楽配信チャート1位を獲得するなど話題に。5月26日には、1stアルバム「Flight」をリリースし、5つの音楽配信サービスで1位を獲得。2022年には、世界を意識した海外作家を起用したシングルのリリースを重ねる中、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の主題歌も担当し、アーティストとしても幅広い活躍を魅せる。
また、2018年より母国ミャンマーで観光大使を務め、現地でもドラマの主演やCMに数多く出演し圧倒的な知名度を誇る。

撮影/米玉利朋子、文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/高美希、スタイリング/岩田友裕、衣装協力/GARNI