映画パーソナリティーであり心理カウンセラーでもある伊藤さとりさんによる心理テストです
【問題】
目の前に新地が広がっています。
あなたはそこで皆の為に、最初に野菜の種を蒔くよう命じられています。さて、この中から何を選びますか?
このテストで分かるのは、第一印象をどう見られたいかの心理テストです。アナタのイメージを花に例えて説明します。
Aを選んだアナタは
“ハイビスカス”
真っ赤で瑞々しい味わいの人気の野菜“トマト”を選んだアナタ。アナタは第一印象で明るい人に見られたいと思っています。まさに“ハイビスカス”のような笑顔の持ち主。皆に自分との時間を楽しんで欲しいという思いも強い人です。その為、普段以上に頑張ってしまうところあり。人が多ければ多い分、笑顔でいようとするので気疲れしてしまうことも。時にはひとりでリフレッシュの時間を。
そんなアナタにおすすめの映画はアニメーション映画『ふれる。』。島の伝説の生き物と出会った幼なじみの3人組。その生き物がそばにいれば、話さずとも気持ちが通じ合える環境に変化。話し合うことの大切さをウルウルと実感するはず。
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Bを選んだアナタは
“カスミソウ”
緑色で細長く、どんな食べ物にも合う野菜“きゅうり”を選んだアナタ。アナタは第一印象で目立たちたくないと思っています。まさに“カスミソウ”のようなふんわり存在するのが心地良いと思っている人。人付き合いもほどほどが良く、グループの中心になるのを嫌います。謙虚である分、目立ちたがり屋やうるさい人も苦手。マイペースに生きるのが心の平穏のよう。時々、自然の中で深呼吸を。
そんなアナタにおすすめの映画は『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』。あのジョーカーの前に突如現れた女性。ホアキン・フェニックスとレディー・ガガの共演に歓喜しながら演技力と世界観に没入。しばらく脳裏から離れずアナタを刺激します。
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Cを選んだアナタは
“ひまわり”
黄色い身がぎっしりと詰まった美味しい野菜“とうもろこし”を選んだアナタ。アナタは第一印象で誠実に見られたいと思っています。まさに“ひまわり”のような真っ直ぐさとおおらかさを持った人。人のために頑張ることを怠らないガッツと、周囲を取りまとめることも得意なアナタは、イベント企画も得意のよう。気づくとグループの中心になっていることも。時には自分へのご褒美に旅行を。
そんなアナタにおすすめの映画は堂本剛主演、荻上直子監督作『まる』。人気美術家のアシスタントを務めていた男がさらりと書いたアートによって突如、天才芸術家扱いを受ける物語。人の為ばかりではなく、自分の才能を信じてトライして。
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Dを選んだアナタは
“薔薇”
カラフルな存在感で目にも美味しい野菜“パプリカ”を選んだアナタ。アナタは第一印象で忘れられない人になりたいと思っています。まさに“薔薇”のような華やかさと香りを持つ個性的な人です。独自のセンスを持つアーティストタイプと言えます。アナタの発想や発言は人に刺激を与えるので、きっとファンも多いことでしょう。思い立ったら行動を。すると面白いものが生まれるかも。
そんなアナタにおすすめの映画は井浦新主演、甲斐さやか監督作『徒花-ADABANA-』。謎のウィルスによる人口激減で“それ”を生み出すことで延命治療を行う世界を舞台に、命の尊厳を問うファンタジー。デザインセンスに感性も刺激されるはず。
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伊藤さとりの今月のオススメ心理映画
優生思想の恐ろしさを感じた『徒花-ADABANA-』
未来を予知したかのような衝撃の内容
“徒花”とは、咲いても実を結ばずに散ってしまう花のことを言います。言ってしまえば、“むだ花”だということ。今作は『赤い雪』(2019)で鮮烈な長編映画デビューを果たした甲斐さやか監督による、前作同様オリジナル脚本であり、構想20年以上に及ぶ作品で、まさに未来を予知したかのような謎のウィルス蔓延で人口激減、その施策案は“それ”を保有し、延命治療時に使用することという衝撃の内容でした。
今や少子高齢化で人口減少中の日本。しかも新型コロナウィルスによるパンデミックも起こってしまった現代。ここまで現実と類似する状況下で、あとは“それ”の実験が成功すればよもや映画の世界が現実になるのでは。ただし皮肉にも映画では上流階級のみが“それ”を保有できるというのもあり得る話なのです。
甲斐さやか監督がこの物語を思いついたきっかけは1996年に誕生した“羊のドリー”のニュースだったそう。しかも物語を思いついた頃からすでに映像が頭に浮かんでいて、ガラス越しに手を合わせるふたりの人物の姿だったとのこと。これが劇中の井浦新さんのあるシーンになっています。
“命”の価値についてじっくりと想像を巡らせる作品
それでも本作は、現代の問題を鬼気迫る映像と編集でスリリングに見せるのではなく、あくまで映画的な映像美で表現することで、近未来の日本を見つめているような不思議な感覚にとらわれるのです。それは洗練された衣装から、無機質な部屋の中にある生命を意味する花、秘密の森のようなロケーションと細部のこだわりによるもの。だからSF的であり、ヨーロッパ映画のようにも思える現代アート映画であり、“命”の価値についてじっくりと想像を巡らせる作品として構築されています。
そんな本作の主演である井浦新さんは、『赤い雪』で甲斐さやか監督と仕事をしてすぐに次回作への出演を切望。結果、今回、主演として物語の軸になっています。しかも彼だけでなくフランスのスタッフも甲斐さやか監督の才能を絶賛し、日仏合作となった映画『徒花-ADABANA-』。このタイトルが意味する“むだ花”のような人間は果たしてこの世に存在するのか。劇中では上流階級として描かれていますが、これはもしかすると優生思想の危険性を唱えている作品なのかもしれない。私にはそう思えてならないのです。
『徒花-ADABANA-』
10月18日(金)公開
(C)2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ
プロフィール
伊藤さとり(映画パーソナリティ/映画評論家)
映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介の他、映画評論家として映画レビューを執筆。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。TSUTAYA映画DJを25年務めた。
「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)にて映画解説レギュラー。「ぴあ」、「otocoto」、「GLOW」他で映画コラム、「伊藤さとりのシネマの世界(東映チャンネル)」、「新・伊藤さとりと映画な仲間たち(Youtube)」俳優対談&監督対談番組。心理カウンセラー活動から映画心理本も出版、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。日刊スポーツ映画大賞&石原裕次郎賞、日本映画批評家大賞、日本映画プロフェッショナル大賞、女性記者&ライター映画賞などの審査員も→→公式HP