川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』
四度目の映画化『若草物語』の話から…女性が大事な髪を切ること…最後は『ローマの休日』のオードリー・ヘプバーンにつながりました。
隔週連載
第47回
近く公開されるアメリカ映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』が素晴らしい。ルイザ・メイ・オルコットの『若草物語』のトーキーになって四度目の映画化になる。
監督は女優として『フランシス・ハ』(2012年)に主演し、監督として『レディ・バード』(2017年)を手がけた、いまもっとも輝いている女性グレタ・ガーウィグ。
四人姉妹のそれぞれの生き方を追っているが、中心になるのは『レディ・バード』のシアーシャ・ローナン演じる次女のジョー。作者のオルコット自身が投影されている。
時代は南北戦争が戦われていた19世紀のなかば、女性が職業に就くことなど考えられなかった時代。メリル・ストリープ演じる四人姉妹の伯母は、現実をよく知っているから「女が働く場所なんて、売春宿の主人か女優しかない」と皮肉っぽく言う。だから四姉妹が、金持の男性と結婚することを望んでいる。
そんな時代にあって、ジョーは作家になるという夢を持ち、最後それを実現する。
ピーター・ラビットの生みの親、ビアトリクス・ポターをレニー・ゼルウィガーが演じた『ミス・ポター』(2006年)や、昨年公開された、『長くつ下のピッピ』などで知られるスウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーンの若き日を描いた『リンドグレーン』(2018年)に通じるものがある。
女性が社会に出て働くことさえ難しかった時代に、作家を志す。『ミス・ポター』には、ポターがはじめての自分の作品『ピーター・ラビット』が書店のウィンドウに飾られるのをみて、うれしそうに微笑むいい場面があったが、『ストーリー・オブ・マイライフ』でも、シアーシャ・ローナン演じるジョーが、印刷屋で自分の最初の本が印刷され、製本されてゆくのを、やはりうれしそうに見る場面が心に残る。
作家になるのが夢だった者には、はじめて自分の本が出来るのを見るのは大きな喜びになる。