池上彰の 映画で世界がわかる!
『デンジャー・クロース 極限着弾』─ オーストラリア軍が参戦したベトナム戦争の“知られざる激戦”
毎月連載
第23回

タイトルの『デンジャー・クロース』には“極限着弾”という和訳の副題がついています。戦場では、味方の砲兵部隊が敵軍に向かって砲撃をしますが、敵味方が接近して戦闘になると、味方への被害を恐れて砲撃ができなくなります。
しかし、敵軍に応戦するだけの武器弾薬が尽きたとき、味方にも砲弾が届く危険性のある至近距離への砲撃を敢えてすることがあります。これが“デンジャー・クロース”つまり“危険な近距離”という意味です。こんな危険な砲撃に踏み切らなければならないほどの激戦だったというわけです。
この映画は、1966年8月、南ベトナムで、南ベトナム民族解放戦線や北ベトナム軍の攻撃を受けて応戦したオーストラリア軍兵士の物語です。
ベトナム戦争にアメリカ軍が参戦したことは知られていますが、オーストラリア軍やニュージーランド軍、さらに韓国軍も加わっていたことは、意外に知られていません。これは事実に基づいて制作された映画です。
南北に分断されていたベトナム
この映画を理解するために、当時の国際情勢をおさらいしておきましょう。
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