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『ウォーフェア 戦地最前線』──最強ネイビーシールズが直面した本物の戦場のリアル

毎月連載

第91回

『ウォーフェア 戦地最前線』

本物の戦場とはどんなものか。2006年11月、イラクのラマディで戦闘中の米軍海兵隊を支援するため、海軍特殊部隊の「ネイビーシールズ」の「アルファ-1小隊」の8人が送り込まれますが……。

任務のためとはいえ、米軍の小隊は、深夜にイラク人の民家に侵入。怯える家族を1か所に集めて住宅を占拠。狙撃チームが2階で向かいの住宅に潜んでいるであろう武装勢力の動向を探ることになります。

『ウォーフェア 戦地最前線』

やがて周辺は異様な緊張に包まれます。道路にいた住民たちは一斉に姿を消し、一般人の恰好をした男たちが機関砲を持ち出します。狙撃チームは、敵の武装勢力に見つかってしまったのです。

突如、2階に外から手榴弾が投げ込まれ、負傷者が出てしまいます。負傷者の搬送を依頼してブラッドレー戦闘車が救出にやってきますが、これも爆破され、隊員2名が重傷を負います。万事休す。早く救出しなければならないのですが、周辺では他の米軍部隊も激しい戦闘に巻き込まれていて、なかなか救援がやってきません。

『ウォーフェア 戦地最前線』

この映画は、実際に戦闘に参加した元隊員の記憶に基づいて再現されました。それだけにリアルなこと。通常の映画だと、「敵」の武装勢力は米軍の狙撃によって、次々に倒れていく……というのがお約束ですが、実際の戦場では敵の姿が見えないまま容赦なく銃弾が撃ち込まれます。その恐怖たるや、これが本物の戦場だとわかるでしょう。

海軍の「シールズ」といえば、アメリカ同時多発テロの指導者オサマ・ビンラディンがパキスタンの住宅に潜んでいるところを攻撃して、ビンラディンを殺害した部隊として知られています。

それほどの歴戦の勇者である部隊であっても、負傷すれば泣き叫ぶし、激しい戦闘の中で我を忘れてしまう隊員たち。

『ウォーフェア 戦地最前線』

激しい戦闘で、民家は滅茶苦茶に破壊されてしまいます。米軍は、イラクでこういうことをしてきたのだということがわかります。これでは、米軍がいくら「テロとの戦い」と言っても、実際には新たな“テロリスト”を生み出してしまっていることがわかります。

戦争の実情を知らない者ほど勇ましいことを言うもの。戦争経験者は安易に勇ましいことを言わないものだということが、この映画でわかります。

『ウォーフェア 戦地最前線』

『ウォーフェア 戦地最前線』
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『ウォーフェア 戦地最前線』

『ウォーフェア 戦地最前線』
脚本・監督:アレックス・ガーランド、レイ・メンドーサ
キャスト:ディファラオ・ウン=ア=タイ、ウィル・ポールター、ジョセフ・クイン、コズモ・ジャーヴィス、チャールズ・メルトン
 
1月16日 (金) TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開

プロフィール

池上 彰(いけがみ・あきら)

1950年長野県生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者やキャスターをへて、2005年に退職。以後、フリーランスのジャーナリストとして各種メディアで活躍するほか、東京科学大学などの大学教授を歴任。著書は『伝える力』『世界を変えた10冊の本』など多数。