山本益博の ずばり、この落語!
お気に入りの落語、その二十三『粗忽長屋』──行き倒れを弟分の熊だと思い込み、その熊に知らせる粗忽な八五郎
毎月連載
第49回
(イラストレーション:高松啓二)
立川談志が書いた本のなかで、私のお気に入りの1冊に『新釈落語咄』(1995年中央公論刊)がある。題名にあるように、落語の名作に新解釈をくわえた談志のユニークな落語論である。この第1回目に取り上げられているのが『粗忽長屋』で、ちなみに第2回は『欠伸指南』。この二つの噺が落語の中の落語と言え、双璧だと断じている。つまり、もっとも落語的、いや、落語でしか表現できない内容を持っているということらしい。