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伊勢正三 メロディーは海風に乗って

灰色の青春

全13回

第3回

僕が進学したのは、地元の津久見高校ではなく大分舞鶴高校だった。家から通うには遠かったので寮に入ることになった。一人っ子で、比較的ぬくぬく育てられてきた僕は、いきなり親元を離れて誰も知らない土地で暮らすということが嫌で嫌でたまらなかった。母としては、そんな僕がこのままではダメになると思って、かわいい子には旅をさせろ、ではないけれど、思い切って遠くにある高校に行かせたのだと後々言っていた。

正直に言うと、高校時代にはあまりこれと言って楽しい思い出はない。ただ、僕の入った音楽部の3年生に南こうせつさんがいて、彼と僕の同級生で男3人のフォークグループを組んで少し活動したというのが唯一と言ってもいいくらいの思い出だ。

音楽部と言っても、いわゆる軽音楽部ではない。合唱部だ。しかも、入りたくて入ったというわけではなかった。入学式の日に部活動の勧誘で応援団に入れられそうになったのだ。いきなり部室に連れ込まれて白い手袋を渡されて……。これはマズい! それで慌てて、直前に勧誘されていた音楽部に逃げ込んだというわけ。

撮影:吉田圭子

けれど、音楽部に誘われたときは、とんでもない、自分にはまったく向いていない部活だと即座に断っていた。選択科目でも音楽ではなく美術を選んでいたし、中学のころにはウクレレでは物足りなくなってギターを弾いてはいたのだが、合唱なんてやりたいとも思わなかった。とは言え、応援団よりはまし。仕方がないから放課後に音楽部の部室に行ったら、そこにクリクリ坊主頭に黒縁メガネの部長がいて、その人がとんでもなく歌がうまい。それが南こうせつさんだった。率先して部員が歌うのを指揮したり、そのころからこうせつさんはこうせつさんだった。

冒頭に触れたフォークグループのきっかけももちろんこうせつさんだ。音楽部の練習が一通り終わると、こうせつさんがギターを弾き始める。

「誰か一緒に弾けるやついるか?」

「コード3つくらいなら押さえられます」

そんな感じで自然発生的に始まった。とは言え、注目されるのはキャンプファイヤーのときくらいだったけど。一度、ヤマハの主催するコンテストに出場しようというので、学校に許可を申し込んだら、そこはとにかくお堅い進学校、出てもいいけど制服で、という条件を突きつけられた。まさかそんな格好悪いことできるわけがない。制服でのこのこ出かけたりしたら、まわりのやつらに馬鹿にされるのがオチだ。そこでこうせつさんが交渉して、ポロシャツであればOKというところまで譲歩を引き出すことができた。

学生時代

そのグループではオリジナルも何曲かやってはいた。けれどまさか僕自身が音楽の道に進もうなんてことはこれっぽっちも考えなかった。こうせつさんは段違いに歌がうまかったから、この人はいずれプロになるんだろうと自他ともにそう思っていたら、案の定そうなった。僕は高校卒業後、大学進学を目指して福岡の予備校に行くことになった。

その予備校でも寮住まいだったわけだが、体育館みたいながらんとした広い空間に二段ベッドがずらーっと並んでいるようなところで、おまけに福岡市内の繁華街からはかなり遠い場所にあった。それでも月に一回ほど博多に出て、地元で活動していたチューリップの前身バンドのザ・フォーシンガーズや、当時はまだかなりパンクで硬派だった海援隊など、貴重なライブを肌で体感することができた。

寮にギターも持ち込んでいたので、時々予備校の仲間たちと海へ行ってギターを弾きながら一緒に歌ったりしていた。そんなことくらいしか生きている実感も湧かなかった。予備校に行ってますます勉強が嫌いになったし、この先どうしようか……どんどん悲観的になっていった。

そんなときだった。こうせつさんから連絡があったのは──。

予備校~大学生頃

取材・構成:谷岡正浩

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ライブ情報

『なごり雪』50周年スペシャル 伊勢正三&イルカ コンサート
【日程】
5月18日(土)神奈川・茅ヶ崎市民文化会館
5月26日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
6月2日(日)埼玉・サンシティ越谷市民ホール
6月7日(金)神奈川・相模女子大学グリーンホール
6月9日(日)兵庫・アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)大ホール
6月15日(土)宮城・仙台銀行ホール(イズミティ21)大ホール
6月23日(日)鹿児島・川商ホール(鹿児島市民文化ホール 第1ホール)
7月6日(土)奈良・なら100年会館
7月13日(土)佐賀・鳥栖市⺠文化会館
7月15日(月・祝)沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
7月21日(日)愛知・Niterra日本特殊陶業市⺠会館フォレストホール
7月28日(日)山口・KDDI維新ホール
料金:9,000円

★ぴあアプリ先行
3月3日(日)23:59まで実施中
対象会場:LINE CUBE SHIBUYA、サンシティ越谷市民ホール、相模女子大学グリーンホール

プロフィール

伊勢正三(イセショウゾウ)
1951年大分県津久見市生まれ。シンガーソングライター&ギタリスト
「かぐや姫」「風」という70年代を代表する両スーパーグループで一時代を築く。
80年にはソロとして、武道館コンサート等も成功させるが、その後、表立った活動は控えるようになる。
93年本格的に再始動。かつて8枚のアルバムでチャート1位を記録したその楽曲は、様々なアーティストにカバーされ、時を経た今もなお多くの支持を受けている。
現在はソロのLIVE、他のアーティストとのコラボレーション、コンサートプロデュース等、幅広く活動している。

■公式サイト:https://www.ise-shozo.com/