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泉谷しげる/今日ですべてが始まるさ

フォーライフと若者文化、俺の理想の果て

全10回予定

第4回

撮影:小境勝巳

もう完全に引退。さ、これからどうしよっかなって本気でそう思ってたんだよ。

そんで、アメリカに行ってたんだよな。そこでまずはマネージャーに電話がかかってきたんだったかな。その後に吉田拓郎から直接俺に連絡をもらうんだけどさ、「え!」って感じだよ。絶句。なんの冗談だよって思った。

当時(1975年)はセンセーショナルだったんだろうね、フォーライフ・レコードの設立ってのは。だってアーティストが集まって旗振ってよ、しかも井上陽水は100万枚売ってるわけだし、拓郎だってそれくらい売ってるし、まあ俺は10万枚くらいがせいぜいだったけど、そこに小室等さんが加わって。まだみんな20代かそこらだろう? その頃の業界を敵に回しちゃってるようなもんだもんな。

フォーライフ記者会見

たださ、俺が拓郎の誘いに乗ったのは、レコードを100万枚売るとか、会社をでっかくするとか、そういうことでは全然なくて。有名無名も通り越した若者文化を若者自身の手で作れたらいいなって思ったんだ。でもよー、そんなの今も昔も関係なくてさ。誰だってそう思うんじゃない? だって今の若者だってそうだろ? ジジイの敷いたレールの上なんて歩きたかねーやな。

フォーライフ記者会見

そりゃあね、売れたほうがいいさ。有名になったほうがいいかもしんないさ。けど、それだけが目的になっちゃつまらないだろう。結局はさ、いい作品を作るか作らないか。そこしかないじゃんか、だって。俺はさ、芸術そのもの、エンタメそのものが好きなんであってだな、俺の方がお前より売れてるぞ、なんて価値観で動かされはしないんだ。嫌いだよ、はっきり言って、そういうのはさ。

応援したげなきゃ。特に若いやつらなんてさ、何がきっかけで、どこで化けるかわかんないんだから。その才能そのものを見てあげないと。そういうことをできるんじゃないか、そう思って俺はフォーライフに賛同したんだ。だから俺が言ってたのは、とにかくスタジオを作れコノやろー! ってことだけ。レコーディングで一番金のかかるのはスタジオ代なんだから。スタジオがあったら金のない若いやつらでも好きなだけ使えるし、何よりいい作品を作って世に出すこと。それしかないよ。

フォーライフで出した『家族』(1976年)というアルバムは、そういう思い――要するにいい作品を作らなきゃと思って、ひとりになって制作した作品だった。俺自身の音楽ってものを突き詰めていこうとしたんだな。そうすっとさ、やっぱ男なんだよ。拓郎や陽水には女性のファンがガッチリいるけど、うちはとにかく男だったんだよな。だから男を興奮させるものを俺の役割として作ろうと。理想的なのは、はっぴいえんど。とにかく誰になんと言われようと職人的にいい作品を作る。憧れたね。後々、松本隆さんなんかは仲良くしてくれたけど、あんまし口は聞いてくんなかった(笑)。こっちはこんなに好きなのに。俺が好きになった人ってあんまし口聞いてくんないんだよな。

『家族』(1976年)

それともうひとつ、俺の表現ってのは、いったい何だろうって考えたらさ、単なる音楽じゃないんだよってことに気づかされた。出来事か事故か事件(笑)。つまんないじゃん、ただ音楽やってもさ。もちろん最初からハプニングを目的とするわけじゃないんだけど、真っ当に歌ってそれが事故になるってのが理想的なんで。例えば、はっぴいえんどの演奏っていうのは、ノンサービスなんだよ。客に媚びることもしないし、何か派手なパフォーマンスがあるわけでもない。だけど、カッコいいんだよな。ただただ演奏がものすげえっていうことが事件なんだ。あれはだからロック絵画だよ。忌野さんもそう。あんな声……。

とか言っておきながら、次のアルバム『光石の巨人』(1977年)では、“ダイナマイトポップス”とか言い出して、当時流行り出してたテクノなんかの要素を入れたり、パッパラパーなものを作っちゃったりするんだけど。飽き性なんだな、単純に(笑)。

『光石の巨人』(1977年)

だってさ、俺はそんなに才能があるわけじゃないんだよ。毎回出し切るんだから。カサカサなんだよ。また新しいの作ってくれて言われるのが何より恐怖なんだから。できない! そんなもん正直言ってできるか!(笑)。だけど俺はさ、やり続けるんだ。カスカスになってボロクソ言われてもさ。最近よく言うんだけど、ライブハウスなんかでやってると「いつまでも歌ってくれ」ってお前ら言うけど、いいんだな? って。歯が抜けて、ボロボロで、ギターのストロークも空振っちゃう俺でもいいんだな? よーしわかった。じゃあやってやるよ。情けねえ姿をお見舞いしてやるよ。

取材・構成:谷岡正浩 撮影:小境勝巳

リリース情報

ニュー・アルバム
『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

発売中
3,300円(税込)

『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

【収録曲】
1.怪物
2.世代
3.Y染色体のうた
4.つなひき
5.春のからっ風
6.イメージの詩
7,国旗はためく下に
8.翼なき野郎ども
9.たった一人の熱き想い

「怪物」MV

公演情報

『泉谷しげる全力ライブ 3時間スペシャル!』
3月22日(土) 京都・磔磔
開場16:00/開演17:00
出演:泉谷しげる、藤沼伸一、板谷達也
料金:前売8,000円/当日8,500円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!広島』
3月28日(金) 広島・SECOND CRUTCH
開場18:30/開演19:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!松山』
3月29日(土) 愛媛・松山KITTYHALL
開場17:00/開演18:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ソロライブ90分!秩父』
4月5日(土) 埼玉・秩父 ホンキートンク
開場17:30/開演18:00
料金:前売6,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!宇都宮』
4月13日(日)栃木・宇都宮 HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA
開場17:15/開演18:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

■公式サイト:https://studio-izu.com/

★泉谷しげるさんのサイン入りチェキを3名様にプレゼント!

【応募方法】
①ぴあ音楽編集部のInstagram(music__pia)フォロワー限定。
②該当投稿のコメント欄にお好きな絵文字をお送りください。

【応募締め切り】
2025年3月12日(水) 23:59まで

【注意事項】
※当選者の方には3月17日(月) 以降、InstagramアカウントよりDMにてご連絡いたします。発送先等の情報を頂くために、問合せメールをご連絡します。ご自身のメールアドレスや住所などの個人情報をDMに記載しないようにご注意ください。
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