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泉谷しげる/今日ですべてが始まるさ

薄汚れた都会の窓に映る野郎どもの歌

全10回予定

第5回

撮影:小境勝巳

フォーライフをやめて、そんでもってフォークの敵になっちゃったからさ。それならっていうので作ったのが『'80のバラッド』(1978年)っていうアルバム。つまりロックへの変貌みたいなことをやってやろうかっていうことではあったんだけど、ただそれは俺が15、16歳の頃に見よう見真似でやってたエレキバンドのスタイルでようやくできるなっていうことでもあったんだよな。

前も言ったけど、とにかく女にモテるのは諦めてたからさ、野郎どもの歌をどうしても作りたかったんだ。もうこうなったら男にモテるしかない。あー、男にモテたい、なんて(笑)。でもさ、今でもたとえばこの『'80のバラッド』から俺を好きになってくれたやつらがライブに来てくれたりするんだけど、みんないいジジイになっちゃってさ。ライブが始まるまでは、背中が丸まってるのに、始まった瞬間ガキみてえにギャーギャー騒いでくれる。ほんとうれしいよね。だから俺もでっかい声出して「騒げ!」って言うんだけど。言わなくても勝手に騒いでっからいいんだけどよ。でもまあ、こいつらもたまにこんなふうに騒いだりしないと、そろそろ喉に餅詰まらせて死んじまう年齢だからよ(笑)。現実に帰れば、尿酸値と血糖値で悩んでるんだろうしさ。

『'80のバラッド』を出した年が、ちょうど俺が30になる時でさ。だからそのへんの意識ってのもあったのかもしんないね。ここらで自分の背骨みたいなものを作っとかねーとっていう。そういう意味ではさ、あの作品はもう俺自身の軸みたいなものなんだよ。『'80のバラッド』がなければ今の自分はいないっていうくらいの。そういう作品をようやく作れたなっていう手応えはあった。

その頃くらいかな。ドラマなんかに出始めたのは。まあさっきも言ったように、フォーライフをやめてっていうのを引きずってたからさ、客は減ってたし、ドラマとか映画でバイトして稼いでライブをやってたというね。

よくテレビや映画の人には怒られたもんだよ。お前はなんでちゃんと台詞を覚えてこないんだとか、真剣に演技をやらないんだとかってさ。いや、真剣にはやってるんだよ。でもな、いちいち台詞を覚える気はねえんだよって。だって俺にとってはバイトなんだもん。はっきり言うけど。俺には俺の道ってもんがあってさ、つまりそれは音楽なんだけど、だからあんたらには悪いけどね、俺はここに骨を埋める気はさらさらねーのって。主役をやりたいっていう役者さんがいるんならどうぞそっちに回してください、なんつってね。

1980年に入ってすぐ、石井聰亙監督の『狂い咲きサンダーロード』(1980年)で美術の担当をしたり、『爆裂都市 BURST CITY』では美術以外でも役者として出演したりしたんだけど、他の映像の現場とはまるっきり違ってさ、これこそが理想だなって思ったもんだよ。お金はないんだけど、志のみでやってる。最高だったね。もちろん条件は悪いし、寒いし、食い物もないんだけど、なんだろうな、あの楽しさっていうのは。俺の描きたいって思ってる世界があって、そこに共鳴したってことなんだろうな。

『爆裂都市 BURST CITY』

俺の歌詞ってのはさ、人間の不完全さと男の生理感というのがベースにあって、卑怯な男から情けない男、ずるい男、そういうものをなんとかサイバーパンク化してやりたいっていうことなのさ。小器用にいろんなパターンを作りたいとは思ってないんだ。むしろワンパターンでいいんじゃないかと。たとえばクラシック音楽をバックにやったりしたって俺にとっては意味ないわけで。何それ? 自慢? みたいな。私はこんなことまでできるんですって、どうでもいいよ。お客さんやリスナーってのは、生き方を見たいんであってさ。

まあ俺がいつまで経っても成長してねーってことなのかもしんないけど(笑)。でも未熟な人間だからこそ歌になる動機ってのがたくさんあるんだ。だから俺は田舎じゃ歌ができねーの。田舎っていいじゃん。のんびりしてて、人が良くってさ。太陽が燦々と降り注いで。でも都会なんて薄汚れてるし、朝晩の電車は相変わらずぎゅうぎゅうだし。けどその風景こそが俺にとってはリアルなんだよな。だから「翼なき野郎ども」(アルバム『'80のバラッド』収録)の歌詞は、〈働いて食って 寝るだけの窓〉じゃないとダメなんだ。人生ではなく〈窓〉じゃないとさ。

そういえば、この間はじめてSuicaをタッチして山手線に乗ったよ。やった! 課金できたぜ!って思わず喜んじゃったりして。クリスマスの時期だったけど、ありゃあやっぱ大変だな(笑)。毎日これに乗って仕事をしてるお前らは本当にすごいぞ。タフ? えらいよ。だから俺は、できだけこいつらと同じ風景を見なきゃいけないと思うんだ。それが野郎どもの歌なんだからさ。

取材・構成:谷岡正浩 撮影:小境勝巳

リリース情報

ニュー・アルバム
『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

発売中
3,300円(税込)

『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

【収録曲】
1.怪物
2.世代
3.Y染色体のうた
4.つなひき
5.春のからっ風
6.イメージの詩
7,国旗はためく下に
8.翼なき野郎ども
9.たった一人の熱き想い

「怪物」MV

公演情報

『泉谷しげる全力ライブ 3時間スペシャル!』
3月22日(土) 京都・磔磔
開場16:00/開演17:00
出演:泉谷しげる、藤沼伸一、板谷達也
料金:前売8,000円/当日8,500円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!広島』
3月28日(金) 広島・SECOND CRUTCH
開場18:30/開演19:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!松山』
3月29日(土) 愛媛・松山KITTYHALL
開場17:00/開演18:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ソロライブ90分!秩父』
4月5日(土) 埼玉・秩父 ホンキートンク
開場17:30/開演18:00
料金:前売6,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!宇都宮』
4月13日(日)栃木・宇都宮 HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA
開場17:15/開演18:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

■公式サイト:https://studio-izu.com/

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【応募方法】
①ぴあ音楽編集部のInstagram(music__pia)フォロワー限定。
②該当投稿のコメント欄にお好きな絵文字をお送りください。

【応募締め切り】
2025年3月12日(水) 23:59まで

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