泉谷しげる/今日ですべてが始まるさ

泉谷しげるを面白がってくれればそれでいいのよ

全10回予定

第8回

撮影:小境勝巳

バンドでいるのがバカバカしくなっちゃってさ。ひとりでやるとなんやかんや言われたって責任取れるじゃん。そう思ってるときだったんだよな。北海道南西沖地震(1993年7月12日)が発生したのは。瞬間的にこりゃあ、じっとしてられねえなってなったんだ。

はっきり言って、そのときまで(被害の大きかった)奥尻島ってのがどこにあるかも知らなかったし、一気に目が覚めたっていうか、バンドで待ち合わせして、ちぇっあいつまだ来ねーな、なんてやってる場合じゃねーぞと。ひとりでギター一本持って街中で歌って「お前ら募金しろ!」ってやった方が早いだろって思ったんだよ。

つまり、俺があのときにやった「一人フォークゲリラ」ってのは、やりたいからやったまでの話なんだ。救済の名を借りたパンクだな、言ってみりゃあ。なんの相談もなく暴走して勝手に始めたようなもんだから。もうここからはそうやっていこうと。自分で判断できないものはやらないし、自分でやることは誰にも相談しないでやるって決めたんだよ。そこでつまんなかったり、あるいは違うなって思ったら自分ひとりで去って行けばいいだけなんで。

だからさ、「一人フォークゲリラ」やるのに、調べたら当時の道路交通法違反を7つもやっちまうことになるっていうから、じゃあしょうがねえってんで、事務所もレコード会社も辞めさせてくれって言ったんだ。じゃないと迷惑かかっちまうからさ、巻き込めないよって。そしたらさ、当時所属していたビクターなんかは、それは大変素晴らしいことなんで出来る限り協力しますよって言ってくれたんだよな。

警察だってさ、一回だけは目をつむってくれたんだよ。見て見ぬ振りしてさ。そうやって、パンクをやるのにもだ、社会の協力ってものがないと出来ないっていう現実がわかったよな、このときに。けれどもエンタメは反権力だから、そこの魂は失っちゃいけない。要はそこの匙加減だよな。独りよがりになっちゃいけないってこと。

で、1700万円集めて、奥尻島にバスを寄付したんだけどさ。大したことできねーなっていう実感が正直あった。その前に雲仙のこともあったし、90年代に入って大きな災害が立て続けに起こってさ。戦後あんまりなかったじゃん。俺たちが災害を意識することなんてさ。1995年1月には阪神淡路だろ。募金じゃ追いつかねーし、さすがに警察も二度目は許しちゃくれねーだろうし。よしわかった、募金はもうやめだ。だいたい募金するってことは、そこを被災地認定することになってしまうし、募金したらいいことした気分になって、それきりになっちゃうんじゃないか? なんて思ってさ。被災地っつーか、たまたま地震だなんだがあったわけで、その土地自体は本当に素晴らしいんだよと。募金ももちろんいいけど、できたら実際に行ってみてくれよってことで、その場所でイベントをやることに切り替えたんだ。

でもよ、なんやかんや言われることはあったよ。「一人フォークゲリラ」のときなんかは特にさ。お前だからできるんだ、なんてな。いやいや、俺は奥尻島で地震があったってことと、そこで被害に遭った人たちがいて、生活にも困っているっていう現状を知ってもらうためにも、ギャーギャー騒ぐ方がいいと思ったんでそうしてるだけで、お前にその気があるんだったら、わざわざ俺みたいなことをやらずに黙って募金すりゃいいじゃない。善意ってのはだって、個人で決めることだろ? 誰かの真似をすることじゃないだろ? 要するにそれはさ、お前が話題になりたいってことなんじゃねーの? 実にくだらねー(笑)。

あと、善意は強制になりやすいってのもそのときに学んだことかな。どうしてこんなに素晴らしいことをやっているのに、お前は参加しないんだ? みたいな圧になりやすいんだ。そうすると、やってないやつは非国民みたいな目で見られ始める。それが一番怖いことなんだよ。だいたい、俺はやりたいからやってるの。余計なお世話だバカヤローってな。

今もさ、コロナでライブハウスがひどい目に遭ったから、ちょっとでも何かの役に立てればなって勝手にライブハウスに行って歌ってるんだけど。なんだろうな、歌の役割ってさ、そんな大したことじゃなくってさ、辛いときに聴いたらちょっと元気になりましたとか、そんなことでいいのよ。だから特別いい演奏しなきゃいけないとか、凝ったアレンジがどうのこうのとか、そんなことで俺は評価されたって仕方がないって思ってる。それよりも、泉谷しげるを面白がってくれればそれでいいのよ。

命を削ってライブハウスを回ってすごいですね。削ってねーから(笑)。悲壮感ゼロ。やりたくてやってる。地方大会に飛び入りで参加してるような気分だよ。楽しいぜ。いろんな地方にいろんなやつらがいてさ。面白ことっていっぱいあるから。だから街をうろうろしなきゃな。

取材・構成:谷岡正浩 撮影:小境勝巳

リリース情報

ニュー・アルバム
『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

発売中
3,300円(税込)

『シン・セルフカヴァーズ 怪物』

【収録曲】
1.怪物
2.世代
3.Y染色体のうた
4.つなひき
5.春のからっ風
6.イメージの詩
7,国旗はためく下に
8.翼なき野郎ども
9.たった一人の熱き想い

「怪物」MV

公演情報

『泉谷しげる全力ライブ 3時間スペシャル!』
3月22日(土) 京都・磔磔
開場16:00/開演17:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、藤沼伸一(g)、板谷達也(ds)
料金:前売8,000円/当日8,500円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!広島』
3月28日(金) 広島・SECOND CRUTCH
開場18:30/開演19:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!松山』
3月29日(土) 愛媛・松山KITTYHALL
開場17:00/開演18:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ソロライブ90分!秩父』
4月5日(土) 埼玉・秩父 ホンキートンク
開場17:30/開演18:00
料金:前売6,000円
※入場時ドリンク代が必要

シン・セルフカヴァーズ 怪物 発売記念 泉谷しげる with BAND『祝、ついに喜寿・77歳。それがどーしたああLIVE!』
4月9日(水) 大坂・ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場16:00/開演17:00
2ndステージ 開場19:00/開演20:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、藤沼伸一(g)、渡邊裕美(b)、板谷達也(ds)、小林香織(sax)
料金:BOXシート25,300円(ペア販売)/S指定席12,100円/R指定席11,000円/カジュアル10,500円(1ドリンク付)

『泉谷しげる全力ライブ90分!宇都宮』
4月13日(日) 栃木・宇都宮 HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA
開場17:15/開演18:00
出演:泉谷しげる、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円(vo/g)/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!小田原』
5月4日(日) 神奈川・ODAWARA Quest
開場17:00/開演18:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円(vo/g)/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

『泉谷しげる全力ライブ90分!喜多方』
5月10日(日) 福島・喜多方プラザ文化センター小ホール
開場17:15/開演18:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、板谷達也(ds)
料金:前売6,500円(vo/g)/当日7,000円
※入場時ドリンク代が必要

シン・セルフカヴァーズ 怪物 発売記念 泉谷しげる with BAND『祝、ついに喜寿・77歳。それがどーしたああLIVE!』
6月21日(土) 神奈川・ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場15:00/開演16:00
2ndステージ 開場18:00/開演19:00
出演:泉谷しげる(vo/g)、藤沼伸一(g)、渡邊裕美(b)、板谷達也(ds)、小林香織(sax)
料金:DXシートカウンター12,100円/S指定席12,100円/R指定席11,000円/カジュアルセンターシート11,600円(1ドリンク付)

■公式サイト:https://studio-izu.com/

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【応募方法】
①ぴあ音楽編集部のInstagram(music__pia)フォロワー限定。
②該当投稿のコメント欄にお好きな絵文字をお送りください。

【応募締め切り】
2025年3月12日(水) 23:59まで

【注意事項】
※当選者の方には3月17日(月) 以降、InstagramアカウントよりDMにてご連絡いたします。発送先等の情報を頂くために、問合せメールをご連絡します。ご自身のメールアドレスや住所などの個人情報をDMに記載しないようにご注意ください。
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