松本隆 風のそのさき
ひらがなで作った男性像の系譜 ──「てぃーんずぶるーす」(原田真二)、「スニーカーぶる〜す」(近藤真彦)
全10回
第6回
歌詞の中に書くべき男性像というものを僕はある時までずっと模索していた。はっぴいえんどの場合は、言ってしまえば自分のために書けばよかったので、虚飾なく表現することができていた。ところが、職業作詞家になって、僕の言葉を自分のものとして歌う人のための、つまり虚構としての男性像を作り上げるのに、なかなかこれだというものができないでいた。そういう時に現れたのが原田真二だった。まるで少女漫画から抜け出してきたような繊細なルックスを見た時に、僕の中にもやもやとできあがりつつあった男性像がついに完成するかもしれないと思った。