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布袋寅泰 GUITARHYTHMという人生

ソロワークの幕開けを告げる作品であり、キャリアの 源泉と言うべき衝撃作『GUITARHYTHM』 前編

毎週連載

第7回

全国ツアー「HOTEI Live In Japan 2019 ~GUITARHYTHM VI TOUR~」を展開中の布袋寅泰。今回のライブの基軸をなすのは最新作『GUITARHYTHM Ⅵ』だ。その世界観をより深く理解するために、布袋のソロワークのスタート地点であり、昭和から平成へと移る時代の節目に、鮮烈なコンセプトと強靭なオリジナリティをたたえて放たれた“所信表明”でもある『GUITARHYTHM』を2回に分けて振り返ってみたい。

─── “GUITARHYTHM”はシリーズ全体としてロンドンと縁が深いですね。BOØWY解散後、1stソロアルバム『GUITARHYTHM』を生み出す上で、ロンドンで制作することの影響・成果は大きかったですか。

布袋 BOØWYのころからロンドンのパンク〜ニューウェイブ期の音楽には多大な影響を受けていたし、2枚のアルバムをベルリンで制作したという経験はあったけれど、ロックの聖地であるロンドンでのレコーディングは初めて。でも、エンジニアのマイケル・ツィマリングもロンドンに住んでいたし、ある意味、必然的だったと思います。アビーロードスタジオのBスタはかつてビートルズが数々の名作を生み出した伝説のスタジオですが、僕らはそこを数週間ブックしながら、結局スタジオを使わずコントロールルームだけでコンピュータと、GP-8というアンプをつながずギターを鳴らすライン録音でアルバムを完成させました。スタジオの人々は「ずいぶん変わった日本人だ」と驚いていましたよ(笑)。当時のロンドンは音楽もファッションも刺激的で、夜な夜なクラブに出かけて新しい音を浴びてたな。ロンドンでなければ生まれなかった作品と言えますね。

─── アルバムのデモテープ制作は、エディ・コクラン「C'MON EVERYBODY」のカバーから行われたと聞きましたが、なぜこの曲を選ばれたのでしょうか。

布袋 「この最新型のロックンロールにみんなついて来いや!」と攻撃的なメッセージを発したかったのかな。若気の至りです(笑)。スリーコードのロックンロールの原形と言えるこの曲をデジタルロック化するというのはコンセプトとして破壊的かつ痛快だと思っていました。

─── なるほど。アルバムのオープニング曲「LEGEND OF FUTURE」でのオーケストラサウンドは、布袋寅泰のソロ活動のはじまりを祝福するような、雄大で甘美かつ切なくも穏やかな音色に心が躍ります。どのようなきっかけからオープニング曲の構想は決まったのでしょうか。スタジオで最初に完成バージョンを聴いたときのことを覚えていますか。

布袋 一世を風靡したロックンロールギタリストのソロアルバムの1曲目がオーケストラのオーバーチュアなんて誰も想像もしなかったでしょう。ジョン・ウィリアムス(『スター・ウォーズ』を筆頭とする映画音楽などで知られる米国の作曲家・指揮者)ばりの壮大なファンファーレを聴いたときは鳥肌が立ったよ。「新たなるロックンロール時代の幕開けだ!」とね(笑)。このアルバムは “架空のサウンドトラック”というコンセプトからスタートしています。1曲ごとに変わる、さまざまなサウンドアプローチや情景や物語を聴き手の想像力に託したかった。31年前はまだ夢にあふれた時代でしたからね。サイバーパンクとか世紀末という言葉にリアリティがあった時代。インターネットもモバイルも、AIやVRという言葉すらなかった。『エイリアン』や『ブレードランナー』、『スター・ウォーズ』や『未来世紀ブラジル』といった刺激的なSF映画などの影響もありました。未来系のロックンロールを世に放ちたい、という意思を込めたかったんです。

─── タイトル曲「GUITARHYTHM」では、ヘビーメタル、ファンク、ヒップホップ、ロックの融合を感じました。これでもかこれでもかと次々に扉を開いていくように展開されていく構成の奥深さ。アンセムとなるリリックでのギタリズム宣言の痛快さ。いかにしてこの曲は生まれ、そしてなぜこのタイトルにされたのでしょうか。

布袋 プリンスの影響もありますね。彼のアルバム『DURTY MIND/ダーティ・マインド』(1980年)は衝撃的でした。スティーヴィー・サラスやリッチー・コッツェンなどハードでファンクなギタリストたちが出てきたころでもありますね。もともとファンカデリック系の音楽も好きでした。ファンクは常にコズミックですからね、テーマが。ギターとリズムという、ふたことを合わせて作った造語“ギタリズム”はファンクである必然性があったんですね。

当連載は毎週月曜更新。次回は7月8日アップ予定。布袋寅泰のライフワークの原点であるソロデビューアルバム『GUITARHYTHM』後編です。

プロフィール

布袋寅泰

伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビュー。プロデューサー、作詞・作曲家としても高く評価されており、クエンティン・タランティーノ監督の映画『KILL BILL』のテーマ曲となった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」が世界的に大きな評価を受ける。2012年より拠点をイギリスへ。2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たし、 2015年10月にインターナショナルアルバム『Strangers』がUK、ヨーロッパでCDリリースされ、全世界へ向け配信リリースもされた。2017年4月にはユーロツアー、5月には初のアジアツアーを開催。6月9日から「HOTEI Live In Japan 2019~GUITARHYTHM Ⅵ TOUR~」で全国24ヵ所24公演を巡る。


質問作成:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) 構成/編集部