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BALLOND’OR、人生を振り返ったロック絵巻『R.I.P. CREAM』を語る 「本当の気持ちと向き合って出てくるものこそパンク」

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 BALLOND’ORのニューアルバム『R.I.P. CREAM』が最高だ。バンドとして本来的に持ち合わせていたジャンキーな音楽性を進化させ、衝動的でサイケデリックでドラマティックでノイジーなロックソングの数々が並ぶ。だが、各曲が喧嘩し合うことは一切なく、音楽愛や人生観をストレートかつピュアに表現するメロディと言葉によって、BALLOND’ORの軸がしっかりと通底した作品に仕上がっている。

 自身の光も闇も素直に音楽に反映させているからこそ、人生と深く向き合えば向き合うほど、優れた言葉とメロディを紡ぎ出していくーーそれがMJMというソングライターだ。そして『Blue Liberation』『BLOOD BERRY FIELDS』(2018年)という2枚のミニアルバムを経て、演奏やアレンジの幅がますます広がったことで、『R.I.P. CREAM』はこれほどまでに胸を打つ作品となったのだ。BALLOND’ORが最初の理想形を迎えたと言ってもいい渾身の最新作について、オリジナルメンバーのMJM、NIKEの2人に話を聞いた。(編集部)

(関連:BALLOND’OR、己と向き合い生み出すパンク

「2020年の自分が好きなものを全部鳴らしたい」

ーーBALLOND’ORの個性を生かして、ロックやパンクを軸にしながらさらに音楽性を広げた素晴らしい作品だと感じました。サウンドの幅が広がったことで、逆に内なるピュアな想いが浮き上がってきた作品にも感じられましたが、完成してみてどんな感触ですか。

NIKE(Gt):そもそも僕はMJMの作るメロディや歌詞が好きだったんですね。だから結成当初から、それを活かした音楽をやりたいってことは頭の片隅でずっと思っていて。最初の頃は、打ち込みのビートに訳わかんない音ばっかり重ねてぐちゃぐちゃだったんですけど、MJMの人間性が溢れてる音楽だったんです。そこからバンド編成になって、前回の青盤・赤盤(『Blue Liberation』『BLOOD BERRY FIELDS』)を経たことで、だんだんやりたいことが具体的になってきて、曇っていた部分が晴れてきてたというか。そこから今回『R.I.P. CREAM』ができたことで一気に雲が開けて、「これがやりたかったんだ!」って気づけた感じです。

MJM(Vo/Gt):元々いろんな音楽に影響を受けてきていて、最初はロンドンパンクとかが好きで、そこからヒップホップやソウル、60年代のモッズとかいろんな音楽を聴くようになっていったんですけど、やっぱり人生って1回しかないから、それを一つひとつ積み重ねてやっていくことはできないじゃないですか。だからバンドを結成する時に、自分の好きな音楽を全部詰め込んだものをロックとして放出したいなってずっと思ってたんです。今まではメンバーが揃わなかったこともあったし、家の機材じゃ現実的に難しいところもあったんですけど、今回のアルバムでようやくやりたかったことを一つの塊にして出せたなって思いますね。

ーーまさに聴いていて感じたことですし、1曲目「DIENER」からトラップのビートを過剰なくらい思いきりぶち込んでいますけど、その大胆さがBALLOND’ORらしいなって思いました。

MJM:僕らがバンドをやりたいと思った時って、The LibertinesとかThe Strokesみたいなガレージロックを聴いて、「カッコいいな。自分でもギター持てるかもしれない!」という気持ちになったんですよね。最近のバンドだとThe 1975とかShameも好きなんですけど、その反面でジュース・ワールドとかポスト・マローンとかもめちゃくちゃカッコいいと思っていて、並行して聴いてるので、2020年の自分が好きなものを全部鳴らして新しいものを作りたいと思いました。理想に近づくために音を探していくスタイルなので、いい意味でごちゃまぜになってるのかなって。

ーー確かに。そういうごちゃまぜ感のある楽曲に対して、NIKEさんはどのようにギターを乗せていったんですか。

NIKE:MJMと話していると、色とかに例えて「真っ赤に光っているイメージでギターを絡ませてきて欲しい」とか、音楽の会話ではなくて、もっと抽象的な会話になるんですね。そういう彼の頭の中にある景色をどれだけ汲んでいけるかっていうのが、BALLOND’ORの曲作りのやり方だなって思うんです。例えば、My Bloody Valentineの『Loveless』って大好きなアルバムで、轟音の奥で煌びやかなメロディが鳴ってるイメージなんですけど、もしBALLOND’ORでそういうことをやるとしたら、ちょっとやり方が違うんだろうなと思っていて。BALLOND’ORって衝動性もメロディラインもしっかりあるし、MJMの歌詞の世界からいろんなことを読み取れるように歌もちゃんとしてるんですよね。なので、全部の要素がしっかり聴こえるけど、カオスが生まれるものにしたいと思って作っていきました。

ーー面白いですね。

NIKE:初期の頃はそれがよくわかっていなかったんですけど、やっぱりスタイルはずっと同じなんですよね。例えば、MJMがずっとゴジラ映画ばっかり観てたから、僕も一緒にゴジラを観ていた時期があったんです。で、同時にドリームポップすごくいいよねって言ってたら、ゴジラの足音みたいなビートに、ドリームポップっぽいバイオリンが乗ってくるみたいな曲ができ上がって(笑)。そういうMJMのミクスチャーの仕方自体は全然変わってないんだけど、今回のアルバムでは、バンドサウンドでより強烈な塊として押し出せたんじゃないかなって思います。

「好きだった音楽に対して一度決着をつけたい」

ーー今のお話を聞いても、歌詞を見ていても、MJMさんってかなり視覚的に音楽を作られる方ですよね。NIKEさんの言葉を借りるなら、どんな景色をイメージしてたんですか。

MJM:自分が曲を作る時って、ここ1週間、1カ月の出来事というよりも、もっと前の小学生のころの記憶とか映像で、強く印象に残っているものが頭に浮かぶんですよね。それを今の自分の気持ちと合わせて、どうにか表現できないかなってコラージュしていくんですけど、僕はそれを一番伝えられるのはメロディだと思っているので、いいメロディが出てきた時に、脳内のいろんな映像とリンクするような気がしてますね。自分は幼少期から小学校5~6年生くらいまで、熱中できるものが全然なくて。友達もあまりいなかったから、親とかにすごく迷惑をかけている存在だと思っていて、よく押入れにこもって絵本を読んだり、空想したりしていたんです。遊園地に行った時も、一番楽しい瞬間に「どうせもうすぐ終わるんだな」と思って悲しくなっちゃうような、本当にネガティブな人間だったので、成績表にも「下向きすぎてこのままじゃ大人になれません」みたいなことをよく書かれてたんですよ。それで、本当にダメだ、このままじゃ終わりだなと思ってた頃にロックと出会って、なんかすごく元気になれたんですよね。高校生になるとレコード屋とか行って、NirvanaとかThe Jesus and Mary Chainとか、いろんな音楽をどんどん摂取したい気持ちになっていって、ネガティブで内向きだった自分が変わっていけたんです。だからロックに対して感謝してるというか、助けられたなと思っているので、今回はそういう想い一つひとつをいろんな音でコラージュしていったような感じがしています。

ーー感謝の気持ちが今改めて浮き上がってきたのは、どうしてだったんですか。

MJM:ここ2~3年、自分の好きだったロックやヒップホップのミュージシャンが亡くなってしまうことが多くて。あの時ライブに行っておけばよかったとかいろんな気持ちが出てきたんですけど、自分の音楽人生も1回だけなんで、自分の今まで作ってきた音楽とか好きだった音楽に対して、一度決着をつけてみたいと思ったのが最初のきっかけでした。

ーーNIKEさんはそういう想いを感じ取っていたんですか?

NIKE:原曲が来た時点で、今までと違う空気が漂っているのは感じました。変わってないところは全く変わっていない反面、変わったところは心の奥底のすごく深いところから生み出されてるんじゃないかって思ったんです。今回の『R.I.P. CREAM』って11曲すべて色が濃い作品だと思うんですけど、ギターノイズとか衝動的なサウンドの中に、どこかで夕方5時のチャイムが鳴ってる感じがしていて、幼少期、少年期、青年期、それぞれの時代のMJMが夕方5時のチャイムを聞いている景色がノイズの中に流れてる印象を受けたんですよね。それって、彼の人生のいろんな部分から歌詞とメロディを引き出してきたってことじゃないかなと思ったんで、歌詞一つひとつのメッセージとか、急に変わった展開の意味を、手探りですけど考えながらギターを重ねていきました。

ーーなるほど。自分は今作を通して「本当に大事なものは自分の中にある」というシンプルかつ力強い想いが歌われていると感じたんですけど、それはまさにMJMさんの人生のあらゆる局面と照らし合わせて歌われているから、研ぎ澄まされたメッセージになっているんじゃないかと思ったんですよね。MJMさんとしてはいかがですか。

MJM:そもそも僕が音楽を始めたきっかけって、人とあまり分かり合えないなって感じることに対して、諦めを感じていたからだったんです。小学生の頃から、友達とか異性とか先生とかと、なんでこんなに分かり合えないんだろうってずっと思っていて。それで中学生の時に小説を書いて、分かり合えないフラストレーションを叩きつけたんですけど、それを小説のコンクールに応募したら努力賞だったんですよね……なんかそんなんじゃないんだよなと思って、自分の中で1回挫折したんです。そこから、もしかしたら音楽が自分を一番伝えられるんじゃないかって思ったんですよ。歌詞もあれば、メロディもアレンジもMVもあって選択肢が多いし、音とかイラストとか全てを通して伝えられる方法が多いなって思ったからバンドを選んだんですよね。

「内にこもったまま死んでたら何も楽しくなかった」

ーーバンドで伝えたいことって、具体的にはどういうことだったんですか。

MJM:例えば、30人のクラスで28人が賛成していて、自分ともう一人だけが手を挙げなかった時に、そのもう一人も賛成派に流れてしまって自分だけが取り残されてしまうと、本当の気持ちを消さないといけないわけじゃないですか。別に他人と違うことをやりたい訳じゃないのに、自分が思ったことを言うと煙たがられたり、本当の気持ちを隠さなきゃいけないことって、僕はきっとこのまま一生続くんだろうなって思ったんですよ。だから自分の本当の気持ちを曝け出せる方法が何かないかなって探していった時に、ロックバンドだったら表現できると思ったんです。

ーー他人の目を気にせず、自分の意見を吐き出せる場所がロックバンドだった?

MJM:それももちろんありますし、いい音楽さえ作れば、30人の狭いクラスでは肯定されなかったとしても、全国各地にいる自分と近い人には何かしら届くかもしれないと思ったんです。小説では実力が足りなかったけど、そういう人に会いに行きたい気持ちはあると思います。

ーー「UNITED」はまさにそういうことを歌った曲だと思いますし、〈本当の自分を隠して 本当の自分を騙して/二番目の安定を選択/FUCK チャンピオンズ倫理〉って歌うことで、安易な共感や強制に対して、嘆くだけじゃなくて、中指を立てて強い意思表明をしていますよね。

MJM:僕もたまに音楽聴きすぎたり、本を読みすぎて部屋にこもっちゃう時があるんですけど、やっぱりこもったままずっと暗い気持ちで沈んでたりとか、それで死んじゃうとか、絶対良くないと思うんです。なんかもったいないなって思う。それはなんでかというとーー僕が12歳の時、中学校で大問題になった万引き事件があって、何十人もバレたんですよ。その時にクラスで、「こいつが全部手回ししてやった」みたいな感じで、やってないのに僕のせいにされたんです。いや、それちょっとおかしいなと思って、すげえいろいろ言い返したりしたんですけど、全然無理で、言わなかったら学校に母親を呼び出すぞ! みたいなことになって……僕、その帰り道に本気で死のうと思ったんです。マンションの7階の非常階段から10分ぐらい、ずっと地面を見つめて「これは死ぬしかない」って思ってたんですけど、近所のおばさんが「何やってんの!」って止めてくれたから、その時はセーフだったんですよね。で、振り返って考えた時に、あのまま死んでたら何も楽しくなかったなと思って。何かに夢中になることもないし、女の子と喋ったこともないし、友達も全然いないし、コンプレックスを抱えたまま終わってたなって。だから、内にこもったまま死ぬのはもったいないと思うんですよ。BALLOND’ORって人助けみたいな音楽じゃないですけど、自分の友達が死んでしまった時とかも、「あの時何かできたんじゃないか」とか、後悔がずっとあるから、自分が作った音楽の中から何かを感じてくれたり「やってやるぞ」みたいな気持ちになってくれたら、すごく嬉しいですね。

ーー逆にいうと、12歳のMJM少年が感じたとてつもない絶望や孤独は、大人になった今でも心の中に残り続けているんですよね。

MJM:そうですね。秘密を共有してた友達からの裏切りや、先生に話しても全然伝わらなかったことがあったけど、そこで死ぬのはもったいなかったし、今はその分ロックを鳴らしていたいんですよね。その気持ちをいろんな音とか映像と組み合わせて一つの塊にしたいっていう気持ちはずっと変わっていなくて。あと、そもそもBALLOND’ORを最初に始めようと思ったのは、自分の失恋のリハビリも兼ねてたんですよ。音楽を作ることで、胸の痛みを和らげていきたいなって。元々Passion PitとかBeach HouseとかWashed Outとか、あとThe Beach Boysみたいなドリームポップや煌びやかなロックに憧れてたんですけど、いざ曲を作ると失恋によって沈んだ心で、曲もどんどん沈んでいったんですね。「こういう曲にしよう」とかわざわざテーマを決めなくても、自然とノイジーなものになっていって。だから、ありのままの自分を出せばいいんだと思って、高校生の頃に聴いてたThe Damnedとかパンクロックを改めて聴き直していって、BALLOND’ORがスタートしたんです。

ーーBALLOND’ORの根底にはパンクがありますけど、純粋な自分と向き合って感情をいろんな音や表現に昇華していくほど、いい曲を作れるバンドだと思うんです。だから『R.I.P. CREAM』はこんなに素晴らしい作品になったんだなって。

MJM:本当の気持ちと向かい合って出てくるものこそが、自分の中ではパンクなんです。だから好きなビートやギター、好きなベースの音域とかにメロディが重なっていくことで、ようやく自分のパンクが実現できると思っているので、今回はそれが限りなくいい形で実現できたんじゃないかなと思っています。

「ロックバンドは一度しかない旅」

ーーそして今作は終わり方がとても感動的ですよね。「LAST SMILE」の〈飛行機事故で 君が落ちても きっとその下に/僕はいるだろう いたいんだよ〉という歌詞から、死の瞬間、人生の極限状態でも、その人の脳裏に流れる音楽でありたいっていう想いを自分は汲み取ったんですけど、この言葉はどんな気持ちで書かれたんでしょうか。

MJM:自分も言われて気づく部分なんですけど、メンバーにも「この曲って聴き手の近くにいるような曲だよね」って言われたんですよ。そう思うと、確かに自分がリスナーだった時って、好きなバンドや音楽はイヤホン越しに、すごく近くにいるような気持ちになれたんですよね。自分の中の景色を歌った曲なんですけど、最終的にそう思ってくれるなら嬉しいなって。

ーー「LAST SMILE」はこれまでのバラード以上に静かに聴き込める楽曲ですけど、ギタリストとしてはどういう風に捉えていたんですか。

NIKE:確かにBALLOND’ORで聴いたことないくらい静かな音で弾きました。正直「LAST SMILE」に関しては、シンプルな2音くらいのアルペジオだけで十分成立するなと思ってたんですけど、MJMはとにかく歌のメロディにギターが絡んできて欲しいって言うんですね。「もっと景色が見たい。『LAST SMILE』という曲の景色を鳴らして欲しい」って言われたので、今までBALLOND’ORで鳴らしてきた音を一から思い出しながらフレーズを作っていけたんじゃないかと思います。なぜこの曲がアルバムの最後に来たのかーーこの曲が終わった時に、聴いてくれた人にどんな景色を見せられたのかっていうことを考えながら、一生懸命弾かせてもらいました。

MJM:あらゆる表情の中で、笑顔ってすごい素敵だと思うんですよ。だからこそ、誰かの最後の笑顔なんて見たくないんですよね。でも、好きだった人や大切だった人がいなくなっちゃった時って、やっぱりその最後の笑顔が胸のどこかにこびりついてるんです。ロックバンドって一度しかない旅みたいなものだと思っているので、その中で出会いもあれば別れもあったり、暗い時も楽しい時もあるーーそういうことを思った時に「LAST SMILE」ができたのかなって。こんなにダメな自分でも、いろんな音楽や映画に奮い立たせられて生きてこれたと思ってるので、この曲を最後に置くことで、自分が感じたのと同じように誰かを奮い立たせたい、景色を伝えたいんだっていうふうに思いますね。(信太卓実)