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向井理、絶妙な立ち位置を繊細に体現 『麒麟がくる』義輝役に漂う品性と風格

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リアルサウンド

 京に向かった光秀(長谷川博己)は久しぶりに斎藤義龍/高政(伊藤英明)に会い、道三(本木雅弘)の遺した“大きな国”を作る大業を成し遂げたいのだと話す。『麒麟がくる』(NHK総合)第19回は、光秀が朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)の遣いで将軍・足利義輝(向井理)の元を訪ねた様子が描かれた。

 実力主義である戦国時代に、足利義輝は形だけの権力しか持つことができなかった。せっかく京に戻ることができたにも関わらず、実際に力を持って統治していたのは三好長慶(山路和弘)であり、信長(染谷将太)暗殺を企てていた義龍を止めようとする光秀は、三好長慶(山路和弘)に仕える松永久秀(吉田鋼太郎)に協力を仰ぐ始末。光秀は細川藤孝(眞島秀和)から、義輝にはこの暗殺を止める力がないことを聞かされていたのだ。こうして光秀は義龍の暗殺を阻止する。信長は無事上洛し、義輝に謁見した折に尾張平定を報告するとともに今川義元(片岡愛之助)の尾張侵攻を思いとどまらせるよう願い出た。

【写真】凛々しい顔立ちになった信長(染谷将太)

 しかし、義輝は信長に今川義元よりも高い官職を提示するのみ。今の義輝にはこれしかできることがなかったのだ。だが、果たしてそれだけで今川が尾張侵攻を諦めるだろうか。信長を含めその場の人物は皆懐疑的な表情を見せる。義輝に力がないことが白日の下に晒された瞬間であった。

 義輝を演じるのは、『きみが心に棲みついた』(TBS系)、『10の秘密』(カンテレ・フジテレビ系)などに出演した向井理。整った顔立ちと上品そうな姿から、能を楽しむ義輝の品性と風格を感じさせる。芝居は繊細かつ淡々としながらも、落ち着きがある。しかし一転、信長の謁見のシーンでは顔を背け、どこか気まずそうな表情に。品格を保ちつつ不甲斐なさを滲ませ、切ない姿を表現した。その場で一番高い将軍という地位にありながら実のところ権力は持たされていない、そんな義輝の絶妙な立ち位置を繊細に体現する。 

 義輝という人物は、実は光秀がいつも心の片隅に置いている「麒麟の話」を持ち出した男でもある。王が世の中を平和にしたときに必ず現れるという麒麟。義輝は幼いころに父から聞いて以来、麒麟がくる世の中になることを願っているのだ。光秀にとってこの「麒麟の話」は、道三の「大きな国」と通ずるものがある。「国を統治してだれもが安心して暮らせる世の中を作る」ということを指し示すふたつの話。今後の光秀の“生き方”を大きく左右するであろうエピソードなのだ。

 さらに今回、光秀が強く信長を救いたいと願ったのは「我らも変わらねばならん」というかつての信長の言葉があったからこそ。光秀は麒麟がくる国を作るためには、自ら変わらんとする信長のような人間が必要だと考えたのだろう。“新しく平和な国を作るために、自分たちが変わっていく”それはこの時代に限らず、今の世の中にも当てはまる大切な教えである。

 次週はついに、かつて尾張に人質として捉えられていた竹千代が成人して、松平元康(風間俊介)として今川義元の元、尾張に攻め入る。光秀と信長はこの戦をどう回避するのだろうか。

(Nana Numoto)