岡田将生、“ダブスタ”の役を演じたら右に出る者なし! 『タリオ』浜辺美波との絶妙なバディ感
映画
ニュース
浜辺美波×岡田将生の初共演にしてW主演の新ドラマ『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)第2話では、埼玉県のとある村に2人が潜入し、一気にバディらしく距離が近くなる様子が描かれていた。
元弁護士の白沢真実(浜辺美波)と復讐代行コンサルを名乗る詐欺師・黒岩賢介(岡田将生)が今回依頼された復讐は、女教祖に妻を呪い殺された和紙職人(竹原ピストル)によるものだった。女教祖に2人して命を狙われ、怖がった白沢が黒岩の隣で布団を並べて眠るも、全く男女間を感じさせないカラッとしたバディ感が流石である。
岡田将生と言えば、端正なルックス、抜群のスタイルの良さに加えて、周囲から愛される天然キャラでお馴染みだが、演じられる役どころはとんでもなく幅広い。本人そのままの好青年役はもちろんのこと、その対極の非情で冷酷な人物描写もまた素晴らしい。
映画『悪人』で演じた旅館の御曹司の男子大学生・増尾圭吾役は、ある意味主役よりも強烈な後味を残す。一見したところ人気者でお調子者に見えて、実際には周囲、特に異性を値踏みして“持たざる者”を心の中で嘲笑う選民意識の塊という二面性を本当に見事に演じ、タイトル『悪人』により一層の深みを与えるキーパーソンとなっていた。それに近しい役どころが、現在公開中の映画『星の子』での南先生役だろう。女子生徒からの人気も高い中学教師を演じるが、自分の常識内にあるもののみが正しいと考え、それしか信じず、その外側にいる人やその想いに全く思い至らない。それどころか、露骨に嫌悪する。自分にとって都合がいい解釈しかできず、彼らが持つ事情や余白を一切鑑みずに悪気なく断罪できてしまう、非常に無自覚でたいそう生きやすそうな役どころを見事体現していた。
善意の顔をした“人の悪意”を演じさせたら本当に彼は一級品だと思う。わかりやすい“The悪役”というよりは、好青年の裏に見え隠れする他人を卑下する気持ちや、臭いものには蓋をしてしまい表面的にだけ円滑に物事が進むことを望むような狡猾さを本当に見事に魅せてくれる。顔を歪めて汚いものを見るような目で他人を見下しその存在を否定する、あの引きつった表情をあれだけ忠実に再現できる人はそうそういないと思う。
かと思いきや、その圧倒的ビジュアルを生かして漫画の実写版への起用でコミカルな役どころを演じることも多い。『銀魂』での桂小太郎役や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』での虹村形兆役は、二次元キャラクターをそのまま三次元に再現し、ファンタジーな世界観にも違和感なく溶け込めていた。
本作での詐欺師の黒岩はちょうどその中間に位置するような役どころ。依頼人を気持ちよく欺き、非情性は低いものの涼しい顔してお金になりそうな案件にとにかく手を出す。しかし、正義感の強い白沢と組むことで図らずしも復讐代行という形で結果的に人を助けている。「目には目を、歯には歯を」に倣って第2話では「ペテンにはペテンを」で、危機一髪の瞬間に黒岩が咄嗟に利かせた機転によって、女教祖を追い込むことができた。
この人助けも報酬のためだけにやっているかに見せて、実際にはおそらくそれだけではない。その証拠に妻のために女教祖に対して声を荒げる依頼人に対して非常に真理を突いた人情を感じさせる言葉を掛けていた。
何より堅物で融通の利かないところも多々ある白沢となんだかんだバディを組んでいる時点でやっぱり黒岩も良い奴なのだ。そんな不思議で絶妙な立ち位置、なんだかダブルスタンダードで憎めない黒岩という男は岡田だから違和感なく演じられるのだろう。真っ直ぐ芯の強い印象の強い浜辺演じる白沢と、どこか斜に構えている役どころも得意とする岡田扮する黒岩。しかし、ドジで一般常識に欠け時としてビックリするようなことをしでかす白沢と、意外と常識的である黒岩。良いバランス感で“持ちつ持たれつ”の2人の関係性を、言い合いを挟みながらも「喧嘩するほど仲が良い」という空気感ごと見せてくれている。
元々所属していた弁護士事務所保有のマンションを追い出され、黒岩の事務所に勝手に引っ越してきた白沢との共同生活も次話以降始まるようで、ますます正反対な彼ら2人が互いにどう影響を及ぼし合うのか楽しみだ。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter
■放送情報
ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』(全7回)
NHK総合、BS4Kにて、毎週金曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、岡田将生ほか
制作統括:川田尚広、高橋練、岡本幸江
演出:木村ひさし、山本透
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/78YR8PJXJ5/