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シム・ウンギョンの“言葉”の威力が凄まじい 『新聞記者』に通じる『七人の秘書』での佇まい

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 この世を動かしているのは誰だ。国や財界のトップか。いや違う。本当にこの世を動かしているのは影の黒子、名もなき秘書たちだ。ボスを支え組織に仕え、目立たぬことこそ黒子の極意。この世は万事表があれば裏がある。光があれば闇がある。そしてその闇の中にこそ光る真がある。

 『七人の秘書』(テレビ朝日系)は、そんな黒子“秘書”の暗躍を描いたお仕事ドラマ。元も現役も含め、7名の経済界や政界トップの秘書が登場する。

 そして、本作はシム・ウンギョンの日本での連ドラ初出演作品としても注目を集めている。第3話では、そんなシム・ウンギョン扮するパク・サランが秘書を務める病院で事件が起きる。患者からの信頼も厚く次期内科部長候補に挙げられるほど優秀な女医が、患者から現金の入った菓子折りを受け取ったと疑われ、謹慎処分になってしまう。しかし、実際に裏で手を引いていたのは自分の息子を内科部長にするために彼女を失脚させようと画策した病院長だった。秘書たちが大病院を牛耳る親子の闇を暴くという痛快ストーリー。近年話題の医学部不正入試問題についても触れられていた。

 シム・ウンギョンといえば、映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝き、その名を轟かせた。政権がひた隠しにしている闇に迫ろうとする女性記者・吉岡エリカ役を演じ、強い正義感と静かな怒りを秘めた役どころが鮮烈だった。ジャーナリストだった父親から言われた「誰よりも自分を信じ疑え」という言葉通り、自問自答するシーンが多く、届きそうで届かない真実に一人手を伸ばそうともがく孤独な様子が印象的だった。赤く轟々と燃え盛る真っ赤な炎ではなく、でも実はそれよりもはるかに温度が高い「青い炎」のような彼女に秘められた凄まじい熱量、佇まいは、本作での医療秘書役にも投影されている。

 今回の役どころも、もともと自分の父親と同じ医者を目指していたが、韓国にいる母親の看病のためにその夢を断念した過去を持っているようだ(どうやらその父親は日本にいるようで、父親を探すためにサランは来日したのだろうか)。

 また、ラーメン店「萬」で秘書たちがどこからともなく集まり誰ともなく話し出す様子は、彼女が銀行員ソヨン役として出演した映画『架空OL日記』での社食や女子更衣室での仕事の合間の“隙間時間”、“オフモード”感を彷彿とさせる。

 本作後半、ラーメン店店主で秘書軍団の元締めの萬(江口洋介)に「サランは医者じゃなくても、人を救ってるぞ」と言われた後の彼女の表情、間合い、ラーメンを食べながらそれをごまかす一連の演技は本当に見事で胸に迫るものがあった。

 映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』では、主人公の“なりたかったもう一人の自分”という天真爛漫で自由奔放な幻影を演じたが、改めて彼女の放つ言葉の威力の凄まじさを思い知らされる。大声を張り上げたり、ハッキリと発音するわけでもないのにストレートにこちらの心に届くあの言葉の力は何なのだろう。おそらく母国語ではないからこそ、彼女が「言葉」の力を過信しすぎていないところに起因しているのではないかと思われる。「言葉」を大切にするのはもちろんのこと、そこに何より「伝えたい」と願う祈りのようなものが込められているような気がするのだ。そして、日本語の話し方や流暢度合いも演じる役や設定によって変えていることがよくわかる。

 ちなみに本作でのサランは、SEのエキスパートでハッカーの才能も持ち合わせているようだ。これからさらにその高度なハッキングスキルの見せ場が用意されているに違いないと思うとそれも楽しみだ。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『七人の秘書』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介
ゲスト:萬田久子、大和田伸也、木下ほうか、小林隆、杉田かおる、藤本隆宏、とよた真帆、橋爪功、マキタスポーツ、リリー・フランキー、松本若菜、永瀬莉子
脚本:中園ミホ、香坂隆史、林誠人
演出:田村直己(テレビ朝日)ほか
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、 浜田壮瑛(テレビ朝日)、大垣一穂(ザ・ワークス)、角田正子(ザ・ワークス)
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日