竹内涼真はリアルな恋愛ものにもハマる? 『竹内涼真の撮休』で見せる可能性
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竹内涼真が“追い込まれる”ときの表情が好きだ。まだ記憶に新しい日曜劇場『テセウスの船』(TBS系)では殺人犯の息子として生きてきた主人公を演じ、30年前にタイムスリップし冤罪で逮捕される父親を救うため奔走。「ジ・エンドー!」と真犯人たちから攻撃されてえらい目にあっていたし、池井戸潤原作の『下町ロケット』『陸王』(TBS系)では演技達者なベテランキャストがひしめく中で、ストーリー上も現場でも、なんだかんだ追い込まれていた。その撮影現場でインタビューしたとき、先輩俳優から「ドラマの見どころとかいいから、こういうときは『俺を見て』って言っておけばいいんだよ」と煽られ、言われたとおりに「…俺を見てくださいっ!」と恥ずかしそうに言ってくれた姿も思い出される。朝ドラの『ひよっこ』(NHK総合)で心ならずも家の事情でヒロインとの結婚をあきらめなければならなくなり、目に涙を溜めて別れを告げる場面も、強いインパクトを残した。
そういったシリアス劇も多いが、彼はコメディ要素の強い役どころにも挑戦してきた。6年前、小顔で長身のとんだ逸材ライダーが現われたと子育てママたちを驚かせた出世作『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日系)もコミカル要素はあったが、おそらく“コメディ筋”のようなものを鍛えられたのは『THE LAST COP/ラストコップ』(日本テレビ系)だろう。唐沢寿明と窪田正孝というシリアスとコメディを0.5秒で切り替えられるようなツワモノたちと共演し、桜井日奈子演じる婦人警官にメロメロで、彼女に振り回されるおバカな新人刑事を演じていた。コントのような喜劇演技を要求され、それをクリアするのは大変んだっただろう。さらに、あろうことか最終回は生放送になってしまったが、それもNGなしでこなした。そして、翌年のラブコメ的作品『過保護のカホコ』(日本テレビ系)では、もう安定した演技になって、笑わせる場面でも存分に楽しませてくれた。
そんな竹内涼真が人気俳優の竹内涼真を演じるオムニバスのWOWOWオリジナルドラマ『竹内涼真の撮休』。物語はフィクションだが、本人役とあって、ここではコメディにもシリアスにも寄らないリアルな姿を見せている。毎日のように現場に通い、撮影の合間に仮眠室で休んでいる多忙な彼が、ロケ地が借りられなくなったなどの事情で翌日が休みに。突然のオフに何をするのか?という発想から生まれたエピソードが全8話で描かれていく。
第1話のタイトルは「薫るスパイスカレー」。自宅の近くに以前から気になっている店があるけれど、ふだんは忙しくて寄る時間がないし、一軒家だったりビルの上の階だったりして外からは中が見えにくく、なかなか入る勇気が出ない。そんな経験はないだろうか。人気俳優の竹内涼真にもそんな店の存在があった。ある暑い日、突然、撮休になった竹内はスーパーで買い物をした帰り、いつも入りそこねていた一軒家の「スパイス・カフェ」に入っていく。この出だしがなんともリアルで、日常の続きといった感じ。見る人はこのゆったりとした世界に引き込まれていく。
緑に覆われた木造の家のどこか懐かしいような空間で出迎えてくれたのは、小池栄子演じる薫だ。薄いメイクにノースリーブの服、エキゾチックな柄の服は、いかにもエスニック店のオーナーといった感じ。カレー作りに使うスパイスを求める竹内に、薫はクミンやガラムマサラなど、いくつかのスパイスを勧め、そのうち、2人は一緒にカレーを作ることに。薫は突然やって来た客をちょっと強引に引き止めるわけだが、小池はそんな場面も嫌味なく自然に演じている。
ポイントは薫がテレビを持っていない人で、芸能界に疎いこと。竹内に「竹内です」と自己紹介されても、反応はない。最初はキャップと伊達メガネで変装していた竹内もすっかり警戒を解いて素顔になり、お店に居座ってしまう。薫に年齢を聞かれ、「27歳です」と答える竹内。薫は明らかに年上だが、並んで料理をするうちに、美人で艶っぽい彼女の仕草に竹内もついドキドキする。
異国情緒あふれるスパイスの名前にも、何やら男女の関係に関する意味が込められているよう。監督がピンク映画から出発し、恋愛映画の名手として知られる廣木隆一(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『ここは退屈迎えに来て』ほか)とあって、竹内と薫の間には、セクシーな展開にもなりそうな雰囲気が漂う。薫は竹内をヨガに誘い、懸命に難しいポーズを取っている彼に顔を近づけて匂いをかぐ。ちょっと危うげでその状態を楽しんでいるような大人の男女関係は、地上波のドラマでは竹内があまり演じることのない役どころだ。他の作品ではいつも極限状態に追い詰められがちな彼のちょっと緩んだ自然体の表情は、ここでしか見られない。
『テセウスの船』では妻と子がいるキャラクターで、もともと仮面ライダーだけに子供好きとして知られる竹内だが、父親役を演じる前の段階、つまりストレートな恋愛ドラマにはまだ出ていない。しかし、この第1話では、リアルな世界観のラブストーリーにもハマる可能性を見せている。この路線で、例えば、道ならぬ恋に苦悩する竹内涼真や恋のトライアングルであくせくする竹内涼真も見たいと思ってしまった。やはり、恋愛ものでも追い詰められてほしいのかもしれない。
第2話以降は、竹内が買い物に出かけたり弟の彼女と会ったりというリアル路線と、竹内が2人存在するようなぶっとんだ設定(松本まりかとの共演に注目!)の両方が描かれる。演出も廣木のほか、『ミッドナイトスワン』の内田英治、現役大学生の新鋭・松本花奈と、竹内と初めて組む監督ばかり。WOWOWでしか実現しなさそうなアーティスティックな試みを全8エピソード、存分に味わいたい。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
WOWOWオリジナルドラマ『竹内涼真の撮休』
WOWOWプライムにて、11月6日(金)スタート 毎週金曜深夜24:00〜放送(全8話)
出演:竹内涼真、小池栄子、渋川清彦、藤野涼子、松本穂香、佐野勇斗、佐津川愛美、藤原季節、富司純子、松本まりか、山本浩司、岡部たかし、森川葵、吉村界人ほか
監督:廣木隆一、内田英治、松本花奈
脚本:狗飼恭子、ぺヤンヌマキ、ふじきみつ彦、舘そらみ、松本哲也、玉田真也、竹村武司、首藤凜
音楽:つじあやの
主題歌:平井大「Holiday」(テレビ朝日ミュージック/avex)
制作協力:ホリプロ
製作:「竹内涼真の撮休」製作委員会
(c)「竹内涼真の撮休」製作委員会
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/satsukyu2/