菜々緒、『七人の秘書』で“女性ならではの痛み”を代弁 悪女のパブリックイメージを覆す?
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黒子の秘書の暗躍を描いたお仕事ドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)は、元も現役も含め、7名の経済界や政界トップの秘書が連携し、各所に蔓延る悪に立ち向かう。
第4話では、盗撮被害に遭った女子高生の被害届が警察内で揉み消されてしまう。犯人が警視庁の人間で、かつ父親が権力者だったためだ。その犯人と同じ職場で働くのが菜々緒演じる「警視庁」警務部長秘書の長谷不二子だ。あまりにあからさまに“女性”であることを理由に、“使えない、無能だ”と言われたり、かと思いきやモロに性的な視線を向けられるようなことが日常茶飯事だというにわかに信じがたい環境に身を置いている。そんな前時代的な警察組織という男社会の中で食らいつきながらも悪戦苦闘していたが、捜査担当から外され秘書に異動させられた苦い過去を持つ。
菜々緒と言えば、これまで常人離れした抜群の長身スレンダーなプロモーション、はっきりとした目鼻立ちを生かした圧倒的「悪女」役に抜擢されることが多かった。映画『白ゆき姫殺人事件』では、物語冒頭から殺されてしまう美人OL・“白ゆき姫”こと三木典子を熱演。絵に描いたような“鼻につく美人”ぶりが見事で、外面だけは良いものの嫌味で高飛車な “二面性”“二重人格ぶり”を見せつけた。
彼女の人並み外れた圧倒的な美貌は、それだけで人目を引き“非日常感”や“違和感”を演出することができ、コメディー要素にもなりうる。存在自体がどこか浮世離れしており、それだけで既にキャッチーだ。初主演ドラマ『主に泣いてます』(フジテレビ系)での“美しすぎて幸せになれない薄幸美女役”という突拍子もないような設定は、彼女だからこそ演じられたもので納得の配役だった。
また、本作以前の木村文乃との共演作『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(カンテレ・フジテレビ系)では、妖艶なサイコパス橘カラ役で存在感を発揮していた。わかりやすいThe悪女役以外に、主演作の『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)では人事コンサルタントとして新入社員をスパルタ指導しながら社内の不正行為を成敗する椿眞子役でダークヒーローとして注目を集めた。今回の不二子のスマートなお仕置きも見事で、“悪魔の人事”椿役を彷彿とさせた。
また、本作以外に、菜々緒が大人数の強烈な女性陣と肩を並べて出演した話題ドラマがあった。そう、『ファーストクラス』シリーズ(フジテレビ系)だ。彼女が好演した帰国子女で高飛車な川島レミ絵は、揃いも揃った悪女の中でも“マウンティング女子”の最たる例で、劇中彼女の心の声が何度もだだ漏れており、それが見どころになっていた。
本作での不二子役は、これまでの菜々緒の役どころと異なり、全くもって同性同士の輪を掻き乱さず、ラーメン屋「萬」の店長や、望月千代(木村文乃)からの声掛けを持って発動する側に配置されている。ストレートに正義感を振りかざす役どころも、彼女のこれまでのラインナップからするとかなり珍しい。
またこれまで彼女が演じたキャラクターはいずれも強い意志を持ち、他人に媚びずに自立した女性が多かった。本作での不二子役もその雰囲気を纏ってはいるが、そんな不二子がラーメン屋「萬」で辞令を受けた後に涙した姿や、職場で人知れず傷ついている姿はとても新鮮に映る。そのためもあってか、第4話はより一層理不尽さや切なさが胸に迫ってくる回に仕上がっていた。並外れたプロポーションと美貌ゆえに演じられる役どころは限定、かつ固定されがちで、“ごくごく一般的な人”を演じるのは難しいかと思われるそんな彼女が“女性ならではの痛み”を代弁し、他の女性からの共感を得られていること自体がこれまでになかったことではないだろうか。
今までは「個」としての抜群の存在感と異質感を放っていた菜々緒が、大所帯の中にいてももちろん埋もれることはなく、ただし彼女一人にだけスポットライトが当たる形ではなく、様々な個性と共存し互いに生かし合えているのは、彼女にとっての新境地とも言える。
また、第4話で犯人逮捕の決定的証拠になった1枚の写真が、粟田口十三(岸部一徳)と萬敬太郎(江口洋介)を結びつける接点にもなってしまい、一気に物語が加速しそうだ。今後、彼らの過去の因縁が明らかになっていきそうで楽しみだ。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter
■放送情報
『七人の秘書』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介
ゲスト:萬田久子、大和田伸也、木下ほうか、小林隆、杉田かおる、藤本隆宏、とよた真帆、橋爪功、マキタスポーツ、リリー・フランキー、松本若菜、永瀬莉子
脚本:中園ミホ、香坂隆史、林誠人
演出:田村直己(テレビ朝日)ほか
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、 浜田壮瑛(テレビ朝日)、大垣一穂(ザ・ワークス)、角田正子(ザ・ワークス)
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
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